27 vs ユニコーン『透明な雨』③
私が学生寮に着いた頃には、もう二階まで完全に水没していた。
この雨を降らせている女は狡猾だ。
深夜なら処女も寝ている。
感触が無い水が迫って来ていても、寝ていたら処女だって気付けない!
男も非処女も処女も皆殺しにするために深夜に仕掛けてきたんだ!
私は三階の窓から学生寮に入った。
そこではラミィが声を張り上げていた。
「み、皆さん! 起きてください! 水が…! 水が迫ってきてるんです!!」
さすがラミィだ!
深夜の礼拝で異変に気付いて、みんなを避難させに来たんだ!
「うっさいわねー! このラミアは! 水なんてどこにあんのよ!」
「薬でもやってんじゃないのぉ?」
「は、はうう…」
エル美と取り巻きも無事だ!
ラミィの心を折りにかかっている!
後は私が何とかしよう!
「ねぇ、エル美ちゃんたち」
「んげ!! トクトリス!! 気安く話しかけないでよ!!」
「今から屋上にいかない? 今夜、イケメエル君が本命彼女を決めるコンテストを、屋上で開催するって話よ? キープから本命に格上げされるかも」
「えっ! イケメエル様がっ!」
「上位種の天使と付き合えるなんて!」
「今彼と別れてでも付き合いたいわ! 行きましょ!」
エル美たちはドタドタと寮の屋上へ向かった。
「ラミィさん!」
「ト、トクトリスさん! トクトリスも水が見えるんですね!」
「はい! 女子寮のみんなはイケメエル君をダシにして屋上へ誘導してください!」
「で、でも…、イケメエル君に悪いんじゃ…」
「そんな事言ってる場合ですか! 私は男子寮に行きます! 女子寮は任せましたよ!」
「は、はいぃっ!!」
◇ ◇ ◇
私は男子寮三階で声を張り上げた。
「みんな起きて──!!! 屋上で乱交パーティーが開催されるわ!!! こんなチャンスまたとないわ!!! みんなで参加しましょ──!!!」
「…な、なんだって────ッ!!!」
三階の男子たちが部屋から飛び出してきた。
「その話は本当か、トクトリスさん!?」
「本当よ!」
「僕、短小だけど参加していいかな…」
「勿論よ!」
「…!…、…!」
「陰毛パンツエルフ君! 当然、アナタも参加してちょうだい!」
「俺、戒律で童貞を守らなきゃいけないんだけど…」
「大丈夫! そういうヒトの為に、同じように戒律を守っている処女の用務員さんが、手コキのサービスをしてくれるわ!」
「用務員って、あのラミアの!?」
「あのヒト、結構可愛いよな!!」
「うおおおおおおお!! 行くっきゃね────!!!」
「…!…、…!」
「上の階の男子たちにも伝えてあげてね! 今夜は眠れない夜になるわ!」
男子たちはドタドタと寮の屋上へ向かった。
私は下の階の男子も避難させようと、階段に向かった。
しかし、そこで見たのは水にどっぷり浸かった下り階段だった。
一階二階にいた生徒たちは助けられなかった…。
私は遣る瀬無い気持ちのまま、屋上へ向かった。
◇ ◇ ◇
寮は四階建てで、三階と四階にいた生徒はみんな屋上にいた。
「ウヒョー! 本当に女子がいるぜ! マジなんだな、乱交パーティーってのは!!」
「何で男子がいるのよ!? イケメエル様はどこよ!?」
「よ、用務員さん! て、手コキ、お願いします!!」
「えっ、ええ〜!!? 何の話ですか〜〜?!!」
水はもう四階を水没させている!
もうすぐ足元まで来る!
「ちょっと! あれ、イケメエル様じゃない!?」
女子の一人が校舎の上空を指差した。
校舎も四階建てで、屋上は同じ高さだった。
空を飛んでいるのはイケメエルか?
他に誰か、屋上にいるのか?
土砂降りの雨と、月明りを遮る雨雲でよく見えない。
私は男子に尋ねた。
「ねぇ、よく見えないのだけど、あそこで飛んでるのはイケメエル君なの? 屋上に誰かいるの?」
「トクトリスさん、視力が悪いんだね。こんな月明りが眩しい澄みきった夜なのに」
「いいから答えて!」
「わ、わかったよ…! 飛んでるのはイケメエル! 屋上にいるのは……知らないヒトだ。車椅子に乗ってる…人魚…かな?」
人魚!?
だとしたらマズい!!
水は屋上を超えて溜まる!!
エラ呼吸できる人魚なら、学園を完全に水没させても呼吸ができる!!
水は、既に膝の位置まで差し迫っている!
私はコンドームに風の魔石で空気を入れ、みんなに配った。
「みんなこれを持って! ちゃんと避妊はしなきゃね!」
「そうだな! 避妊は大切だ! けど何で膨らませたんだ?」
「コンドームなんて要らないわ! 私はイケメエル様の子を身籠るのよ!」
「いいから持っていて!! ほら、ラミィさんと陰毛パンツエルフ君も!!」
「は、はいぃっ!!」
「…!…、…?」
私はみんなに半ば強引にコンドームを押し付けた。
水は腰まで来ている!
「あれ? なんか…足が動かしにくいような…?」
「ちょっと…、ここから下の空気…重くない? なに…これ…?」
みんな異変に気付き始めた。
「みんな! 絶対にコンドームを離さないで! しっかりコンドームに掴まるのよ!」
「あれ…? コンドームが浮かんでぼぼぼぼ…!?」
身長の低いノームの口元まで水が来た!
私はノームを支えて言った。
「頭をコンドームより高い位置に! 足をバタつかせて! 水の中を泳ぐように!」
ノームは言われた通りにする。
「お…おい。そのノーム、浮いてるぞ…!!」
「な、何っ!? 何が起きてるのっ!?」
「あ、あれ!? 俺のコンドーム、勝手に上がって行く…!?」
もう水は、首まで来ている!
「みんな!! 絶対にコンドームより下の空気を吸わないで!!!」
ざっぶ────ん!!!
カルテット聖職学園は、完全に水没した。
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