〈閑話)魔王の苛立ち

ダエーワ「..............遅い」


魔王城の王座にて、イライラ気味にそう呟くダエーワ。


彼がイラついている理由はただ一つ。


いつまで経っても、魔王が戦うべき相手........勇者が出現しないからである。


ダエーワ「ベルビュートよ、何故..........勇者が現れない」


自らの側近である、ベルビュートに向け、そう尋ねるダエーワ。


ベルビュート「そうですね.....恐らく、勇者はこの世界のどこかにいるとは思います。ただ」

ダエーワ「..........ただ?」

ベルビュート「その勇者自身が、勇者としての力に目覚めていない可能性があると思います」

ダエーワ「...........」


ダエーワに対し、自身の考えを述べるベルビュート。


一方、それを聞いたダエーワはというと


ダエーワ「ならば...........徹底的に破壊して、勇者の力を引き出さねばならないな」


何かを思いついたように、そう呟くのだった。


ベルビュート「..........魔王様の仰せのままに」


ダエーワに向け、ベルビュートはそう言った後、暗闇の中に溶け込んだ...........かと思えば、いつの間にか、魔王城にある自室に移動していた。


エクロン「お疲れ様です。ベルビュート様」

ベルビュート「全く..........魔王という存在は、どうして勇者に固執するんだ?」


そう言うと、もたれかかるように、椅子に座るベルビュート。


実のところ、ベルビュートは勇者がどこにいるのかを知っていた。


しかし...........それを知っていながらも、ベルビュートはそのことを伝える気はなかった。


何故なら.....彼は、魔王ダエーワのことを内心嫌っていたからである。


ベルビュート「たかが、勇者が見つからないだけでイラつくとは...........」

エクロン「仕方がありませんよ。魔王ダエーワ様は、生まれてからまだ一ヶ月しか経っていませんから、そうなるのも無理はないかと」


ベルビュートに向け、そう言うのは、彼の忠実な部下にして、汚れ仕事などもこなす執事のエクロンである。


ベルビュート「まだ生まれて一ヶ月しか経たない、魔王の世話をしろと!!」


ベルビュートは、机を叩きながらそう言うと...........冷静さを取り戻したのか、エクロンが差し出した紅茶入りのコップを取ると、紅茶を一口飲むのだった。


ベルビュート「まぁ、勇者の件は置いておくとして...........はどうなっている」

エクロン「万事順調でございます」


エクロンの言葉を聞き、ベルビュートはニヤリと笑うと


ベルビュート「そうか.....それでいい」


そう言った後、再び紅茶を飲むのだった。


ベルビュート「このことは、魔王にはバレてはいないな?」

エクロン「はい、今のところは」

ベルビュート「ふむ.....では、例の件は引き続きお前に任せる」

エクロン「ハッ!!」


そう言った後、エクロンは部屋を後にすると...........ベルビュートは笑い始めた。


ベルビュート「見ていろ、魔王ダエーワよ。この世界の支配者が..........誰なのかを分からせてやる」

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