初見エリアに行って8分でテレポートをしただけだ

「どわあぁぁぁぁぁああ!!」


 狼にまたがりながら目的の町とは全く違う方向へとぶっ飛んでいる俺。


 うーん、ヤバくね?


 しかもなんか見た事ない植物が地面に生えたのを見てしまった。


 つまりここって新しいエリア……だよな?


 あ゛ぁーゲーム知識がほぼ通用しないとこ来やがったー!


 ……終わった……俺詰んだ……。


 久々に凡ミスしたらこんな羽目になるとは……。


 段々と高度が下がって来て着地する。


 この裏技バグの良いところは凄いスピードで移動できて落下ダメージも無いところだ。


 テレポートの吐き気に見舞われたく無い人用の裏技だな。


 さてと、ライガウルフ君ご苦労。


 森へお帰り…………ここら辺に森ないけど。


 てかなんか地面赤いし。


 テラロッサかこれ? だとしたら新しい素材だな。


 元々の世界にいた装備とかを作る人達喜ぶだろうなぁー。


 ま、今となっちゃ関係ないけど。


「取り敢えず……ここどこだ?」


 来た事ないから現在位置が分からない。


 このゲーム、マップとか存在してないからなぁー。


 誰かこの場所の地図をくれ、即フル暗記してやる。


 周りを見渡すとまあテラロッサとよく分からん植物しかない。


 ちょっと地面をホリホリしてみる。


「石は……真ん中に一個か」


 これぶん投げてみるか。


「ふんっ!」


 ……何も起きない、と。


 投げた石を取って来て今度はサイドステップをしながら石を投げる。


 ピューンと飛んでいって、普通に数回跳ねて止まった。


 よし、この石は多分何もないな!


 テレポート裏技は大抵木の幹からやるが、大岩とかからも行ける。


 ここにもそれな感じのがあれば良いんだが……。


 小走りで走っていると、2mくらいある植物の葉っぱがあった。


「これでなんか出来ないかな?」


 葉っぱを仰いだり、体にこすり付けたり、かじったりしてみても意味はなかった。


「うーん……この葉っぱ絶対何かバグると思うんだけどなぁ……」


 インフィニア・ワールドのバグに多いのは、何か大きいものに何かをする事、だ。


 だからこの葉っぱに何かをすれば……と思ったが、まあそう簡単にはいかない。


「じゃあ試しに……」


 葉っぱの上に乗ってバク転をする。


 ……裏技発動無し。


「いやぁーダメかー」


 ちょっと別のにしてみるか?


 そう思いながら葉っぱをポトッと落として歩き出したその時


『ビュオオオオ!』


 くっそ強風が吹いた。


「うおぉっ!? 凄い風だな!」


 あっ、痛った! 目に砂入った!


 目をグリグリして砂を出そうとしていると、先ほどの葉っぱの上に立った。


 そして――


「えっ? うわぁぁぁぁぁ!」


 葉っぱの中に落ちた。





 お、おぉー……どうやらこれがあのテラロッサ砂漠でのテレポートの方法らしい。


 強風が吹いてる時に2mくらいの葉っぱの上に乗る……。


 意外と見つけやすいヤツだったな。


 上半身の服を脱いでバク転しながら乗るとかじゃなくて良かった。


 あ、そろそろテレポートが終わるな。


 さてさてどこに出るののかなー? 俺の知ってる所なら良いんだが……。


 葉っぱのマークが描かれた道から飛び出す。


「おおっ!」


 この町並みは!


「始まりの町だぁー!」


 よっしゃー! 一発で帰って来れたぞぉー!


 大体8分くらいか。結構早めに戻れて本当に良かった!


 さてと、取り敢えず冒険者ギルドに行こう。


 ルリカがいるかもしれない。


 テレポートをし、冒険者ギルドの扉から飛び出す。


「ですから、魔族がライガナ森林に――」


「流石に早すぎるだろ!」


「そうだそうだ! 魔族共はそんなに早く進軍出来ねぇ筈だ!」


「ライガウルフを討伐できなかったからって嘘吐いてんじゃねぇのか!?」


 うわぁ……なんか荒れてる……。


「おい皆!」


 そう叫ぶとギルド内にいた冒険者全員の視線が俺に向けられる。


「ルリカの言ってる事は本当だ」


「イッ、イイジマ……!」


「証拠はあるのか?」


 ラズィスさんが重い声でそう言う。


「これだ」


 取っておいた魔族の血を取り出す。


 宿のおばさんの為に取っておきたかったんだが……仕方ない。


「それは?」


くだんの魔族の血だ」


「「「!?」」」


 周りの冒険者の目が見開く。


「って事は、俺らヤバいんじゃないのか?」


「ライガナ森林ってすぐ近くだろ? 早く逃げた方が良いんじゃないか?」


 ギルド内がざわつく。


「お前ら、一旦静まれ」


 その一言でギルド内に静寂が訪れる。


 あらやだカッコいい……。


「俺はすぐに王都へと連絡を入れる。

 お前らは魔族が来ないかの警備をするんだ。

 そんで見つけたら、死ぬ気で俺に伝えろ。

 魔物や魔族の脅威から人々を守るのが俺らの仕事なんだから、その使命を全うしろ!」


 そうラズィスさんが言い終わると皆が叫び始める。


「うおおおおお! やってやるぜぇ!」


「魔族を見つけたら絶対に伝えます!」


 凄い信頼されてるんだな、ラズィスさんは。


「って事で、イイジマとルリカ……だったか? お前さんらも魔族を探したりしてくれ」


「わ、分かりました!」


「分かった」


「じゃあ頼んだぞ」


 ラズィスさんはギルドの奥へと行ってしまった。


「イイジマ、助けてくれてありがとう。そして、宿のおばさんに渡す筈だった血を使わせちゃってごめん……」


「あれくらい平気さ。ちゃんとメモに書いてある素材を取るとするよ。

 俺らも宿で休んだら、魔族を探しに行こうぜ」


「……分かったわ!」


 そして俺らは宿へと向かった。

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