20 第一回・シャセイ大会



教室から追い出された私は、打つ手を考えながら学園内を探索した。

このまま授業に出られなければ、単位が取れない。

落ちこぼれ…、成績最下位…。

編入試験の道具にされたあの劣等生みたいに、マゴル教頭に指を切断されてしまう…。


しかし、これといった対策は思いつかず、当ても無くさまよい続けた。

図書室に行ってはエッチな宗教画集を読んだり、食堂に行ってはドカ食いして気絶したりと、時間を浪費してしまった。


そして放課後になり、日も落ちた。

そろそろ入浴時間だ。

大浴場は時間帯で女子と男子に別れている。

始めは女子の時間だ。

私とユニコは大浴場へ向かった。




 ◇ ◇ ◇



「いやあああああ!!! 卑しいサキュバスよ!!!」

「目付きがイヤらしいわ!!!」

「出て行けヘンタイ!!!」


大浴場に入った瞬間、追い出されてしまった。

何で私はこんなに女子に嫌われるのか?

きっと女子は本能的に、自分達より美人の私を敵視してしまうのだろう。

仕方ない、男子の時間帯に入れてもらおう。


図書室に戻って、極東の春画集を読んで時間を潰した。


しばらくして、男子の入浴時間になり、再び大浴場へ向かった。




 ◇ ◇ ◇




脱衣所で全裸になり、大浴場に足を踏み入れた。


「……えっ!?」

「わっ!?」

「…なんだ?!」


男子の注目を浴びる。


「うゆ〜…。トクトリス、みんな見てるよー…?」


「そうね。でも、男子の入浴時間に女子が入ってきたら見るのは当然よ」


「トクトリスは恥ずかしくないの?」


「? 私は見られて恥ずかしいプロポーションをしてないから恥ずかしくないわ。アマンダのせいで左の翼が欠けちゃってるけど、片翼って響きがかっこいいから今は気に入ってるし」


「ふゆぅ…。トクトリスがいいならいっか」


私は体を洗おうとシャワーに向かう。

そこで、真面目そうなノームに呼び止められた。


「ちょっと君!! 何なんだいったい!! 今は男子の入浴時間だ! 女子の入浴時間はとっくに終わっているぞ!!」


「ごめんなさい。私は編入生のトクトリス。女子にイジメられてて、お風呂に入れなかったの。だから、悪いのだけど、男子と一緒に入れてもらえないかしら?」


「なんだと!? し、しかし…、君がいると我々男子は目のやり場に困ってしまうんだ…!」


「あら、見てもいいわよ? 見られて恥ずかしい体じゃないから」


「そ、そういうことではなくてだな…! その、なんと言うか…」


真面目ノームは前かがみになって、タオルで股間を隠している。

周りを見ると、他にも何人か同じ状態になっていた。


そうか、そういうことか。

なら…。


「うふふっ。爆発しそうでツラいのね。いいわよ、迷惑をかけてるのは私だもの。…モチロン、見抜き…、OKよ」


大浴場内がざわめいた。

椅子に座ってシャワーを浴びようとした頃には、周りに人だかりができていた。


「あっ、でも、ブッカケるのはやめてね? 私、これでも身は清いの。ダすのは良いけど、掛からないようにしてちょうだい」


そう言ってシャワーを浴び始めると、ガタイの良い男子が私の肩を掴んだ。


「おいおい、女が一人で入って来てそりゃねーんじゃねーか? お前、本当は犯されに来たんだろ?」


イキリ勃ったモノを私に近付ける。


「ゆん!」


キン!


「はうわっ!?!?」


イキリ勃ったモノの下にぶら下がってる玉をユニコが叩いた。

悶える彼に、皆の視線が集まってる間に、ユニコに耳打した。


「ありがとうユニコ。でもダメよ、アソコを叩いちゃ。アソコは男子の大事な所なの。叩くのは叩かれて喜ぶドMのヒトだけにしなさい」


「うゆ〜…。じゃあどこ叩けばいいの?」


「そうねぇ…。顔か、お腹か、お尻にしなさい」


「わかったー」


ユニコが納得してくれた所で、みんなに忠告した。


「今のは私の魔法よ。私に触れれば、そこで悶えてる彼みたいにイタい思いをする事になるわ。だから、見て楽しむだけにしてちょうだいね」


それから、男子は触れてこなくなった。

しかし、まだ人だかりはできたままだ。

みんな目で楽しんでくれてるようだ。


体を洗い終わった私は浴槽に移動した。

男子たちもついてきた。


湯船に浸かると、エルフの男子が湯面を漁ってるのを見つけた。

疑問に思って声をかけた。


「アナタは何をしてるの?」


「…! ……、……」


恥ずかしそうにして何も答えない。

シャイボーイのようだ。

代わりに他の男子が答えた。


「コイツ、湯面に浮かんだ女子の陰毛を漁ってるんだぜ。陰毛を集めてパンツを作ってるんだ。とんでもない変態野郎だぜ!」


「………」


変態と言われて傷付いたのか、陰毛パンツエルフ君は俯いてしまった。

普通の女なら生理的嫌悪感をいだく所なのだろうが、私はサキュバスだから陰毛パンツエルフ君の行動に感心してしまった。


「凄いじゃない! 湯面に浮かぶ毛の中から女子の陰毛だけを見分けるなんて、卓越した選球眼を持っているのね! …そうだ! 私の陰毛も良かったら使って!」


そう言って陰毛に手を伸ばす。

陰毛パンツエルフ君は嬉しそうにしている。


しかし、他の男子が声を上げた。


「そいつだけズルい! 僕もトクトリスさんの陰毛が欲しい!」

「俺も俺も!」

「僕にも陰毛ください、トクトリスさん!」


「ちょ、ちょっと待って! 私、体毛濃い方じゃ無いから、そんなに採れないわ…。どうしようかしら…」


何か良い方法はないかと考えて、革新的なアイデアを閃いた。


「そうだ! みんなでシャセイして、一番遠くに飛ばせたヒトに私の陰毛を進呈するわ! それなら公平でしょ?」


「うおおおおおおお!!!」

「よし、やってやるぜ!!」

「僕も参加するぞ!」

「くそっ…。さっき見抜きしてしまった…」


男子は血気盛んに参加表明した。

みんな楽しそうで、なんだか私まで楽しくなってきた。


「うふふっ! じゃあみんな、一列になってこの線に並んで! 第一回・シャセイ大会の開催を、ここに宣言するわ!」



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