第3話 後輩の話

 布団に入り、仰向けに横になると、最初の日に感じた木目調の天井を思い出していた。

――あの時は金縛りに遭ったんだな――

 というのを思い出していたが、あの時の金縛りに遭ったイメージや痛さは思い出すことはできるのだが、何を考えていたのかを思い出すことはできなかった。

――何も考えていなかったんじゃないか?

 後から考えて思い出せないことでも、何かを考えていたのであれば、考えていたということだけは思い出すことができる。しかし、この時は何かを考えていたという意識はまったくなく、そう思うと、

――やはり何も考えていなかったんだ――

 としか思えなかった。

 そう思うと、またしても睡魔が襲ってきた。この睡魔は金縛りに遭った時に感じた睡魔と同じだった。あmるで夢の中に落ち込んでいくのを感じているような睡魔だった。

――あの時の夢を思い出せるのだろうか?

 ということを思いながら、純也は眠りに就いたのだった。

 夢の中では、温泉宿の通路を歩いていた。すると、目の前を一組の男女が通り過ぎていった。その先には露天風呂がある。まさしく、夢が見せるデジャブだった。

 デジャブというのは、前に見たことのあるような景色を見たように感じることであるが、感じたその時に、いつどこで見たものなのか、さっぱり分からないものである。しかし、温泉宿で見た光景は記憶にはっきりと残っていて、いつどこで見たものなのか分からないものだというわけではない。

 それなのに、どうしてこの意識をデジャブと表現するのか、自分でも分からなかった。しかし、この感覚はデジャブ以外の何者でもないということを、もう一人の純也は教えてくれているようだ。

 純也は、その日、久しぶりに通勤電車に乗った。一週間ぶりくらいだったにも関わらず、昨日も同じ電車に乗ったような気がするのは、リフレッシュと仕事がまったく違う次元であることを無意識にも意識している証拠なのかも知れない。

 いつもの時間、いつもの電車、そしていつもの車両のいつもの立ち位置。今まで変わることのなかった平凡な生活。慌しさや喧騒とした雰囲気なのにも関わらず、どこか安心したように思うのも、習慣というものの恐ろしさを物語っているようで気持ち悪くもあった。

 満員というには中途半端な車内も相変わらずで、自分の立ち位置を決めることができるのに、どうにも不満だった。

 それは、誰もが同じ場所をキープしていて、自分の立ち位置というものを自分が最初から決めたわけではないということだ。

――空いているスペースに入り込んだだけ――

 という感覚で、毎日同じ光景。安心できるという反面、どこか物足りなさのようなものがあった。

――僕はこのままずっとこの中での立ち位置をキープしたまま、歳月だけが勝手に過ぎていくことになるんだ――

 電車の中で変化があるわけではない。

――そうだ、変化があるとすれば、この間立ち眩みを起こした女の子――

 一瞬楽しめるような予感があったが、あくまでも妄想である。妄想が悪いことだとは思わないが、続けば続くほど抜けることができなくなりそうで、それが一番怖かった。

 そんなことを考えていると、なぜかいつの間にか時間だけが過ぎていく。前を見ながら歩いている時、気がつけば足元しか見ていない時がある。そんな時は何か考え事をしているわけではなく、何かを考えているような気がしていながら、何も考えていない時だったのだ。

「大丈夫ですか?」

 すぐそばで男性の声が聞こえた。

「ええ、大丈夫です」

 という女性の声が聞こえたので、振り返ってみたが、気分を悪くしたような女性も、それを気遣う男性の姿も見ることができなかった。

――どういうことだ?

 この間、自分が助けた女の子に声が似ているような気がしたが、その姿を認めることはできなかった。

――幻聴だったんだろうか?

 声が聞こえたと思って振り向いた時、そこには見知った姿は見られなかった。心の奥では、

――そんなはずはない――

 と思っていた。

 声の主は、女性はその時の女性であり、もう一人の男性の声には聞き覚えがなかった。それなのに、純也はその男性を、

――あれは僕だったんだ――

 としてしか思えない。

 それは頭の中が減算法でできていたからで、まず百パーセントの割合で、男性の声を自分だと感じた。そんなことはありえるはずはないので、何とかゼロに近づけようとして、いろいろな言い訳を考える。最初に考えたのは、当然のことながら、

――同じ時間に、同じ次元で、同じ人間が存在できるはずはない――

 という考えだった。

 この考えのおかげで、かなりゼロに近づいた。

 その次に考えたのが、

――女性の声は確かに彼女の声だったが、男性の声は聞き覚えのない声ではないか――

 ということだった。

 しかし、これは時間が経つにつれて、信憑性は薄れてくるものだった。

 あれは、中学生の頃だっただろうか。学校で学校内の弁論大会というものがあり、本当は出たくなかった純也だったが、まわりから押し付けられるように立候補させられ、あれよあれよという間に、自分がクラス代表で出る羽目になってしまった。

 自分でテーマを考え、原稿を書き、人のいないところで密かに練習をしていた。練習をするうちに、それなりに形になってきたのが分かると、自分の中で自信めいたものが生まれてきた。

――僕ってひょっとすると才能があるんじゃないか?

 すっかりうぬぼれてしまった純也だったが、純也が楽しいと思ったのは、才能を感じたからではなく、何もかもを一人で考えて一人で作って、密かに練習することだった。

 モノつくりの素晴らしさを、その時に教えられた気がした。次第に有頂天になっていき、いよいよ本番の日が近づいてくる。

 胸を躍らせながら望んだ本番では、自分としては、緊張することもなくできた気がしていた。観客席の反応は何もなかった。ざわざわした感じのなかったことが、緊張を呼ばずにすんだのだと思っていた。

 自分の出番が終わってから聞こえた観客の拍手は、すべて自分に向けられたものであり、自分がステージの中心にいるという自覚が初めて生まれた。

 ステージの上では真っ暗な観客席はまったく見えない。自分にはスポットライトが当たっているのだから、眩しくて客の顔など見えるはずもなかった。そのことをステージに上って初めて知ったのだ。

――ステージの上の人から観客席が見えるはずもないのに、アイドルなどは、よくコンサートでファンの心を掴むことができるな――

 と思った。

 何も見えない状態で、想像だけで自分の公演を行う。弁論大会など、一人の持ち時間は数分なのでそんなにたいしたことはないのだろうが、アイドルやアーチストなどは、よく長時間耐えられると思った。

 それもほとんど毎日である。これも慣れなのであろうか?

 自分の出番が終わり、後は緊張もほぐれたところで、他の人の演目を気にすることもなく時間をやり過ごし、いよいよ発表を待った。

 自分としては、上出来だった。優勝はできないまでも、三位までには入るだろうと思っていた。出場人数は二十人とちょっと、それくらい期待してもバチは当たらないと思っていた。

 しかし、蓋を開けてみれば、散々なものだった。結果は、後ろから二番目、ビリにならなくてよかったという程度の結果だった。

――そんなバカな――

 その時の憔悴は結構大きなものだった。

 生まれて初めて自分に自信も持つことができたはずの弁論大会。結果としては、出なければいいくらいのもので、悔しさというよりも、情けなさが強かった。

――何がそんなに情けないんだろう?

 すぐには理解できなかったが、有頂天になっていた自分が恥ずかしいという思いがその時は一番強かったように思う。

 その次に感じたのは、

――一体何が悪かったんだろう?

 という結果に対して、どんな評価がなされたのか、気になってしまった。

 自分の思い込みであることは分かっている。思い込みは仕方のないことだが、今回はしょうがないとしても、同じ過ちを二度と繰り返したくはない。その思いから、何が、どうしてまずかったのか、その理由を知りたいと思うのは、当然のことであろう。

 ちょうど、放送部に同じ小学校から来たやつがいた。彼は誰にでも優しいところがあり、人から頼まれると嫌とはいえないという性格だった。

――彼に聞いてみよう――

 と思い、昼休みにさりげなく聞いてみた。

「この間の弁論大会の録音はしてあるのかい?」

「ああ、してあるよ。編集もこの間すんだところだ」

 と言われたので、ちょうどいいと思い、

「よかったら、僕のところを聞かせてくれないか?」

 と切り出した。

 友達は訝しそうな表情になるかと思ったが、別に表情を変えることもなく、

「ああ、いいよ」

 と二つ返事でOKしてくれた。

 早速、その日の放課後、授業が終わってすぐに放送室に案内してくれた。スタジオの奥には、機械がたくさん置いてある部屋があり、そこでいろいろ編集を施したりしているというのだ。

「じゃあ、今から再生してみるよ」

 と言って、ちょうど、純也のところを最初から再生してくれた。

 それを聞いた純也は、金縛りに遭ったかのように固まってしまった。

「えっ、これが僕?」

 自分では声にならない声を発したつもりだったが、本当に声が出ていたようだ。それを聞いた友達は、

「ああ、そうだよ。どこかおかしいかい?」

 と聞かれて、またビックリだった。

「い、いや、そんなことはないんだけど、でも、これが自分の声だなんて、俄かには信じられない。自分の声はもう少し低い声で、いわゆるハスキーな声ではないかと思っていたんだ」

 というと、

「いや、そんなことはないよ。これが君の生の声さ」

「そうなんだ」

 録音を聞いていると、喋り方にどこかの訛りが入っているように感じた。喋っている時に訛っているなんて感じたことがなかったので、

「こんなに訛りのある喋り方を、僕は普段からしているのかな?」

「そんなことはないよ」

 という答えが返ってくるのを当然のように期待していたが、実際には期待に沿う答えではなく、

「ああ、そうだよ」

 と言われてしまった。

 そこにも驚愕が走った。

――こんなにも、声のトーンが違って、さらには、感じたことのないどこのものとも分からない訛りで喋っているなど、想像もしていなかった――

 と感じた。

 それから、しばらくして、もう一度インタビューに答えることがあった。街を一人で歩いていた時、テレビ局のインタビューを受けたのだ。ちょうどその時は高校生で、予備校の帰りだったように思う。

「ほんの少しでいいので、ご協力願えますか?」

 と言われたので、

「はい」

 と答えた。

 インタビューの内容は、本当に些細なことで、時間的にも一瞬だった。しかし、スポットライトが自分に当たり、少ない人ではあったが、通行人のほとんどが、歩きながらでも純也に注目していたのである。

「ありがとうございました。放送日はここに書いていますので、よかったら、ご覧ください」

 と言って、一枚の紙を渡された。

 インタビューの内容がアンケートのようなものだったので、ピンとは来ていたが、番組はゴールデンタイムのクイズ番組だった。

――どっちの意見が多いかというようなそんなインタビューだったんだろうな――

 なるほど、それであれば、インタビューが一瞬であったのも説明がつく。放送日は一週間後の夜七時からで、一応、ビデオ録画しておくことにした。

 ちょうど、その時間、家にいることができたので、自分の部屋でその番組を見ていた。本当に一瞬だったが、純也がインタビューを受けている。あまり気にして見ていなければ、自分を知っている人が見ていたとしても、これが純也であったということを分からずにやり過ごしてしまうほどだった。

 実際に、出演したのが知っている人で、純也が視聴者だとすると、事前にテレビに出ているという話を聞いていないと、きっと見過ごすに違いないと思えた。それほど純也は、テレビを漠然としてしか見ていなかったのだ。

 自分の出番を見ていると、

「やっぱり、声のトーンの違いに、訛りのある話し方には特徴を感じるな」

 と呟いた。

 せっかく録画はしたが、それから録画テープを見ることはなかった。しかし、消すには忍びないと思ったのか、その時のビデオテープはあだ保管してある。

――いまさら見ることなんかないはずなのに、何を後生大事に持っているんだろうか?

 と思っていた。

 純也は、三十歳になった今になって、電車の中で自分の声を聞いてしまったような気がして仕方がなかった。

 相手の女性が確かにあの時の女性だったとすれば、相手の男性の声が気になってしまう。その声の主が、聞き覚えのある訛りを喋っているのを聞くと、本当に他人事には思えない。

 同じ時間に同じ次元で同じ人間が存在できるはずもないのに、その声の主が中学の時の弁論大会での自分の声なのか、それとも高校時代のインタビューを受けた時の声なのか、想像していると、時間だけが悪戯に過ぎていったのだ。

 純也は、結局自分が降りる駅まで、その時の声の主を発見することはできなかった。声がしたのが、途中の駅に到着する寸前だったので、ちょうどその駅で降りたのかも知れない。満員とは言わないまでも、結構人の乗り降りが激しい駅だったので、人の波に呑まれてしまうと、確認することは容易ではない。

――きっと、途中で降りていってしまったんだな――

 と考えると、どこかホッとした気分になっている自分がいるのを感じていた。

 電車を降りてから会社までは、徒歩で十分ほど、ただ、それも信号に引っかからなければの話なので、決して近いとはいえないだろう。駅からの人の波は、途中までは感じることができるが、次第に人の数もまばらになっていって、最後にはまわりにほとんど歩いている人がいないほどになっていた。

 事務所は雑居ビルの二階にあった。エレベーターを使うまでもなく、非常階段と書かれた扉を開いて、そこから事務所へと向かい。二階の扉を開くと正面に、旅行雑誌部があった。

 本社ビルからは、結構離れている。そのおかげで、社会部の連中と顔を合わせることもないので、気は楽だが、最初はさすかに寂しさを感じた。

――やっぱり、左遷だったんだ――

 嫌でもそう思わせる人事であり、場所が離れていることをそれが証明していた。事務所も社会部のような戦場ではなく、慌しいことなど何一つない、気楽な部署だった。

 さすがに最初は自分の身を持て余していた。

「僕は何をすればいいんですか?」

 上司としても、何をさせればいいのか迷っていた。

 何しろ元は社会部。この部署からすれば、花形に見えるだろう。そう思うと、気を遣っているのが分かった。

 しかし、実際に彼らは社会部を花形だとは思っていなかった。

「あんな自由のない部署に行かなくてよかった」

 であったり、

「あそこに人権なんてあるのかしら?」

 とまで考えている女子社員もいるほどだった。

「樋渡君も、ここに来たのなら出世や人を蹴落とすようなことを考えなくてもよくなったんだから、自分ができることが何かをゆっくりでいいから探していけばいいよ。ここは君の思っているような左遷場所ではない。自由な発想が求められている風通しのいい職場だと私は自負しているよ」

 と、転属された時に、部長からそういわれた。

 最初は、

――何をそんな綺麗ごと――

 と思っていたが、次第にその心が分かってきた。やはり自由というのはいいものだ。

 その頃から樋渡は、

――自分は未来のことが分かるようになるような気がする――

 まるで禅問答のように思ったが、それは未来のことが分かるようになるという時点で、未来のことが分かっているのではないかと思えるからだ。だが、漠然とした頭の中で一番考えられることでふさわしい言葉といえば、この言葉になるのだった。

 樋渡はその日もパソコンを開いて、いろいろな情報を得ることから始めていた。営業に出て営業相手と話をするにも、あらかじめ最低限の情報がなければ始まらない。それは自分の仕事に限ったことではない。今の時代は新聞やニュースよりもネットの方が情報の量や検索の早さを考えれば、圧倒的に有利であることも分かっていた。

 この間、休暇を取って赴いた温泉宿のことは、会社に出社した時点で頭から消すようにしていた。思い出すことはなかったといえばウソになるが、思い出として思い出すことはなかった。一瞬頭をよぎるという程度で、そのことでせっかく仕事用に頭を切り替えたのに、休暇モードに頭の中が戻るということはなかった。

「これ、お土産」

 と言って、事務員の女の子に渡すと、

「うわぁ、ありがとうございます。楽しかったですか?」

 と大げさに喜んで見せる女の子をよそに、

「うん、リフレッシュはできたよ」

 と、あくまでもリフレッシュを強調した言い方をした。

 彼女の質問に対して正確に答えているわけではなかったが、彼女もそれ以上言及することはなかった。プライバシーにかかわりそうなことには踏み込まないという礼儀は、しっかりとわきまえていた。

 他の社員も、休暇について言及することはなかったが、夕方頃になって一人の後輩社員が面白いことを言いだした。

「樋渡さんがこの間リフレッシュで行った温泉なんですが、あの温泉のまわりには、結構昔話のような逸話が残っていたりするらしいんですが、知っていましたか?」

 純也は、送迎バスでの話を思い出していた。

「そういえば、送迎バスで送ってくれた宿の人から、羽衣伝説のような話を聞いたな」

「そうですか。実はその温泉から五キロほど離れたところに宗教団体の総本山があるらしいんですが、ご存じでしたか?」

「いや、そんな話は聞いてなかったな」

 もし、その話が本当だとすれば、宿の人の口からわざわざそんな話が出るとは思えなかった。宗教団体というと絶えず何かの問題から、世間を騒がせているイメージがある。特に二十年くらい前に世間を震撼させたテロ集団のような宗教団体を思い出す人も少なくはない。宗教団体の話を出した時点で客が訝しい気持ちになることは分かり切っているからだろう。

 実際に純也がその話を聞かされていたら、それ以降の気分はまったく違っていただろう。いや、今は旅行関係の仕事をしているとはいえ、元々はジャーナリストを志したものとして、宗教団体に興味を持ったかも知れない。

――いやいや、そんなことはないか――

 一旦は忘れた夢、それをいまさら思い出すこともないはずだ。

 今では人のウワサ話すら、

――なるべく気にしないようにしよう――

 と思っている。宗教団体のような胡散臭い話には、嫌悪以外の感情を抱くことはないはずだった。

 それを思うと、

――何を今さら――

 と、わざわざ自分にそんな話をしている後輩の意図が分からなかった。興味本位で仕入れた話題を自分だけで抱え込んでおく気はなく、気楽な気持ちで純也に話しているだけなのかも知れない。

 しかし、聞いてしまった以上、いくらいまさらだと思っていても気になってしまうのはジャーナリストへの思いが残っているせいなのか、それともただの興味本位なのか分からない。ただ、このまま聞き捨てておくことができなくなってしまっている自分に苛立ちを覚えていた。

「昔話と宗教団体と、どういう繋がりがあるというんだい?」

 これが後輩の言いたいことであることは明らかだった。純也が話に食いついてきたのが分かったところで後輩は唇をニヤッと歪め、

「僕もネットで発見しただけなのでハッキリしたことは分かっていないんですが、その宗教団体は、まわりの逸話のほとんどに自分たち宗教団体が過去からずっと影響しているのだと話しているんですよ」

 宗教団体であれば、それくらいのことがあっても別に不思議はないだろう。

「それで?」

 純也は後輩の言いたいことがいまいち分からなかった。

「昔話というのは、おとぎ話のように子供向けのものではなくて、その当時の支配者が自民を先導するためにでっち上げた話も多いということです」

「というのは、プロパガンダということかな?」

「ええ、そうです。だから、全国には似たような昔話が多く残っているでしょう? どこまでが信憑性のあるものかは分かりませんが、それも土地に根付いた民族性で少しずつ変えているのだとすれば、分からなくもないですよね」

「なるほど、今の世界のよりも、ひょっとすると地域ごとの密着もあったのかも知れないということだね」

「ええ、民族性にこそ違いはあれ、支配者とすれば、臣民を支配するという意味では共通しています。だから、支配階級の間では強力なコミュニケーションが図られていたのかも知れません。今ではそれを証明することはなかなかできないんですけどね」

「でも、理屈からいけば、それもありえるよね。田舎にいけばいくほど、中央集権の時代であっても、藩閥制度のように、地方自治に近い時代であっても、薄くなってくるはずだからね」

「ええ、あの宗教団体が今のように大きくなったのは、ある時期を境らしいんですが、それまでは、地味に表に出ることがなかったそうです。でも、一度一気に大きくなったんですが、その後、勢いに任せてさらに大きくするようなことはなかったようです。あくまでも地味に存在していて、だから、今も生き残っているんじゃないかっていう意見もあるようなんですよ」

 後輩は熱弁をふるっていた。

「君の情報はどこからなんだい?」

 後輩の熱気と眩しさに圧倒されそうになっていたが、一旦冷却の必要があると思った純也だった。

 純也が思ったよりも落ち着いていることで半分我に返った後輩は落ち着いた口調で、

「ネットに出ていたことなので、すべてに信憑性があるとは言い切れないんですが、こうやって話題に出せば、それなりに同じ意見でそのまま発想が豊かになりそうな感じであれば、そこには信憑性を見出してもいいような気がするんですよ」

「なるほど、確かに君のいう通りかも知れないな」

「樋渡さんが、この間行った温泉も、距離的にも宗教団体の影響を受けていて不思議がないように思えるんです。行った時はそんな先入観がなかったので無理もないと思いますが、今、俺の話を聞いて、何かピンとくるものがなかったのかって思いましてね」

――この男、一体何を知りたいというのだろう?

 純也は、後輩が純也からどんな情報を得たいと思っているのだろう。純也のどんな回答を期待しているというのだろう? 純也は後輩の顔を見ながら考えていたが、彼の考えていることは分かるはずもなかった。

 純也はそんな後輩に対して、まず表情でその答えを伝えた。

「そうですか。何もありませんか」

 表情で回答を察知した後輩は、少し落胆したように答えたが、その様子は本当に落胆しているとは思わなかった。最初から分かっていたという様子である。

 ということは、これが彼の最終目的ではないことは分かった。彼の目的は今すぐに出てくる答えを期待しているわけではなく、この時点では疑問を持たせることが目的だ。そしてこれから自分がやろうとしていることに純也も巻き込もうと思っているのかも知れない。純也とすれば、なるべくそんなことに巻き込まれたくはなかった。正直、

――いい迷惑――

 なのだ。

「今日は、これくらいにこの話は終わりにしましょうか?」

 後輩の方から、今日の話としては幕を引いてきた。

 これは純也にとってありがたいことだった。言い出したのは後輩の方なのだから、純也の方から幕を引いたとしても、別に問題はないはずなのに。純也には自分から幕を引きたいという思いはなかった。

――ん? 待てよ。こんな風に感じるということは、それだけ自分がすでにこの話に興味を持っているという証拠ではないか?

 そう思うと、後輩の作戦に引っかかってしまったことに気が付いた。その証拠にホッとしている純也の顔を見て、少しだけ「ドヤ顔」になっている後輩の顔が、目の前に鎮座しているからだった。

 次の日の朝、目覚めはあまりよくなかった。なぜなら、その日の夢を覚えていたからである。

――怖い夢だったんだな――

 目が覚めた瞬間、その夢が怖い夢だったということを意識した。そして目が覚めていくにしたがって、その夢の全貌が少しずつ明らかになっていくのだった。

 夢は過去に遡るように思い出された。しかし、最初に思い出したのは、夢から覚める瞬間ではなく、その少し前からだった。

――目を覚ますきっかけになるところからは、最後に思い出すに違いない――

 と感じた。

 目の前に一人の男の子がいた。彼は思い詰めたような顔をしていたが、それ以上に、吹っ切れた様子でもあった。すると、その向こうに一人の女性がいいた。その女性の顔は分からなかった。想像するしかなかったが、大学生の女の子という情報が頭をよぎった程度で、それ以上はハッキリとはしなかった。

 彼女は男の子を説得している。どうやら、男の子は家を出ていくようだった。

――なるほど、この二人は姉弟なんだ。弟が家を出ていこうとするのを姉が必死に止めているんだ――

 そんな状況が見て取れた。

 男の子が思い詰めているのは、姉への後ろ髪を引かれるような思いからだろう。しかし、それ以上に決意が固いのだろう。吹っ切れた様子は、それ以上のものだった。

 だからこそ、姉は必死に止めようとする。

――ここで踏ん張らないと、二度と弟は帰ってこない――

 という思いの表れに違いない。

 弟は姉を吹っ切って家を出ていく。その先は闇となっていて、男の子がどこに行ったのか分からなかった……。

 そして場面はまた変わった。

 男の子は学生服を着ていて、椅子に座っている姿が映し出された。どうやらそこは教室のようで、普通の高校の授業風景だった。

 男の子が先生から刺された。

「お前、これを答えてみろ」

 どうやら数学の授業のようで、男の子は言われた通り、前に出て、黒板に向かって回答していた。

 男の子はうろたえていた。

 後ろからの視線に怯えを感じていたのだ。

 後ろを向いていると余計に背中からのひそひそ声でも大きく聞こえる。ひそひそ声だからこそ、余計に聴き耳を立ててしまうのだ。

――皆、そんなことは百も承知でわざとひそひそ声で話しているんだ――

 男の子は分かっていた。

 先生の怒りの声が罵声となって飛んでくる。

「こんな問題も分からないのか。お前は本当にダメなやつだな」

 ひそひそ声が、失笑に変わる。先生の罵声は嘲笑いに変わる。

「もういい。他のやつに頼むさ」

 と言って、先生は男の子を座らせた。

――わざとだ――

 男の子の気持ちが聞こえてくるようだった。

――どうせ俺ができないことは分かっていて、皆でバカにしようとしているに違いないんだ――

 と思った。

 その時の男の子にはどうして自分がそんなに苛められるのか分からかった。

 まわりがいつの間にか苛めに回っていて、誰も助けてはくれない。本当なら少しずつ敵が増えていくのが普通なのだろうに、どうして自分だけがこんな目に合わなければいけないのか、まったく分からなかった。

――まるで村八分だ――

 苛めというのは、こうやって始まっていくんだろうが、こんなに一気に敵ができるというのは、聞いたことがない。夢を見ている純也も、苛められている本人よりも苛立っていた。少年が逆らうことができないのも分からなくはないが、苛立ちはまわりだけではなく、その男の子にも向けられている自分の心境に、いたたまれないような思いがしているのも事実だ。

――何だ、この思いは――

 純也は夢の中で、登場人物を通して自分に苛立ちを覚えたのだ。

 自分も苛めに遭っている同級生がクラスにいた。実際には先生や大人には分からないようにしていたので、表向きは目立たないようにやっていたことになるのだろう。

 苛めている方は、決まっているわけではなかった。確かに苛めが始まるきっかけというのは誰かにあったのだろうが、苛めの拡散は早かった。そのうちに誰が最初に苛め始めたのかということすら、別に問題ではなくなっていった。

 だいぶ前の苛めというと、苛めっこと、苛められっ子という構図ができあがっていて、それ以外の人は傍観者だった。しかし、純也が味わった苛めの世界というのは、そういう構図ではなく、苛められっ子以外は、皆苛めっ子だったのだ。

 もちろん、数少ない傍観者もいるにはいたが、彼らは放っておくと自分たちが苛められるようになることに気づいていなかった。昔の苛めというものを考えると、どうしてこういう構図になったのか、分からなくもなかった。

 一昔前の苛めが社会問題になった時、

「悪いのは苛めっ子だけではなく、傍観者も苛めをしていたのと同じだ」

 という大学の偉い先生たちが言い出してから、傍観者に対しても罪があるということが世間一般に知られるようになった。

 偉い先生たちや大人たちの狙いは、

「傍観者に罪の意識を植え付けて、それが苛めの抑止力になればいい」

 というものであったが、実際にはそんなに甘いものではなかった。

 子供の世界を大人の世界と一緒にして考えようとしたのがそもそもの間違いなのか、それとも一筋縄で片づけようという安易な考えがあったのか、その目論見は、目的とは少し違った方向に向けられたのだ。

 あくまでも、苛め問題に対して解決策のターゲットは、傍観者たちだった。

 傍観者というのは、数からすれば、苛めっ子の何倍もの人数なので、数の理屈からすれば、確かに、

「苛めの抑止に繋がる」

 という考えは、理に適った考えだったのかも知れない。

 しかし、一刀両断とは行かないのも世の中の常ではないだろうか。

 傍観者たちに集団意識というものが存在していれば、そこに数の理屈は存在したのかも知れないが、傍観者は皆孤独であった。

「自分さえ苛めの対象にならなければいいんだ」

 と皆が考えていたはずだ。

 そもそも傍観していたのは、

「苛めの対象になりたくない」

 という思いから来ることで、苛めの対象になるのは、傍観者の中で目立ってしまうと、対象が自分に移ってしまうからだ。

 いくら世間が、

「傍観者も苛めっ子と同じで罪なことだ」

 と言ったとしても、実際に手を下しているわけではないので、法で裁かれることもない。しかも、その他大勢が傍観者なのだから、傍観者一人一人を罪で裁くことなど不可能だ。

 それよりも、自分が目立ってしまって苛めの対象になることは、これほど危険なことはない。それならまだ、苛めっ子に転身してしまう方がいいだろう。そういう意味で、その後の傍観者は、傍観者としてそのまま苛めの体勢をやり過ごすか、自分が苛めっ子に転身するかのどちらかだった。苛めっ子に転身した人は、その後の人生に大きな汚点を残してしまい、その汚点がいずれ、進学や就職に直接影響してくることになるのを知らないまま、その場に流されることになるのだ。

――これなら、傍観者の方がよかった――

 苛めに対して、世間は罰則を強化した。それでも苛めはなくなることはなかった。それは傍観者という存在が苛めという体制をやめさせることのできないものとして、無言の圧力を与えていたのだった。

 傍観者をターゲットにしたのは完全な間違いで、それ以降の苛めの構図は、傍観者が苛めっ子になってくるという構図に発展していた。

 いくら苛めに対しての罰則を強化したとしても、苛めっ子が増え続けることで、今度は罰則の強化が社会問題になった。

「せっかくの人材を、苛めっ子だったというだけで埋もれさせるのはもったいない」

 という意見が企業が大学側から出て、結局、苛めに対しての罰則は元に戻された。

 だからと言って、一度変わってしまった体勢が元に戻ることはない。苛めという問題は、過去の悪しき政策によって、さらに悪化してしまっていた。下手をすると、

「苛め肯定説」

 などという考え方が生まれてきた。

 いわゆる「必要悪」として社会にその地位を確立してしまったのだ。

 純也の育った時代は、ちょうどそんな苛めの体勢の転換期に当たっていた。

 学校も社会も混乱していたが、誰もが、

「この混乱が一段落すると、苛め問題は一定の決着を示す」

 と、安易に考えていた。

 だが実際には、最悪の結果が待っていたわけだが、純也は自分も傍観者だったことで、最悪の道を世の中が歩んでいることは分かっていた。

 おそらく他の傍観者たちにも同じことは分かっていただろう。苛めっ子に転身した人も、本当は苛めっ子になんかなりたくなかったはずだ。

「世間なんて、しょせんこんなものだ」

 という諦めの境地を持って、苛めっ子に転身して行ったのではないかと純也は感じていた。

 世の中で、政府の対策がさらに悪化の一途をたどらせた問題もいくつかあった。その中に宗教団体に対しての問題もその一つだった。

 宗教団体が目立って悪どいことをするのは、数十年前のテロ事件が最後となった。それ以降、警察組織の公安がしっかりと宗教団体を見張っていて、国家としても、テロ防止法という法案を成立させ、宗教団体など、少しでも不穏な動きを見せれば、警察の国家権力で、捜査の幅が急速に拡大した。

 下手をすれば、令状なしに家宅捜査をしたり、軽犯罪であっても、宗教団体に関わっている人間であれば、逮捕令状なしに、逮捕勾留が許された。

 ただし、それは他の刑罰と同様、無制限というわけではない。あくまでも現行法の範囲内に限られていた。

 そんなこともあって、宗教団体は表立っての活動はできなくなった。ほとんどの宗教団体が水面下でしか動けなくなって、一時期、宗教団体の数が激減した時期もあったくらいだ。

「一定の成果を挙げた」

 ということで、警察も安心しきっていた。

 もちろん、公安はそんなに甘くはなかったが、それでも自分たちの成果に驕りがあったのも事実だろう。

 そんな時期を経過して、宗教団体は、一般市民の前から姿を消したほどになっていた。

 ただ、もちろん、世間一般的に認知されている昔からある宗派は、今まで通りだった。仏教、キリスト教などのメジャーな宗教は、市民と深いかかわりを持っていた。

 要するに摘発されて、警察や公安に目の敵にされたのはカルト宗教と呼ばれる組織だったのだ。

 カルト集団は、完全に地下に潜ってしまった。このまま何もなければ、カルト宗教も滅亡の危機にまっしぐらだったのかも知れないが、偶然というのは恐ろしいものと言えるのではないか。

――転んでもただでは起きない――

 同じ執念深さを持った連中が、潜った地下には潜んでいたのだ。

 最初に地下に潜っていた「先住者」は、

「俺たちもこのまま終わるわけにはいかない」

 と考えていた。

 地下に潜っていた「先住者」、それは弱小に近い暴力団関係の団体だったのだ。

 彼らは縄張り抗争に敗れて、このままいけば、滅亡を余儀なくされていただろう。それでも彼らには「執念深さ」というものがあった。

 最後まで諦めない気持ちというのは、いくら暴力団関係の団体と言っても、見上げたものがあった。ただ、彼らには力がなかった。彼らにとって今一番必要な力というのは、「金」だったのだ。

 宗教団体の地下に潜った連中は、あからさまな活動はできなかったが、暴力団関係のように、商売に関してはそれほどの規制はなかった。暴力団関係と違って宗教団体に対しては、

「地下に潜らせておけば、二度と表に出てくることはないだろう」

 という思いがあったのだ。

 だから、企業としての活動は、却って社会に貢献しているということで、大目に見られ、世間に受け入れられているほどだった。そうやってコツコツとお金を貯めて、いずれは復興に使おうと考えていたのだ。

 お金はあるが力や人脈に乏しい宗教団体と、力や先導力はあるが、お金に乏しい暴力団関係が出会ってしまった。

 お互いに利害関係は一致していた。

 しかも、長年地下に潜って活動してきたので、活動の準備段階においては、手抜かりはなかった。迅速に、そして隠密に行動するのは、まるで忍者のごとくだった。

 宗教団体と暴力団関係の団体がまさか地下で手を結んでいるなど想像もできない公安は、完全に裏をかかれてしまっていた。

 公安は、

「彼らは地下に潜らせておけば安心だ」

 とタカをくくっていた。

 宗教団体も、暴力団関係も、公安の範疇なのに、その両方をのさばらせる結果になるなど、想像もしていなかっただろう。

 警察組織の中で特別な団体である公安がそうなのである。世間一般の警察や、ましてや自分たちの立場しか考えていない官僚や政治家などに、必死に生き残りをかけようとしている団体の苦労が分かるはずもない。

 決して悪を容認できるわけではないが、警察や公安、官僚や政治家などに比べれば、その後の世の中がどうなっていくのか分かっている人には、何とも言えない複雑な気持ちだっただろう。

 分かっている人もいないわけではなかった。

 大学でいろいろな研究をしている先生の中には、この状況を分かっていて、憂いている人もいた。しかし、自分だけが何を言っても、警察や政府が納得するはずもない。何しろ、公安を信用しているのだからである。

 苛め問題が深刻化してきたのは、ちょうどこの頃だった。

 苛め問題が一昔前の政策の失敗から悪化してしまったことを、世間一般の人もようやく知ってきた頃だった。

 ということは、政府や警察はもっと前に分かっていたはずである。

 彼らは自分たちの保身しか考えていなかったので、世間に対してひた隠しにしていたのだ。まるで昭和の戦争を踏襲したような情報操作ではないか。

 時代は繰り返すというが、その後の闇市のようなものが、地下で進められていることに公安は気づいていなかった。やはり政府官僚を相手にしていることもあってか、政府高官をターゲットにしながら、自分たちが彼らに染まっているということを分かっていなかったのだ。

「ミイラ取りがミイラになる」

 ということわざがあるが、まさか自分が染まってはいけない相手に染まってしまうなど、想像もしていなかったに違いない。

 宗教団体と暴力団関係の団体とでは、趣旨も違えば、目的も違う。いくら地下で利害が一致したと言っても、活動には大きな差があった。しかし、それだけに、お互いに「不可侵条約」を結ぶことで、今まで相手を意識することで行動に制限があったが、その垣根はなくなり行動しやすくなった。これも利害の一致のおかげと言ってもいいだろう。

――公安や政府も気づかない。お互いの垣根もなくなった。お互いに弱い部分を克服できた。地下万々歳だ――

 こんな状況を世間一般の人も分からない。これほど、行動しやすいこともないというものだ。

 苛め問題が最悪になったことで、世の中には中途半端な人間が増えた。そんな人間を地下で暗躍する暴力団関係団体は待っていたのだ。彼らの存在は、暗躍するには好都合で、簡単に切り捨てても表に出ることはない。

 また、宗教団体の方も、地下で暗躍することで、表には健全な会社を演出し、世間の人を騙すなど、簡単なことだった。騙された人も、騙されたことに気づかぬまま、地下に潜らされてしまう。その頃にはしっかりと洗脳されているのだ。

 だが、彼らはあくまでも地下組織である。表には出てこない存在で、表に出るには時代が違っていた。いずれは表に出る野望を持っているのかも知れないが、今は地下で潜伏していることに、わだかまりを持っているわけではない。

 ただ、以前からあるメジャーな宗教団体にも変化が訪れていた。

 仏教にしても、キリスト教にしても、宗派がいろいろある。今、仏教関係の宗派の中で、さらに細分化しようとする動きがあった。

 これは、別に隠れて行われているわけではない。公安から睨まれているわけでもないし、世間的に「認知」されている宗教なだけに、少々のことは、社会問題にまで発展することはない。

「政党の中にも、宗教と関わっているところもあるくらいだからな」

 という意味で、国家公認と言ってもいい宗教団体も存在していた。

 後輩の話から夢を見たことで、いろいろな思いが頭をよぎっている。どこまで発想は頭を巡るのであろうか?

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