3 聖職選び
ユニコと出会ってから10年が過ぎ、私は15歳になった。
背も伸びて、おっぱいもお尻も大きくなり、男性の劣情を誘うサキュバスらしい体型になった。
ユニコも私の体を気に入ってくれている。
対してユニコは多少背は伸びたものの、おっぱいは控えめで上半身は幼さが見受けられる。
しかし、走るのが好きなせいか下半身は太くムチムチとしていて、そのアンバランスさが私の劣情を誘った。
今日も私は、ユニコと一緒に朝を迎える。
「んちゅ…れろれろ…ぷはぁ…。…おはよう、ユニコ」
「ちゅぴっ…れろん…ぷはっ…。…おはよう、トクトリス」
おはようのキスを終えて、私たちは布団から出た。
居間に下りると、ママがイビキをかいて寝ていた。
遅番で疲れているのだろう。
ママは「トクトリスもあと3年で風俗デビューね!」なんて言ってたけど、冗談じゃない…!
私はもう処女がなんなのか知っている!
風俗嬢になったら処女を失ってしまう!
ユニコを認識できなくなってしまう!
「風俗嬢にはなりたくない!」
そうママに言った事がある。でも、ママは、
「私たちサキュバスはエッチな事しか取り柄がないから、他のお仕事はムリよ。風俗嬢がイヤなら、早くイイ男を捕まえて結婚する事ね。ママはニートの娘の面倒見るのヤダからね!」
と言った。
風俗嬢も結婚も絶対に嫌だ…!
私は…ユニコとずっと一緒にいたいんだ!
だから私は、大手を振って処女でいられる為に、シスターを志した。
◇ ◇ ◇
シスターになるには、宗教団体に所属する必要がある。
役所の掲示板に貼ってある求人広告を見ると、多種多様な宗教が募集を掛けていた。
改めて意識して見ると、シスターにも色々な種類がある。
「女神の教えを忠実に守るシスター募集!『女神教』」
「パーティの要! 来たれ、未来の回復職!『ヒーラー協会』」
「今日からアナタも巫女! 祈祷を捧げ、神々の恩恵を民にもたらしましょう!『八百万神宗』」
「↑の広告は全部ウソっぱち! 神は我等の信じる唯一神だけ! 共に異教徒どもと戦おう! 血の気の多いシスター募集!『唯一神教』」
「トクトリス、どれにする?」
ユニコは私にくっつき、体を擦りつけながら尋ねた。
「そうねぇ…。取り敢えず、全部回ってみましょうか」
◇ ◇ ◇
最初に女神教の教会に向かった。
女神教はこの国で最もポピュラーな宗教だ。
教会に着いて扉を開けると、シスターの姿があった。
私はシスターに話し掛けた。
「すいません…。求人を見て来たんですけど…」
「あらぁ、シスター志望の方! いらっしゃい! 良く来てく………………」
シスターは私を見て硬直した。
「…? あ、あの…。どうか…しましたか…?」
シスターは蔑むような目付きで言った。
「はぁ…。何よアンタ、冷やかし? サキュバスがウチの教会に何の用なのよ?」
「え!? わ、私は…シスターになりたくて…」
「シスターになれるのは、信仰のパラメータが高い者だけ! 人間かエルフかノームしかウチは採らないよ!」
「そ、そんな! 私、頑張りますから…!」
「頑張って済む問題じゃないの! ウチも商売なの! 誰がサキュバスのシスターなんかに回復の依頼をするのよ、気持ち悪い!」
ユニコはムッとして、シスターの前に立ち、
「トクトリスをいじめるな」
と言って、シスターの肩をドンと押した。
シスターは「きゃっ!」と短い悲鳴を上げて転んだ。
「めっ! ダメじゃないユニコ、いきなり乱暴したら…! シスターさん、すみません! 大丈夫ですか…?」
シスターはユニコ……ではなく、私を睨みつけて叫んだ。
「きいぃぃぃぃ!!! いきなり魔法で攻撃するなんて!!! 穢らわしいサキュバスめ、早く出て行け!!!!!」
シスターはユニコが見えていなかった。
どっちが穢らわしいんだか。
私は女神教に見切りをつけて、教会を後にした。
◇ ◇ ◇
その後、ヒーラー協会、八百万神宗、唯一神教にも行ったけど、全部断られた。
唯一神教にまで断られたのは流石にショックだった。
「こうなったら、自分で宗教を興すしかないわ!」
そう決心した私は、まずは回復魔法を覚えようと、魔導書店に行った。
「………魔導書って、こんなに高いの…?」
一番安い初級回復魔法【ヒール】の魔導書でも、50万エンもする。
「ねぇトクトリス、ユニコが盗もうか? 店主、おじいちゃんだから、ユニコ見えないよ?」
「ダメよユニコ。万引きは犯罪よ」
「ふゆぅ…。じゃあどうするの?」
「そうねぇ…。いつもの場所で稼ぎましょうか」
そうして私たちは、いつもの場所、裏路地にある『裏カジノ』へ向かった。
◇ ◇ ◇
裏カジノの扉を開くと、店員たちは一斉に私を見て、すぐさま警戒した。
「賭場荒らしのトクトリスが来たぞ……!!」
「て、店長呼んでこい!!」
そんな声が聞こえてくる。
ユニコを使って街中のカジノで荒ら稼ぎしてきたから、「賭場荒らし」なんて異名を付けられた。
荒らしすぎて各所で出禁をくらい、もうこの裏カジノしか稼ぎ場所がない。
私は入口で立ち止まり、店内を見回した。
男性の店員。男性の客。この辺はOK。
問題は……、バニーガールと、男性客が連れている女性客…。
ユニコはすかさず店内に侵入し、バニーガールの前に立った。
「こんにちは、ユニコです。見えてますか?」
バニーガールは何も言わない。
ユニコはダメ押しでバニーガールのブラをずらした。
「え? きゃあ!!!?」
バニーガールは屈んで丸くなった。
皆の目線がバニーガールに集中する。
ユニコは次に女性客に近付き、耳元で囁いた。
「あれ、ユニコがやったの。アナタにも同じことするね」
ユニコは女性客のドレス掴むと、勢いよく下げた。
「え? きゃあ!!!? 何すんのよ!!!」
そう言って女性客は隣の男性客にビンタした。
確認完了だ。
この場に処女はいない。
私は店内に足を踏み入れた。
すると、店の奥から店長が現れた。
見知った顔で、聞き知った声の店長が。
「…ったく、何だってんだお前ら〜。いったい誰が来たって…………、んげげええぇぇぇ───ッ!!?!!? ト、トトト、トクトリス──ッ!!?!!!」
すっかり顔馴染の裏カジノの店長。
ゴブリンのゴブ夫だ。
「こんにちは、ゴブ夫君。また遊びに来ちゃった」
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