37 パワースマイル城



ノーマに連れられて、私たちは城の敷地に足を踏み入れた。

すると、城門にいる騎士がノーマに気付き、ビシッと敬礼した。


「シスターノーマ! パワースマイル!」


「はいはい、パワースマイル」


なんだパワースマイルって。

この城の挨拶か?


「シスターノーマ、そちらの方々は?」


「女神教の新たな教徒達だよ。宜しくしてやってくれ」


「はっ! パワースマイル!」


と、騎士は私たちに敬礼した。


「ひゃっ!? ぱ、ぱわーすまいるっ!」

「パ…パワースマイル…」

「うゆー、ぱわーすまいる」


私たちも騎士に敬礼した。




 ◇ ◇ ◇



城の中に入った。

ノーマの後ろに付いて、広い回廊を歩いていると、遠くからガラガラと音が聞こえてきた。

見ると、病院とかにあるキャスター付きのベッドがこっちに運ばれて来ていた。

ベッドの上で誰かが横になっている。

それを見たノーマは慌てて私たちに指示をした。


「…みんな、端に寄るんだ! 国王陛下のお通りだ!」


国王陛下?

あのベッドで横になってるのが?


国王陛下は私たちを横切る間際に小さく手を上げてベッドを止めさせた。


「…おお、シスターノーマ…か…」


「はっ! 国王陛下、パワースマイル!」


ノーマはビシッと敬礼した。

私たちも敬礼してパワースマイルと言った。


このヒトが国王?

種族は人間のようだ。

私よりも若い…が、痩せ細っていて老けて見える。

すごく体調が悪そうだ。


「シスターノーマ…、世は式典の演説後……妻の…元に参る…。貴女にも…また…付き添ってもらいたい…」


「………はっ。…国王陛下のお心のままに…」


あれ? ノーマが辛そうな顔をしてる?

それにしてもこの国王、私より若いのにもう結婚してるのか。

政略結婚というやつか?

奥さんも若いのかな?

もう、エッチはしたのかな?

国王は病弱そうだから奥さんがリードするのかな?

ふひひ。


「ふゆぅ…。トクトリス、いやらしいこと考えてる顔してる…」


国王は視線を私たちに向けた。


「シスターノーマ…、この者達は…?」


「新人の女神教徒です。この城に住み込みで働いてもらいます」


「そうか…。ラミアのシスターとサキュバスのシスターよ…。ここを自分の家だと思って…、健やかに…楽しく…過ごしてくれ…。力強い笑顔を…忘れずにな…。パワースマイル…」


そう言って国王はガラガラと運ばれていった。


その後、私たちはドレッシングルームに通された。

そこには女神教のシスター服が何着も取り揃えられていた。


「さて、みんな! 自分に合うシスター服を選んでいてくれ! 私は野暮用があるから、ちょっと出ていくよ! あ、トイレは廊下の突き当りだ!」


そう言ってノーマは私たちを残して出ていった。


「わぁ~! すごい数のシスター服です! どれにしましょう、迷っちゃいますねぇ!」


ラミィは目を輝かせている。

迷うも何も、サイズが違うだけで全部一緒じゃないか。

私とユニコは適当なシスター服にちゃっちゃと着替えた。


「うゆ~! トクトリス、やっとシスターになれたねー!」


「うふふっ! そうね! これで誰も、私が処女でいる事に文句を付けられないわ! 戒律を守って、貞操を守らなくちゃいけないものね!」


私とユニコはくるくる回ってシスター服のスカートをなびかせた。


「ええっ!? 二人とも、もう着替えたんですか!?」


「はい。ラミィさんはこっちのXLサイズがいいと思います。おっぱいおっきいし、蛇の部分が太くて長いですから」


「はうぅ…」


私はXLサイズのシスター服をラミィに手渡した。


「トクトリスー、探検にいこうよー」


「そうね、行きましょうユニコ」


「ええっ!? 勝手に出歩いちゃっていいんですか!?」


「王様が言ってました。ここを自分の家だと思って、健やかに楽しく過ごしてくれって。だからいいんです。王様命令ですから」


「で、でもそれって、建前なんじゃ…」


何か言いたげなラミィを残して、私とユニコは部屋を飛び出した。




 ◇ ◇ ◇




まず最初に、私たちは書斎に侵入した。

王家がどんな本で性教育を受けているのか気になったからだ。

もしかしたら、王家秘伝の性技書があるかもしれない。

期待せずにはいられない。


…が、結果は残念なものだった。

「帝王学」「政治理論」「経済学」「法令」「歴史書」「世界地理」…。

小難しい内容の本しかない。

エッチな本どころか漫画も小説も無い。

通りで書斎に誰もいない訳だ。

つまらない本しかないから誰も寄り付かないんだ。

私たちは落胆しながら書斎を後にした。




 ◇ ◇ ◇




当てもなくぶらついていると、騎士の詰め所に来ていた。

騎士たちはテーブルに群がってカードゲームをしているようだ。

仕事をサボって、トランプで賭け事でもしてるのかな?


「俺のターン! ドロー! モンスターを召喚してダイレクトアタック!」

「ぶひひっ! 今、攻撃を宣言しましたな…? トラップカード発動!!」

「な、何いいいィッ!!!??」


懐かしい。

子どもの頃流行ってたトレーディングカードゲームだ。

オークのオク太がよく遊んでたっけ。


「す、すげぇ!! さすが『騎士団長』! カードの腕前と『三槍流』の称号…。天は二物を与えたのか!!」

「ぶひひっ! 僕は『騎士団長』にして『デュエルキング』! 皆の挑戦、槍でもカードでも…いつでも受けて立ちますぞ!!」


あのオークの騎士団長が勝ったようだ。

私も昔、カードを集めてたけど、誰も遊んでくれなかったな…。

ルールが複雑でユニコの頭じゃ理解できなかったし…。



……っていうか、あの騎士団長って…。



「…オ、オク太君っ!?」


「ぶひ?」


デュエルキングかつ三槍流の称号を持つオークの騎士団長は振り向いた。



「ぶ、ぶひひいぃ~~~~~~~!!!!? ト、トト、トクトリスちゃん?!?!?! どうしてここにトクトリスちゃんが!!??!!?」



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セイショク の トクトリス ぽにちっち @poniti

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