第2話 神聖な食べ物とは

ピンポーン。

誰か来た。Amazonからか?

ドアを開けに行く。

「はい」

「こんにちは。我々は大日本キリスト教会大阪支部の者です」

Amazonではなかった。

「キリスト教会?」

バッテラの噂を聞きつけたか。

「あなたが何もない空中から食べ物を出していたという噂を聞きました。というか、この隣のポール井上さんもそれを見ました。私は加藤マキノと申します。ポールさんは半分アメリカ人で、私は純日本人です」

「はい、確かに俺は。このように」

俺は空中からバッテラを出して見せた。

「ま、まぁっ! 本物ですね。あなたはキリスト教の聖書に載るべき新たな人物です。どうか、教会まで来てください」

そうして、俺は大日本キリスト教会本部へ連れて行かれた。

車での少し長い移動だった。

キリスト教徒らしき人々は、ついにこの時が来た、そんな顔をしているように見えた。

しかし最初は歓迎ムードだったが、俺が有名な安売りスーパーにある物と同じ(に見える)6貫1パック200円のバッテラを出せる能力しかないと分かると、人々の態度が変わって来た。

「イーロン・マスクが、で有名なあれでは?」

誰かが言った。

「そうですよね。この世は仮想現実説」

「おかしいよね。パンでもリンゴでもなくバッテラだけなんて」

確かにバターロールパンのような物やリンゴを出せるならば神聖な存在として扱われた気がする。6貫1パック200円バッテラには何故かその神聖さはない。工場で作られた130円ぐらいのカレーパンにもその神聖さはないだろうが。いや、いかにもカレーパンなビニール袋がなければいけるか。とにかく雰囲気って大事だ。

「そうだ、この世は仮想現実だったんだ」

この話は大日本キリスト教会からも漏れて、ニュースにもなった。

いつの間にか撮影されていた俺がバッテラを出す映像もニュースで使われた。

「この世は仮想現実」

新聞や週刊誌にそんな文字が並んだ。

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