第20話 山賊の王
「【メテオ】!」
目の前で閉まりかけていた門を魔法で吹き飛ばした。私の魔法は門だけでなく街の3分の1程を吹き飛ばし、きっと大勢の死者が出ただろう。
「いったい何が起きやがった?!」
瓦礫の中から1人の男が出てきた、それは私が知る限りではここに居るはずが無い男だった。
スキンヘッドで体獣に獣の刺青が入っているガタイの良い男は山賊の王ギリア、私が警戒する存在の1人。
「あははは!
すっごい楽しそうね!」
そして金髪を腰まで伸ばした少女、
不老の貴族マリア・クロスレイ、今回の暗殺目標。
「楽しくねぇよチクショ〜、お前との取引なんか乗るんじゃなかったぜ。」
「そう言わないでよ〜!私は貴方のこと大好きよ?」
「それは玩具としてだろ?クソババア。」
まさかこの2人が組む新しいパターンが起こるとは思わなかった。
「それよりほら、あそこに立ってる汚い鎧女に楽しい楽しい拷問タイムよ。」
「お前は直ぐ壊すだろ、先に使わせろ。」
ギリアの方は私なら無傷とはいかなくとも勝てる確率は高い、だがマリアは単体でも苦戦する。
この2人を同時に相手するのはとても難しい。
唯一の救いは安全をとってカウンター型の魔道具を持ってきたことか。
「ハハハ!鎧を剥いでやるから覚悟しろよ!
【獣化】!」
「まぁ、とても獣臭いわ。」
熊のような体に鋭利な爪を持つ生き物に変化した。
そして、
「【ヘイスト】」
ボン!と空気が弾ける音がして私の立っていたところは小規模な爆発が起きた。
「ワオ!俺の一撃を受け止めるとはなかなかやるじゃねえか!」
「……」
振り被った拳をギリギリのところで盾を使い受け止める。
相変わらず力は強い、正面からは戦いたくない相手だが今回はトラップを仕掛ける余裕もないだろう。
「【焼肉になっちゃえー】!」
「「!」」
やはりマリアが手を出してきたな。
「おいババア!
俺ごと焼くつもりだったろ、ぶっ殺すぞ!」
「あらヤダ、ごめんなさい。
貴方ギリアだったのね、獣臭すぎて何処からか魔獣が入り込んだのかと思ってたわ。」
マリアの魔法は詠唱を完全に必要とせず想像するだけで発動できる、能力面ではエイラに最も近い魔法使いだろう。
魔力は底があるように偽造しているだけで、神からサポートをもらっており無限だ。
「ウフフ。
貴方の攻撃を受け止め、私の奇襲を避ける。久しぶりの強敵だわ!」
「バカ、大声を出してんのにのどこが奇襲だよ。」
無理矢理欠点を挙げるとしたら、どんな相手も上から目線で油断している事だけ。
「【アンデットエリア 骨】」
この2人相手には時間稼ぎになるか分からないが、大量に召喚したスケルトンで少しでも混乱させれる事を祈る。
それに少し離れた場所から大勢が走って向かって来ている、そいつらの足留めにする。
「【エレメンタルアーマー】」
「お、結構魔力多いじゃねぇかよ!」
厄介すぎる。
近接のギリア、遠距離のマリア、隙が全くなくて攻撃を喰らわないようにするので精一杯だ。
「【バインド】」
「こんなもん効くかぁ!」
目標はお前じゃない。
スケルトンを数体まとめて結んでマリアに向かって投げつける。
ギリアにはライトの魔法で目潰しをして動きを止め、マリアに向かって剣を投擲。
「汚いスケルトンを投げるのはやめてくださ、
キャ!」
やはり逸らされて、腕を撥ね飛ばしてもおかしくなかった投擲はドレスの一部を破るだけだった。
「おい!さっさと魔法撃ちやがれ!」
「……」
だが目的は達成した。
私と打ち合うギリアの言葉を無視して地面を見ながら小刻みに震えている。
「よくも…
よくもよくもよくも!私のドレスを破ってくれたわね?!このクソ女がぁ!絶対に許さない、腕と脚を切り落として奴隷にしてやる、精神が壊れても何度でも治して永遠に苦しめてやるわ。」
これでいい。
「【その場から動くな!】」
「あ?おい俺まで掛かってるぞ、ふざけんな!」
「五月蝿い!この汚い獣風情が!」
ドレスを傷つけられたマリアは冷静さを失い、私を始末するためギリアごと攻撃するようになる。
いつもなら使わない手だが今回に限っては有効な手段だ。
「【火の加護を】」
そしてマリアの好む火属性魔法に対する、耐性魔法を使う。
「…!
イッテェなぁ、テメェから殺してやろうかァァァァァ?!!」
おっと嬉しい誤算だな。
沸点が低い者同士だったのもあってか、私から目を離す事が増えてきた。
「【咆哮】!」
我慢の限界に達したギリアがマリアへ魔法を行使した。
その隙は見逃さない、背後から心臓を貫くように剣を刺す。
「あ?んだ、これ……」
「【ロック】」
魔法で剣の位置を固定、こうすれば驚異的な回復力も意味を為さない。止血にもなってしまうが心臓が止まるのは時間の問題だ。
「【ズタズタに引きちぎられなさい】!」
私の剣でも切れない荊が大量に襲いかかってくる。
「オラァ!」
動けないはずのギリアから拳が飛んでくる、これは避けられない。
最大限後ろに跳び、なんとか威力を消滅させようとしたが殆ど意味は無く、肋骨の数本が逝った。
「ゴボッ…」
血か…
「へへ、1発殴ってやったぜ……」
自分が死ぬときにわざわざ攻撃するとは。
前回までで倒す時はトラップに嵌めて動くこともできないようにしていたから油断していた。
だがギリアが倒れた時点でこの勝負は私の勝ちだ。
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