そうだ、武器屋に行こう

「そういえば」


 宿の部屋でそう呟く。


「どうしたの?」


「俺武器持ってなかったなーって」


「た、確かに言われてみればそうね……」


 スライムを倒した時なんかも全部素手で殴って倒していた。


 というか俺この状態でライガウルフ倒そうとしてたんだよな……。


 裏技バグを使う脳筋ぶん殴りマンじゃねぇか。


 面白そうではあるが、俺の職業『ランナー』だからなぁ……。


「魔族と戦うには流石に武器がいるからちょっと買ってくるか」


「わ、私も行くわ!」


「いいよ、俺が一人で行ってくる」


 そう言って部屋を出る。


 さてと……武器屋は確か宿を出て右の方だったよな……?


 町並みを見ながら歩く。


 途中で市場に寄って林檎りんごを買った。


「シャク」


 ……美味い。


 種を吐き出しながら芯の部分以外全部食べた頃ぐらいに武器屋に着いた。


 近くのゴミ箱にポイッとして店に入る。


「いらっしゃい」


 上半身裸体のムキムキおじさんが出迎えてくれた。


 少なくとも俺には需要が無い。


「見ねぇ顔だな、旅人か?」


 旅人……では無いんだよな……。


「あー……冒険者だ、つい最近なった」


「なるほど、今後ともこの店をご贔屓ひいきにな!」


 そう言って店主がガハハハ! と笑う。


 この人確かゲームでは脳筋キャラだったの思い出したわ。


 なんか共闘イベントあったんだが、この人素手で魔物10mくらい吹っ飛ばしてたな。


 絶対プレイヤー全員が『いやあいつが魔物だろ』って思ったぞ?


「どうしたんだ? 俺の上腕二頭筋じょうわんにとうきんに何か付いてるか?」


「…………筋肉が」


「ガハハハ! そうだろう、そうだろう!」


 店主はそう爆笑して奥から巨大な両手剣を持って来た。


 ……見た事の無い剣だ……。


「持ってみろ」


 そう言って店主が両手剣を地面の隙間にピッタリとハメる。


 ここにしたりしてたな……?


 両手剣のつかを持って、上に引っ張ってみる。


「うわ重!?」


 何だこの剣!? ピクリとも動かねぇ!


「ガハハハ! これを持ちたかったら俺の様な上腕二頭筋になるんだな!」


 そう言って店主さんは剣をしまった。


 な、何だったんだ……。


 取り敢えず武器を見てみるか……。


 片手剣や両手剣、杖にブーメラン……色んなのがあるなぁ。


 まあ始まりの町だから弱いヤツばっかしかないけど。


「うーん……」


「ピンってきたヤツで良いんだ、その武器がお前を呼んでいる」


 そう言われてもなぁ……前の俺は裏技で最強武器量産して使ってたからなぁ……。


 そう思いながら店の武器が飾られた所の少し奥の方に行く。


「な!? これは!?」


 目の前には、インワドには存在していなかった武器が飾られてあった。


「…………そいつに目をつけるたぁ、良い外眼筋がいがんきんをしてるな」


 黒くて手で握りやすい形をしたソレは、人を殺す為に作られた武器……その名も……


だ……」


 正確に言うと、ピストルがあった。


 何で始まりの町にあるんだ?


 出る町間違えてるだろ。


「これを買う」


「3000Gだ」


 ボススライムを換金して手に入れたお金を払う。


「弾も160発付けてやろう」


 そう言って弾薬の入った箱を渡される。


「ありがとう、弾補充する時にまた来るよ」


「おう、上腕二頭筋を鍛えておけよ」


 店を出て買った銃を眺める。


「いやぁー…………重い」


 銃ってこんな重いんだな。


 いや、あんなに筋肉ムキムキの店主が作ったからか?


 マガジンを抜いてみる。


「結構軽くなるな」


 やっぱ弾がかなり重いっぽいなぁー。


 俺は銃に詳しい訳じゃないからこれがなんて言う銃なのかは分からないが……今この世で最も強い武器だろうな。


 そう思いながら宿に帰る。





「ただいまぁー」


「おかえり、武器は何を買って来たの?」


「これだ」


 腰のベルトに差し込んであった銃を取り出す。


「な、何それ?」


「銃って武器だ。ぶっちゃけこの世で一番最強の武器だな」


「そ、そんな小さい物が!?」


「おいおい、小さいからって舐めない方が良いぞ? 爆弾とか……小型だけど威力が凄いのとかあるだろ?」


「そ、そうね……確かに……」


「んじゃあ俺は少し練習でもして来るから」


 そう言って外に出ようとするとルリカが一歩近づいて


「わ、私も今度は行くわ!」


 と言ってきた。


「何で?」


「その銃っていうのがどういうのか気になるからよ!」


 あー確かに初めて見る武器がどういうのな気になるよな……。


「分かった、行こうか」


「! ええ!」


 その後、近くの木で『初心者平原』にテレポートするのだった。

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