後日談2 開いた距離
リサさんに連れて来られた場所は大陸が見える程度の距離にある島。
そこは立派な家が建っていて、島中から魔道具の気配を感じる不思議な島でした。
「今日から此処に住む、明日魔王と会わなければならないから軽く施設の説明をする。」
「わかりました。」
リサさんは私を抱き上げ島を案内し始める。
家の外は釣り堀、小さめな畑、桜、花壇と海の近くにあって大丈夫なのかと思う物もあった。
家自体は新築といっていいほど綺麗で木の匂いが心地良い、家具も必需品と言える物は揃っており魔道具の家具も大量にあった。
「取り敢えずはこんなものだろう。
これからしたい事はあるか?」
「特には…」
「なら、少し眠りたいな。久しぶりにちゃんと寝れる気がするんだ。
【クリーン】」
私達に魔法を掛け、寝室へと向かっていく。
「寒いか?」
「えっと普通です。」
「そうか、寒くなったら起こしてくれ。」
そう言って私を抱きしめたまま、とても大きいベットに寝てしまった。
眠りに落ちるまで10秒も掛からなかったと思う。
「早いですね…」
私とリサさんの関係は聖国での会話のあと、とても気まずい物となってしまった。
と言っても私が一方的に気まずく感じているだけかもしれないです。
「……」
これから先は一緒に暮らすのだから気の知れない間柄になれればと思っている。
まぁ恨みながらという、とても難しい条件がついてしまっているんですけどね。
この恨むは聖女の在り方にとって重要な物だった。
恨んでいるおかげか現在は安定しているが、人類が滅びたと理解した時に私は暴れたい気持ちに支配されそうになっていた。
「おやすみなさい。」
ー少し経ってー
ん…
あの椅子にどれだけ座ってたのかわからないけど、横になって眠れたおかげかとてもゆっくり休めた感じがする。
「……」
「あっ…」
目を開けたらリサさんと目があった、気まずい…
「「……」」
お互いに少し空気の中見つめ合ってないで、何か言いません?
「えっと…おはようございます?」
「あぁ、おはよう。」
リサさんが動き出す。
まさかとは思うけど挨拶待ちだったのかなしれない。
「もう夜だ。」
「え?」
部屋の中が明るかったから気づけなかったが、窓から外を見ると確かに真っ暗だった。
部屋の明るさもランプや蝋燭みたいに違和感のある明るさじゃなくて、太陽みたいな自然な明るさだった。
「夕飯は何がいい?」
「うぇ?!
そ、そうですね…」
「…ショウガヤキ、ササミチーズ、時間は掛かるがテンプラ。
どれがいい?」
全部和食だ。
「…ささみチーズがいいです。」
「わかった、少し待っていてくれ。
【島から出ないなら自由に動き回ることを許可する】」
自由行動の許可が出ましたが、ささみチーズならあまり時間掛からないでしょうし散歩せずベランダで星でも眺めて待ちましょう。
「タオル、タオル…」
海の近くはやっぱり寒い、体が冷えすぎないようにタオルケットを持っていく。
何度か夜中に空を眺めて過ごしていたけど、今日の星空は少しだけ違和感がある。
自分の中で作ってた星座が1箇所欠けてたり無くなってる部分があった。
「ヘビ、音符、サンマ…」
星を指差しながら自分で考えた星座の名前を言っていく。
この世界に星座という概念があるかわからないけど、もしあったら知りたかったし、無くても大勢に広げられたらと考えてたなぁ。
「綺麗だな…」
前世の記憶取り戻してからすぐのとき、ゲームもテレビも漫画も無い世界で生きていけるか不安に思った時期もあった。
だけど異世界では毎日がとても忙しい。
勿論前世の世界でも忙しかったが異世界ではやった分だけ自分に返ってくるし、やり甲斐も感じることができて暇な時間とかゲームしたいとか考える暇すらなかった。
時間が少し空いたとしても昼なら山菜取り夜なら綺麗な星を眺めたりと、前世では体験できなかった経験も沢山できて、
いつの間にかこの世界が好きになってた。
だからなのかな、聖女の真実を知って全て投げ出してでも直ぐに逃げようと思わなかったのは。
「星を見ていたのか。」
「はい!」
感傷に浸っていたらご飯ができたみたい。
「夕飯が出来たから冷める前に食べよう。
米とパン、どちらが良い?」
「うーん、パンがいいです!」
「わかった、ケチャップも用意しておこう。」
ご飯も合うけどパンにも合う、ケチャップもあるなら最強。
「今度星座を教えてくれないか?」
「…!」
星座を知ってる?
いや、リサさんは私の事を全部知ってそうですしもう驚くことでもないよね。
「今度また綺麗に星が見える日、一緒に星を眺めましょう。」
「あぁ、楽しみにしている…」
今は気まずくても少しずつ、僅かでもリサさんとの距離を近づけていこう。
そうすれば、いつか私に全部教えてくれる日が来るはずです。
あぁ、エイラ…私の太陽…
冷たく感じる態度になってしまっているのは許してほしい。
実は病気かもしれないんだ。
エイラの顔を見るだけで声が出なくなるんだ。
素直な想いを伝えようと思っても声が出ない、出来るのは聖騎士時代の仮面を被って事務的な会話をすることだけ。
ああぁぁぁぁぁぁ!!
好き、このたった2文字が言えない。
エイラは私を恨んでいると思うけどそんな事はどうでもいい、共に過ごせるだけで私は幸せなのだから…
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