第4話
なんとか。部屋に帰ってきた。
靴を脱いで。
よろけながら廊下を進み。
リビングに倒れ込む。ベッドまで進む力は、残っていなかった。
おやすみ。
夢の中へ。
彼のもとへ。
「うそ」
目の前に、いる。彼。
血だらけだった。
「声」
「え」
声。
「俺の声が。聞こえるか」
「聴こえる。聞こえるよ」
とても久しぶりな気がする。あなたの声。でも。
「血が」
「仕事は、何をしてる」
「え?」
「仕事は。自分の。名前は。思い出せるか?」
仕事。忘却。
思い出。彼とのこと。忘却。
「思い、出せ、ない」
「感情が食われてる」
彼が、血を吐いた。
「ねぇ」
「そっちに。人ではないものが、染み出している」
「そんな」
分からないけど。わかる。感じないけど。忘却がある。
「わたし」
「起きろ。ようやく、声が。通じた。こっちへ」
わたしの名前を。
彼が。
呼んだ。
その声で。その名前で。
目が、醒めた。
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