軟禁される聖女
第4話 女騎士
「…あ。」
目が覚めた時、私は寝やすい硬さのベットで横になってた。
凄く寝やすい。
この世界の高級なベットは柔らかすぎて、私の場合だと逆に体が痛くなる。
(二度寝しそu、いやダメだ!)
危なかった。今は二度寝なんてしてる場合じゃ無い。
「あれ…?」
この部屋、私の今世の家に凄く似てる。
家具の配置も、色も、そっくり。
ジャラ…
「ふぇ?」
首輪に鎖がついて柱に固定されてるのに加えて、両足首には鉄球が繋がってる。
絶対逃げれないように物理的、魔法対策も万全。
詰んだ…?
「起きたか?」
「ヒャア!」
この騎士、全然気配を感じなかったんだけど!
「これから聖女には此処で私と2人で暮らしてもらう、言っとくが拒否権は無い。」
騎士が首輪に繋がる鎖を解いた。
「え…?」
「私は少し出る。
足についてる鉄球は少し重いが動けない程じゃない、家から出なければ自由に歩き回っていても良い。」
「わかり、ました…」
バタン
騎士は扉を出て外に行った。
最悪の状態からは抜け出したけど、あの騎士の目的だけは本当にわからない。
鎖は外してくれたけど首輪はついたまま、逃したくないなら鎖も付けたままにするべきだと思うし、外すくらいなら首輪ごとだと思う。
聖女の暴走が抑えられるから、私にとっては嬉しいけどね。
「歩いてみよう、かな?」
自由に歩いて良いって言ってたし、早く魔王討伐に行けー!って気持ちも今はあまり感じないから、暫くゆっくりしても良いんじゃないかな?
普通なら誘拐されてるのにこんな気持ちになるなんてあり得ないけど、ちょっと楽しくなってきた。
だって考えてみて、人目がある所だとずっと聖女にならないといけないけど、此処ならあの騎士の前でだけ聖女になればいい。
かなり気が楽じゃない?
魔王の事は気になるけど、どうせ時が来れば強制的に関わるんだし今ぐらい別に好きに過ごしていいよね。
「まずは外を見よっと!」
バサァ、とカーテンをおもいっきり開いたが、そこから見える景色は庭などではなく真っ黒な空間だった。
「???」
カーテンを開けたら部屋の中は明るくなったし、太陽の光が入ってきてるはずなのに外は真っ黒。
「意味わかんない…」
魔力があれば理解できたのかも。
綺麗な花が見たかった…
切り替えて家の中を探索する。
廊下に出ると部屋が4つある、扉には鍵が掛かってて開ける事はできない。
ならばと廊下を遮るように閉じられていた両開きの扉の先に行こうとして…
「ふっ!」
扉は開かなかった。
辿り着いた結論、そもそも部屋以外に過ごせそうな場所に行けない!
「自由に歩ける場所、無いじゃないですか…」
ん?口調が変わった。
という事は誰かに見られている。
「何をしている?」
聞こえたのは少し冷たい声。
「えっと…
その、自由に歩いて良いと言ってたので…」
「…そうだったな。」
ちょっとだけ怖かった。
騎士は鍵を開けて廊下を進んでいく、なんとなくだけど着いて来いって言ってる気がした。
「此処は2階だ、1階にキッチンと風呂がある。そこは自由に出歩いて良い。
だが、地下室と外には行ってはいけない。」
そう言ってから椅子に座り本を読み始めた。
「えっと、あの…」
「……」
「お名前とか、教えていただけませんか…?」
「……」
「あ、私はエイラです。」
「……」
話してくれない…!
欲を言えば私を攫った理由を教えて欲しいけど、名前ぐらい教えてくれても良いじゃん。怖いんだよぉ。
「うぅ…」
ほら涙出てきたじゃん。
「はぁ…」
呆れたように溜息されても、悲しいのは止められないよ…
ゴト…
「私はリサという。
元教皇直属の聖騎士だった。」
頭の鎧を脱ぎ出てきたのは、オレンジ色で短めの髪を持つとても美しい女性だった。
だけど眼は濁り、光がなかった…
「リサさん…?」
「そう、リサだ。
家名は捨てた、もう無い。」
家名を持っていたって事はリサさんは貴族だったのか。
「えっと、リサsーー」
「会話をするわけでは無い。泣いて鬱陶しかったから教えたのだ、静かに過ごしていろ。」
「はい…」
なにもやる事がないんだよ。
窓から見える景色は真っ黒な空間だし、部屋には本も無いし、埃一つないから掃除をする必要もない。
少しでも変化のあるリサさんの顔を見つめる事にする。
「「……」」
見ている事は気づいているはずだけど、私には一切目を向けずに本を読み続けている、私を居ないものとして扱っているのだろう。
本のタイトルは『ウロボロス』
確か、永遠とか、死と生とかそんな感じの象徴的な意味があったはず。
「立て、部屋に戻り、ベットで横になり待機しろ。」
「はい!
…え、え?!あの体が勝手に動いてるんですが!」
本から目を逸らさずに指示を出した。
その指示に疑問を持ち問おうと思ったが、体は勝手に動き指示に従った。
「君は私の奴隷となってる、主人の指示は絶対だ。」
「ど、奴隷ですか?」
「そうだ。」
もっと色々聞きたかったのに体が勝手に動いちゃって、階段を登り始めちゃった。
「結局、奴隷になるのは変わらなかったんだな…」
私の奴隷の証はきっと首輪。
刺青とかの場合もあるけど、此処に連れてこられた時と服は変わってなかったから多分刺青じゃないとは思う。
消す事が難しい刺青じゃない事を喜ぶべきか、奴隷にされた事を悲しむべきか…
どちらにせよ私の状況は悪いままだ。
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