バッテラ君
ピザー
第1話 超能力バッテラ
何となく急に思いついた。
それは夏の初めの頃だった。
お腹が空いていたんだ。
「出てこい! バッテラ。って、出るわけねーか。って、出てるよ、わっ!」
しかも6貫1パック、スーパーに置いてあるのとほぼ同じだ。
200円ぐらいのバッテラだろこれ??
とにかく、夏のその日、俺は超能力に目覚めた。
俺は誰かに相談することもなく、大阪の公園でバッテラを配る事にした。
俺の住んでいる大阪の市は都会だが、貧困街もあり、炊き出しが1週間に2回この公園でも行われていた。今日は炊き出しのない日だ。
俺はビニールシートを敷き、その上にバッテラのパックを重ねて行った。
「バッテラ配りま〜す。無料配布でーす。好きなだけ持って行ってくださーい」
俺は少しでかい声を出した。
俺はバッテラが空中からどこまで出せるか確認もしたかった。無限なのか?
思いの外すぐに人は集まって来た。
人々はバッテラを持って行く。
俺は何もない空中からバッテラを出してビニールシートの上に追加する。
「え!? 手品!?」
ざわざわ...
一部で驚きが見られた。
しかし、まだ手品だと思われているようだ。
超能力なんて簡単には信じられないか。
バッテラは次々に取られ、食べられて行く。
「すみません。食べた後のゴミ、これはどこに捨てたらいいですか?」
誰かに聞いて来られた。
「適当にその辺に捨てといてください。俺が片付けるので」
「あっ、はーい。ありがとうございます。美味しかったです」
安物のバッテラの味だけど、まあまあ美味いよな。
俺はペコリと頭を軽く下げた。
他の人達もその人の真似をして、適当にその辺に捨てて行く。
また驚きの声が聞こえた。
「ゴミが、消えた!!」
バッテラを入れていた容器が消えたのだ。
良かった。これでゴミ問題解決だ。
家で出した物も消えたから自信はあったが。
「預言者モーセ!!?」
誰かが言った。
モーセ、昔、海を割りエジプトの民をファラオの所から安全な所へ連れて行った人だったな確か。
モーセは完全栄養食マナを空中から出せたと
いう話だったな。
バッテラしか出せないことを家で確認していた俺は少し恥ずかしかった。
バッテラは大阪の誇るべきサバ寿司の仲間だけれど、伝説の完全栄養食マナと比べられたら恥ずかしいのも分かってもらえるだろう。
俺は3時間バッテラを配り続け、伝説を作った。
それから家に帰った。
夏なのでまだ少し明るかった。
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