ある日の二人

「巳錫、おはよう。昨日も夜更かししたの? 」

「おはようございます。お嬢様」

「……巳錫? 」

「えっ……あ……ごめん、お姉ちゃん」

「……大丈夫? まだ疲れてるなら寝ててもいいよ」

「ううん、ごめんね。ちょっと寝ぼけてたみたい。大丈夫だからさ、ご飯食べよう」


 そう言いながらフラフラと台所に向かう彼女を見て、私ーー24号は思考を巡らせる。


「……もしかして」


 ある可能性を想起するが、否定する。そんなことを彼女がするはずがない。


「お姉ちゃん〜、タオル出し忘れたよぉ」

「はいはい、すぐ行くから待ってて」


 今の優先事項は彼女にとって理想の姉を演じることだ。別の事に頭を使うのはよくない。それに恐らく、言及すれば私は消される。

 ……こんな時に本物の結城千早はどうするのだろう。彼女を肯定するのか、それとも否定するのか。

 “本物”が羨ましいと思う、数少ない瞬間だ。

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