第3話
言われるがままに行きつけの靴屋へ。ここは靴下もセットで買える便利な靴屋だ。仕方なく自分の靴を履かせた。
「サンダルが欲しいですね」
「なんだそれ」
「こっちの話ですよ。イグリス」
サンダル。悪魔が使う呪術の道具なのか。はぐらかされると気にはなるがイグリスに聞く勇気はない。聞いて俺を好きだなんて言う頭がおかしい悪魔の言葉を理解できないだろう。
「早く入るぞ。靴を選んでさっさと帰ろう」
店に入ろうと扉を開けるた。中から女性の甲高い悲鳴。従業員の女性がカウンターの接客側の方を見て立っていられなかったのか、へなへなと床に座り込んでしまった。イグリスは従業員の女性に駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「あっあれ、しっ死んで、死んでる」
腹にナイフが突き刺さり仰向けに倒れている。周りは血溜まり。何故か。
「砂。なんの砂だ」
何かを粉砕したのか、細かい砂が少しだけ床に残っていた。まさか凶器。この従業員の女性が殺害した。誰か来るのを待って、さも今見つけたかのように悲鳴をあげて第一発見になった。可能性が極めて高い。
「騎士を呼んできます。ここを動かないで」
事件の調査をする騎士を呼ばなければ、従業員女性が逃げるかもしれないから行かせるわけにもいかなかった。外に出たらタイミングでレヴィがイグリスに言った。
「もしかして彼女が犯人だと思っています?」
「可能性はあるだろ」
「ないです。彼女のエプロン。真っ白でした。
それに彼女の髪は乱れていなかった。
もし突発的犯行なら服も髪も乱れていたはずです。彼女は綺麗だった乱れも何もなく。
貴方はわたし達が入ってきたタイミングで、わざと悲鳴をあげて第一発見者になった。考えましたね。そうなら彼女は劇団にでも長年入っていた演技派女優。アカデミー賞ものです」
「あかっ、アカデミー。何処かの学校の名前か。レヴィ。俺の心読んだのか」
「まさか。出来ますけどやりませんよ。
好きな人の心を読むなんて恥ずかしいこと。
顔に全部書いてありますよ」
わかりやすい顔をしていないはず、レヴィ。悪魔に言われると自信がない。俺も鍛錬が足りない。レヴィのアカデミーは分からないが、彼女の経歴を調べよう。可能性を潰すために。調べる前に騎士団に行かなくてはならないのが、イグリスには憂鬱だった。
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