第3話 そして未来へ

その日はテレビの取材だった。

「わぁっ、本当にバッテラ出せるんですね。他の物を出そうとしたこともあるんでしょうか?」

俺は答える。

「ええ、もちろんです。みかんやバナナやお米や小麦やサバ丸ごとや水や緑茶等を出そうとしました。しかし、出ませんでした」

「そうなんですね。最初、バッテラしか出せないと分かった時、どんなお気持ちでしたか?」

「普通に残念でしたよ」

「あなたには何か天からの使命があると思いますか?」

「何もないんじゃないですか」

「そうでしょうか。飢餓問題の解決があなたに託されたのでは?」

「この日本の貧困街で、炊き出しのない日にバッテラを配る行為を何度かしましたが、もう飽きられましたよ。もうバッテラを見るのも嫌だって。バッテラばかり食べるとやっぱり栄養が偏りますからね。栄養が足りない食事メニューばかりだと飽きるんでしょうね人間ってやつは。外国の貧困地域で配っても同じだと思いますよ。カロリーだけ与えればいいってものじゃないわけだ」

「じゃあ、あなたの能力の意味は?」

「この世界が仮想現実だっていう外の世界からのメッセージじゃないですか。それだけですよきっと」

「テレビの前の皆さんはどう思われるでしょうか? にわかに仮想現実説が真実味を帯びて来たこの世界。次はテレビの前の誰かに能力が与えられるかもしれません。それではスタジオにお返しします」

簡単な取材だった

俺はアナウンサーやスタッフにバッテラを配った。

そしてその日は何だか憂鬱になり、次の日まで俺は眠った。


5年後、俺はバッテラ工場に就職していた。

工場といっても、俺が何もない空中からバッテラを出して、それを出荷する作業をする人達がいる、それぐらいの工場だ。

俺の年収は700万円だ。

まぁ、それなりに幸せに暮らしているよ。

バッテラを出せる能力を使えるようになって良かった。

5年の間に、どうせこの世界は仮想現実だからムチャクチャやってやろうぜというテロリストグループもいくつか現れた。

そんなものの責任を俺は取りようがないし、関係ない。

俺以外にも能力者は現れたしな、たくあんを出せる能力、ポテトチップスコンソメ味を出せる能力、その他5人現れた、皆似たような能力だった。

ポテトチップスじゃなくて、じゃがいもを無限に出せる能力なら世界を変えられたかもな。

しかし、そんな存在がいなくても、この地球には全員分の食糧があると聞く。

結局、不幸な人間がいるから幸せな人間がいるのかもな。

お金がなくて食べ物が得られない人達が沢山いる、そんなぐらいの経済バランスだからマクドナルドやスターバックスや、穀物メジャーの何だっけ?

カーギルって言うところだっけ?

そんなところが大企業でいられるわけだ。

勉強だってそうだろう。

全員が東京大学へ行けるわけじゃない。

誰でも全員が入学卒業できる東京大学やハーバード大学には価値がない。

一生懸命頑張ってもそこに届かない人が沢山いるぐらいのバランスが高学歴者達を幸せへと運ぶのだ。

プロ野球や将棋だってそうだろう。

誰かが負けるから勝利者には金と名誉が集まり幸せになるのだ。


しかしだな、俺のバッテラ能力だの、誰かのポテトチップスコンソメ能力だの、この世界は幸せの実験場なのかもしれないな。

或いは、この世界は誰かの妄想とジョークで出来ているのかもな。



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バッテラ君 ピザー @pizza417

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