第15話 魔王から

「…大体5時間か。」


エイラを封印し気絶してから眼を覚ますまで5時間、魔力量はだいぶ回復したけど本調子じゃ無い。


「【リフォーム】」


封印場所の地下室の入り口だけを残して上の家を消し、地下への入り口を塞ぐように内側に霧が掛かったアーチを作る。

もちろんただのアーチでは無く、私の作ったダンジョンに繋がっており、そこを攻略しない限り封印場所に行く事は出来ない。


「【サモン ミスリルゴーレム】」


最後にミスリルゴーレムを5体召喚。

これで世界にサポートされたとしても、ゴーレム討伐に1年、ダンジョン攻略には最低でも5年は掛かる。


「よし、頑張るよエイラ。」


私がエイラと暮らすには障害がたくさんある。

人間に魔王にエルフなどの知能のある生物全般、世界、最後に神。


「【ゲート】」


まずは魔王からだ。


「人間だと?!」

「一体どうやって!」


私が転移した場所は魔王の住む城の門、人の形だが角が生えている門番が私に槍を向けてくる。


「あいかわらず不気味な場所だな。エイラのためとはいえあまり此処には居たくない。」

「人間如きが魔王様の住む地を愚弄するか!」

「いいね、その方が分かりやすい。」


槍を私に向かって突き立ててくる門番。

毎回思うのだが、門番なのだから少しぐらい強い奴を配置するべきだと思う。


「ここでs……は?」


私の間合いに入った瞬間、門番の首が落ちる。


「キャーーー!」


魔族の平民の叫び声が聞こえるが、無視して門を潜る。


「お待ちしておりましたよ侵入者。」

「……」


城の入口では大勢の騎士と特に強い1体の魔族、四天王と呼ばれる存在が私を待っていた。

そして私はついている、奴が目標の四天王だ。


「魔王と話をさせろ。」

「なぜ我らの王に話をしたいかお聞きしても?」


このように話が通じる。

他の四天王では会話より先に暴力が襲ってくる。私は無傷で倒す事ができるがこれからのことを考えれば、なるべく四天王は減らしたくは無い。


「ま、まさかそれは!」


そこでアイテムBOXから取り出したのは赤い球体、正体は1番性能の高い自爆型の魔道具。

此処で起動すれば魔王城は勿論、周辺の街も壊滅するだろう。


「貴様にはこれを見せればわかるよな?詳しい話は魔王に直接する。」

「皆の者下がれ!」


困惑する魔族達だが四天王の焦り具合を見て離れていく。


「私が直接案内する、だがその魔道具は回収させてもらう。」

「構わないが契約してもらうぞ。」

「勿論だ。」


契約の内容は、

魔族は私の用事が終わり去るまで手を出せず、私は魔族領から出るまで危害を加える事は出来ない。


「本来ならば魔王様にしかできない契約、何故お前と私が種族の契約をできるんだ?」

「さぁ?」


この四天王に対して情報は命、調子に乗っては足元を掬われる。


「私を通して魔王様には事情が伝わっている、失礼の無いように。」


この瞬間は緊張する。


「貴様が我と話したいと言う人間か。」

「えぇ、そうですよ。」


目の前の魔王は威厳のある老人のような姿をしている、だがその姿は偽りで


「その幻影魔法を解いてもらいたい、どうせ見破られているんだから問題はないと思うが。」

「…よかろう。」


本来の姿はエイラに似ている少女だ。

髪色だったり瞳の色だったりと違いは勿論ある、そして本人曰く聖女であり魔王であると言う。


「人間が私の姿を見れば驚くと思っていたのだが…」

「私は見慣れているし、貴方の正体も知っている。

驚く方が難しい。」

「それもそうか、さて要件を聞こうか。」


声からは何も感じる事は出来ないが、混乱して強がっているのがなんとなくわかる。


「私の要求は3つ、

1つ、聖女エイラの身柄

2つ、とある島の占有許可

3つ、人類の壊滅。」

「な…!少しまて。」


取り繕うこともできなくなったか、まぁ魔王も最近生まれたばかりだし仕方がないだろう。


「なぜ、なぜ人類である貴様はそれを願う、何が目的だ。

我々にメリットを表示するのと、理由を教えてもらえないのなら断るしか無い。」

「その理由を見せよう。」


私が魔法を使うことを察して魔王が抵抗するために魔力を高めるが、内容が記憶の共有だと気づき抵抗する事なく魔法を受け入れた。


「くくく、アハハハハハ!!」


笑い始めた。

この展開は何度見ても変わらない。


「貴様いやリサ、お前は本当に面白い!

まさか自らの欲のために人類を滅ぼし、この世界の神さえも殺そうと考えるとは!」


上機嫌なのか、それとも私の計画の大きさに驚き混乱しているのか、わからないが楽しそうに話し続ける。


「これが人?違う違う、これは人間という名を持つ新たな魔物と言えるだろう。

擬似的な不死の存在、死を繰り返して壊れた存在!」


やはり魔王は理解したみたいだ。

見せるとは言ったが全てを見せたわけでは無い、情報をある程度は制限していた。だが理由を説明するには、私が歩んできた道を少し見せなくてはいけなかった。


「しかも1人の為に数え切れないほど死んで、同じ人生を数え切れないほど歩んでいるとは!

我らの神がこの世界の人間が狂っていると言った理由がわかるぞ、アハハハハハ!!」


一通り笑ったあと、魔王は私に近づき言う。


「我ら魔族は協力しよう。

そしてリサの全ての希望を叶えよう、まずはこれだろう?」


魔王は魔道具をひとつ取り出して私に渡してくる、これで交渉は完全に成立した。

早速島を攻略しに行かねば。




「協力を期待しているぞ。

1000回目のリサ。」

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