最終話

秋口

駅のホーム・階段の隅


男、人が通る度にパンチを繰り出している。

慣れた様に避ける人、渋い顔をして避ける人、遠巻きに逃げる人など様々な反応。

駅員達は気にしていない様子。


ホームの隅で遠巻きに眺めている髭面。

大きな溜め息。

その横に立派な翼を持った天使が現れる。


天使

「すっかり溶け込んじゃった様だね。」

「あーあ。」

天使

「しっかし、駅好きね。」

「今回はたまたま。」

天使

「まどろっこしい。」

「掌で転がすのが面白いんじゃないの。」

天使

「転がし過ぎてもね。」


天使、笑う。


天使

「ま、君の思い通りじゃない?」

「あんた、相変わらずだな。」

天使

「お互い様でしょ。」

「この間みたいなホームランがあるからよぉ。」


髭面、フルスイングしながら天使を見る。


「また立派になったなぁ。」

天使

「効率の良い回収をしているからね。」

髭面

「程々にしてくれよ。」

天使

「最近の悪魔はヤワで困るよ。」

「お前は悪魔だな。」


二人、笑い合う。

男、取り憑かれた様にパンチを繰り出す。


天使

「そろそろ行くよ。」


飛び立つ天使。

天使を見送る髭面。


髭面の口から涎が溢れて来る。

髭面、口を腕で拭う。


「コイツらは暇潰しだからさ。」


髭面、ニタッと笑う。



(終わり)

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暵赫 @yuzu_dora

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