第6話 広いお風呂

ベットが程よく硬くて、とても寝やすかった!

これだけゆっくり眠ったのは久しぶり、最近は勉強した後に夜遅くまで祈りを捧げ、朝は早く起こされて祈りを捧げて勉強の毎日だった。


「むむ、どうすれば良いのでしょうか。」


私はこの部屋から出てもいいのか、それとも迎えに来てくれるのを待つべきか迷う。


窓から入る光を見るにしっかり朝になってるけど、扉に耳をつけて探ってみたけどリサの気配は感じなかった。


「少し開けて確認する。

その後すぐに閉めれば怒られない、はずです。」


ギイィィ…


想像の10倍は軋んだ。

静かにしないといけない時に限って、床とか扉って軋んじゃう。


「リサさんは居るkーー」

「……」


部屋の前に普通に立ってました。

真顔でジーッと見つめてくるの怖いのですが…


「おはよう、ございます…」

「あぁ、おはよう。

朝食ができている、下に行くぞ。」


怒ってない?


「早く来い。」

「は、はい!」


うん、怒ってはなさそう。


一階に降りると、食欲をそそる匂いがした。

ハムと目玉焼き、この世界で初めてみた味噌汁、そして白米がテーブルの上に用意されていた。


懐かしい〜! 


「いただきます。」


めっちゃ美味しい。

昨日のケチャップと同じで味噌もこの世界には無かった。


「…美味いか?」

「はい!とても美味しいです!」


やっぱりリサさんは転生者だと思う。

ケチャップだけならともかく、味噌まで作るのは偶然では無理だ。私も詳しく知らないけど発酵とか難しかったはず。


「1つだけ、聞いても良いですか?」

「今は食事中だ。静かにしろ。」

「……」モグモグ


確かに今は食事中、話すのはマナー違反。


「温かい…」


懐かしすぎて涙が出てきた。

リサさんは泣いている私に気づいている、だけどジッと見つめるだけで何も聞いてこない。


「あっ…ご馳走様でした…」


食べ終わってしまった…

次にまた食べる機会があるかわからないし、もっと味わってゆっくり食べるべきだったな。


「また作ってやる、だからそんな残念そうな顔をするな。」


結構落ち込んでたみたい。


「ありがとうございます♪」


できたら味噌の作り方を教えて欲しい。

なんて考えながらリサさんを見つめる。なんか既視感があるな。


「ご馳走様。」

「美味しかったですか?!」

「…なぜ貴方がそれを聞くのか分かりませんが、自分で美味しいと思うから作ったんです。」

「それは良かったです!」

「……」


私もなんで聞いたか分かりません。

本当は美味しかった、と伝える筈だったのに言葉が変換された。


「手伝います!」

「いい、座っていろ。」


片付けを手伝おうと立ち上がったら、命令までされて座らされた。


「今から風呂に入る。

私は夜忙しいからな、結構早いが文句はあるか?」

「ありません、それにお風呂に入れるなら何時でも大丈夫です!」

「そうか。」


そうして連れて行かれた場所は地下室。

階段降りて直ぐの扉の先にお風呂場があった。奥に少し汚い扉がある事が気になったけど、聞けるような雰囲気でも無い。


「脱いだ服はそこの籠に入れておけ。」

「はい。」


日本の銭湯みたいなシステムと作りだ。


「……」

「うっ…」


ガン見はやめて欲しい。

女同士だし身の危険とかは特に感じてないけど、無表情で見つめられるのはちょっと…


「な、なんでしょう?」

「恥ずかしい、怖いとは思わないのか?」

「まぁ同じ女性ですし、それに悪い人ではないでsーー」


ガン!


私の言葉にイラついたのかリサさんは思いっきり壁を殴った。

無表情が変わり、その様子からは怒りを感じた。


「その甘えは捨てろ。

なぜ疑わない、なぜ人を信じる、自分以外は敵だと思え!」

「…で、ですがーー」

「女同士だからなんだ?傷つけられたり襲われる心配はないと?だとすれば大馬鹿だ、人を簡単に信じるから裏切られる!

何度言えば理解してくれるのだ!」


痛い、それは体じゃ無くて心が。

私の事を考えて怒っている。心の底から私を考え、心配しての言葉だと理解できた。


「すまない、先に入っている…」

「はい…」


私がどうすれば良いか分からずに呆然としていると、落ち着いたリサさんは少し落ち込んだ様子を見せながら先に入って行った。


「何度、言えば…?」


この言葉は不思議だ。

今回言われた事について、それっぽい事は最初に言われたけど何度も繰り返し言われた記憶は無い。


聞き間違いか、気のせいか。

どちらにせよ私にはわからないし、聞く事でもない。


「お待たせしました。」

「来たか、座れ。」


中はめちゃめちゃ広かった。


「髪を洗うぞ、目を閉じていろ。」

「自分で出来ま、キャー目がぁぁ!」

「だから目を閉じろと言っただろう。」


私が椅子に座ると、リサさんは慣れた手つきで私の髪を洗い始めた。


「目がヒリヒリします…」

「痛いなら魔力を貸してやるから回復魔法を使うといい。」

「【ヒーr、ゴボッ!」


泡が喉に!


「…少し我慢してろ、直ぐに流す。」


はぁはぁ、リサさんが泡を流してくれて助かった。


「ありが、とうございます。」

「お礼より前に回復魔法をかけておけ。」

「【ヒール】」


本当に苦しかった、リサさん怒ってるかな?

聖女になる前はこんなドジしなかったんだけど、優先順位が変わったせいで怪我する事が増えて、周りの人達に心配させちゃうんだ。


「本当にありがーーえ?」


リサさんは体中傷跡まみれだった。

剣の切り傷、獣の噛傷、数えきれないほど。


「あの、それは…」

「騎士なら普通だ。」


沢山の傷跡は普通なのか?


「私なら、治せるかも…」

「結構だ。それより体を洗うぞ。」


2、3回治すか聞いたけど全て断られた。

理由も教えてくれなかったのが悲しい。リサさんが触れられたく無い話題の可能性もあるし、何度も繰り返し聞くことは辞めた。


「貴方の肌は、綺麗なままで…」


リサさんは私の肩を撫でながらそう言った。

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