後日談3 魔王と聖女
「今日は家の中で過ごしてほしい。」
リサさんが朝食の最中にそう伝えてきた。
そういえば魔王と会うって言ってましたし、島には私しか居なくなるのかな?
「わかりました。」
「いい子だ…」
頭撫でるときに何か魔法を使っているのかと思うぐらい心地良い、なんだか暖かい。
朝食を食べ終わり私は洗い物をしていた。
最初はリサさんがやると言っていたけど、全てやってもらうのは申し訳なくて私が勝ち取った。
その話し合いの過程で、これからは作る担当がリサさん、片付ける担当が私となった。
「では行ってくる。」
片付けを終えた私に話しかけてきたリサさんはいつの間にか正装に着替えていた。
「はい、いってらっしゃいませ!」
ん?聖女としての在り方が友好的だな。
昨日の夜からなんとなく気づいていたが、聖女としての在り方が不安定になっている。
急に怒りに支配されそうになったり、急に泣きたくなったり、急にリサさんへ恋に似ている感情が湧いたりなどかなり不安定だ。
「私にはどうしようもできませんが…」
逃げることを考える前、この聖女の在り方を解除しようと試みた事がある。
だがそれは一部の記憶を消されるという形で阻止された。あれほど恐怖を感じる出来事はそう体験できないだろう。
「暇です…」
そして現在の状態は幼く友好的な状態。
思考は普通にできるが喋り方は警戒心のない子供のようになっている。
「歌を歌う?お菓子を作る?
ケーキ!ケーキを作りましょう!」
ちなみに、暇をなんとかしたいと思ったら口から出た言葉である。
「それは良いな、完成したら私にも分けてくれないか?」
「はい!…だぁれ?」
「あぁすまない自己紹介が遅れた。
私は魔王、よろしく聖女様。」
私以外の声が聞こえそちらを向くと私とそっくりな少女、そして自らを魔王と名乗った。
「聖女と魔王の姉妹かぁ、どっちが姉なんでしょうか?」
「お主そんなキャラだったか?
リサの記憶とは随分違うんだな…」
多分リサさんの記憶が正しい、今がおかしいだけです。
「先に言っておくが、私とお主は姉妹ではnーー」
「ぇ…」
「すー…
私が姉だ。」
なんかごめんなさい。
私の顔泣きそうでしたよね。
「お姉ちゃんなんですね!
これからよろしくお願いします!」
「…あぁ、よろしく〜。」
私と会ったのを後悔してそうだ。
でも魔王がどうしてここに来たんだろう?
リサさんが会いに行くって言ってたし、予定の場所はこの島じゃ無いはずだけど。
「リサさんと会わなくていいんですか?」
「向こうは会っている。
私は分身だからな?だが本物でもあるぞ。」
「???」
「そこまで気にすることでは無い。」
「そうですか!」
ガシ
ん?飲み物を出そうと台所に向かおう動いたら腕を強く掴まれた。
「どうしたんですか?」
「ちょっとお着替えしようか。」
「え?」
私の着ているワンピースを脱がそうとしてきた。
流石に抵抗する、魔法ないからささやかな抵抗だけど…
「ほらお姉ちゃんの言うこと聞きなさーい。」
「いや、えっとそのぉ…
ちょっ辞めてぇ。」
魔王は魔法まで使って動きを封じてきた。
片手にはいつの間に出したのか露出の多そうな服を持っている。待って私あれ着るの?!
「あの!その服はちょっと露出多いんじゃないかなぁって…」
「寒さなら安心するといい、服に様々な魔法を付与してあるから快適に過ごせるぞ。」
そうじゃない!
問題は気温じゃなくて露出の方よ?!
「あー、もう暴れないの。
【スリープ】」
こういう時に限って魔力を一切使えない命令されてる。抵抗できない…
「ふぅ…
これでよし。」
魔王の声が聞こえるのと同時に意識が浮上してくる。
「おはよう!」
「おはようございます…」
憎たらしいぐらいの笑顔の魔王と目があった。
「本当ならもう少し楽しみたかったんだけどリサにバレてキレてるから帰るね!
服は着替えちゃダメだよ〜。これはお姉ちゃんの【命令】」
主従契約に割り込んだ?!
流石は魔王、なんでもできるな…
カタカタカタカタ
机の上に置いてある小物が揺れ…いや家全体が小刻みに揺れ始めた。
「激オコだな。
エイラその衣装でリサをなんとか抑えてくれ、でないと私が怒られてしまう。頼んだぞ!」
一方的に言い放って消えてしまった。
バン!
玄関の方から勢いよく扉が開く音がし、誰か恐らくリサさんがドタドタと足音を立てながら私のいるリビングへと近づいてきている。
「エイラ無事か?!」
「はい!無事です!」
「本当か?怪我、は…?」
私の様子を確認し、多分私の着替えた服装を見て固まった。
だんだんと顔が赤くなっている。
「【こっちにこい】。」
「はい。」
「【抵抗するな】【嫌がるな】
【逃げるな】【声を出すな】」
とても嫌な予感がする命令を連続で出されるが抵抗できない私はリサさんの腕の中に収まる。
そのまま抱き上げられ大体に開いた私の胸元に顔をつけられた。
「…!」
「魔王は殺そうと思っていたが今回は許してやろう。
すまないエイラ、私はもう限界だ。」
な、なにが限界なのでしょうか。
嫌な予感は当たっていたのだろう、そのまま2階の寝室へと連れて行かれた。
「【目を瞑り私に顔を近づけろ】」
あぁ…………
私の唇に暖かい物が当たった。
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