4話 由奈と雷
優斗
色々と調べて分かった事は大体SFやオカルトめいた事だけだった。有力だと思えるの時空の歪み説や神隠しの逆が起こった話、等々、だった。通常では笑い話にすらならない状況が起こっている。
表に出て階段を駆け下りる。途中滑って転びかけながらも優斗は先を急いだ。
今日も空は曇っていた。
数分で実家に到着する。
ドアホンを鳴らすと紗羅が即座に応じてくれた。
ドアが開かれる。紗羅の後ろに隠れて由奈が顔を覗かせた。ぱっと顔が明るくなったのは知っている人間がそこにいたからだろう。初めてあった時はあんな風だったから、気丈に振る舞っていた様だが、これが素なのかもしれない。
「おはようなのじゃ」
「その言葉遣い、なんとかならないのか?」
「ええー」
どうやら出来るらしいが、キャラクターの口調がそうだったせいか、直す気はないらしい。
今はまだ不安にさせたくない。そんな事を思いながら。ふと気をつかっている自分に気づく。なんだろう、この感覚はと思いながらも考えを振り払う。
「おはよう。何か分かった?」
鋭い。朝早くに尋ねたからにはそれなりの訳があると見抜いている様だ。その時、ベランダに雷が落ちた。激しい音がする。落ちた場所から蒸気が立ち昇る。
由奈が現れてからと言うもの、落雷が町に集中していた。火事にならないのが不思議なくらい。
「怖いわね。こう立て続けだと」
「立て続け?」
紗羅が頷く。由奈も同じように頷いていた。まだ半信半疑だったが、ネットでの情報を思い出さずには要られなかった。異物は排除される、と言う時空の法則を。雷に関係しそうな情報がそれだけだったと言うのもある。
「紗羅、ちょっと」
何かを察したのだろう。つまらなそうに由奈が部屋へと引っ込んだ。優斗は先ほど見た話を玄関の外で紗羅にも伝えた。
「地下にいれば助からない?」
「この辺りに地下はないぞ」
優斗が即答する。
『車っ!』
そして同時に思い付いた。
再び空が白く染まる。轟音が木霊する。
「きゃあっ」
二度目の落雷に由奈の小さい叫びが響く。急いで玄関を開け放つと部屋の電気が消えていた。薄暗闇の中、足の指を押さえている。その指に小さな火傷が出来ていた。誘導雷が起きたのだろう。近くには電源タップがあった。何度も続く雷に避雷針が壊れないとも限らない。
「由奈ちゃん、お姉さん達とドライブ行こう」
指の手当をしながら紗羅が提案をする。車の中なら安全のはずだった。痛みで涙目になっていたがこくんと頷いてくれた。
「車を借りてくる。一時間程待っていてくれ。由奈はベッドに。紗羅、ごはんの買い出し頼む」
「了解」
「わかったのじゃ」
紗羅とマンションの玄関で分かれ、レンタカー屋へと向かう。
由奈の近くにいなければ雷には出会わなかった。何事もなくレンタカー屋まで辿り着く。借りる期間を一日に設定しようとして二日に変えた。金額は大学三年生には痛かったが背に腹は代えられない。
車のキーを差し込むとラジオを付けた。こう言う時はテレビよりラジオの方が頼りになる。急に降って来た横殴りの雨がドアを叩く。
――突如太平洋側に現れた台風九号は伊豆半島南部から北に向かっており――
「台風だと」
それは由奈の招いた物だろうか? いきなり現れた台風がこちらに向かっている。背筋を汗が伝っていく。急いで紗羅に電話をかける。
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