第21話 不老の貴族

「全く使えない獣、なぜあのお方はこんなのと手を組めなんで言ったのかしら。」


今回の神は動くのが早い、私も計画を実行するペースを早くするべきだな。


「もう眠いわ、夜更かしは肌に悪いのよ早く死んでくださらない?

【跪け】!」


重力が数倍になったかのように体が重くなり膝をつく、気付かれないようにとある魔道具を取り出して。


「本当は肉体ごと捕まえて遊ぶ予定だったのだけれど、私のドレスを破ったし魂だけ捕まえて楽しむ事にするわ。

永遠にね。」

「残念だが、それは有り得ない。」


隠し持っていた魔道具を起動する。

私が感じていた重力がなくなり、


「グッ…

な、なにが…!」


目の前に立っていたマリアが跪いた。


私が起動した魔道具は1度で使い捨てだが自分が受けている魔法を術者に与える返す魔道具、条件が厳しく使う機会がなかなか無いためほぼ無名の魔道具のため対策している魔法使いも少ない。

今のマリアには私に掛かっていた重力がそのまま返っている。


「く、くるし…」


この魔道具の欠点として、長く持続する系の魔法は術者により解除可能。

だがマリアがその事実を知らない事は調査済み、今まで詠唱をしないで魔法を使ってきた代償だろう、こんな魔法の常識すら知らないのだから。


「貴様が油断せず研鑽を積んでいれば私はここで死体になっていた。」

「うるさ、い!

この、ゴミがぁ…!」

「貴様の無能さには本当に感謝するよ。」


マリアの頭の近くまで近づく、私に重力はかからず無駄に高性能な魔法だとわかる。


「さようなら。」

「ふざけーー」


グサッ…


(な!どういうこと!)


心臓を貫いた剣からマリアの声がする。


この女を真の意味で殺すために魂を剣に封印した。

普通の人間は魂は肉体に影響を受け老化し死んでいく、だがマリアに関しては肉体より魂の方が存在として強く魂が劣化しない、そして肉体も魂の影響で劣化しないのだ。


(おい!ここから出せ!)


厄介な事に、魂だけになった存在はこの世界で新たに肉体を得ることが出来るのだが、その時にこの女は記憶を所持したままで復活する。


「【メッセージ 魔王】聞こえるか?」

『おぉリサじゃないか、魂の捕縛は上手くいったのか?』

「えぇ、これからそっちに持って行こうと思うのだけど準備しておいてもらえる?」

『もちろんだ。

そいつの魂はかなり希少な素材、魔力水晶でも作って防衛に使うさ。』


私にもできない技術。

この世界で唯一魔王のみが魂を物として扱うことができ、魔力水晶にする際に記憶、意識、人格の全てを消す。


「【アンデットパーティー】

ゲートを頼む。」

『わかった。』


少し離れた所でスケルトンと戦い続けている騎士達に向けてアンデットを召喚し放つ。街はこれで壊滅するはずだ。


「お待たせいたしました。」

「ご苦労。」


魔王から派遣されたメイド共にゲートを潜った。


「待っていたぞ我が友リサ!」

「我々は友では無い、正しくは共犯者だろう?」

「リサは頑固だな、この会話も何度したかわからんが信じられるのは聖女だけか?」


本当に残念そうな顔で私へと問う。

魔王と協力し始めてから気づいたが、この魔王は横にいる存在に飢えている。悲しきボッチ魔王だ。


「どんなことを考えてるか知っとるんだぞ?

それと私がボッチならリサもボッチだ、仲良くしようじゃないか。」

「私にはエイラがある。」


近くにいるメイド達と執事は私の発言に何とも言えぬ顔をして、魔王は笑いを堪えていた。


「いるではなく、あるなのか!

本当にリサは面白いな!」

「どこがだ?」

「ふっ、その言葉は人に向けていう言葉では無い、自分の所有物ならありえるがな。」


意味がわからん。


「そんな事よりさっさと終わらせよう。」

「ククッ、そうだったな。早速見せてくれ。」


喚いていて五月蝿い剣を取り出し魔王へ渡す。


(何よここ!)


「威勢のいい魂だな。

それにしても、これが我等が苦戦させられた人間の貴族とは思わなかった。人間の魂というより神達の眷属である天使や悪魔に近いな。」


(悪魔ー?

そんな穢らわしい存在と同じにしないでちょうだい!)


悪魔、そういえば天使は戦った事あるが悪魔とは無かったな。


「悪魔はそこまで強く無いぞ。」


私には心を読む系の魔法に対して強い耐性、対策魔道具を所持しているのに魔王は度々私の思考を読む。

技術のなせる技なのか、それともいろんな対策をすり抜けるほどの魔法なのかはわからない。


「そうなのか?」

「あぁ、この世界は善側が有利で悪魔は全力を出せないからな。

さて、私はコレを使って実験してくる。」

「逃すなよ。」

「もちろんだ。」


この魔王は1回だけ逃した事があるからな。


「そうだ最後に一つ、『天空の主』は我等で仕留めよう、エイラの様子でも見てくればどうだ?

私のあげた魔道具があれば神は直接関与できんから、会いにいくぐらいなら問題ないはずだ。」

「気が向いたらな。

だが奴を片付けてくれるのは感謝する。」


エイラ…

だめだな、一度受けた精神攻撃のせいで気持ちが落ちやすい。


「お食事の用意はいかがなさいますか?」

「あー、リサ食べていくか?」

「いらん。」


封印剣は魔王のアイテムBOXの中、出ることは無いが早めに自我だけでも抜き取っておいてほしい。


「気持ちが落ちた時は食事だ。

私とリサ、2人分を頼む。」

「かしこまりました。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る