〈閑話〉とあるシェフとエルフの好物
彼の店..........【TATIBANA】は、三つ星レストランとして、世界に名を轟かせていた。
そんな彼には、とある趣味があった。
それは.....
淳「うん、美味い!!」
屋台グルメの食べ歩きである。
淳「この辛さ..........何かのスパイスを使っているのか?」
食べ歩きと言っても、侮るなかれ。
彼にとっての食べ歩きは、新しいレシピを作るための、ヒント探しであった。
そんな彼は、今現在..........木之下町にて食べ歩きをしていた。
淳「ふぅ、美味かった.......ん?」
ふと、淳の間に入って来たのは..............『エルフの好物』という看板が、デカデカと掲げられた、キッチンカーであった。
その周辺には、売り子がいたのだが........
淳「耳が.......長い?」
その売り子達の耳の長さに、淳は驚いていた。
淳「エルフみたいだな.......」
そう呟きつつ、そのキッチンカーに近づく淳。
そんな淳に対し、キッチンカーの主......田中雅彦は、元気よく挨拶をした。
田中「いらっしゃい!!ご注文は?」
淳「エルフの好物を一つくれ」
田中「毎度!!」
そう言うと、手際よくエルフの好物を作り、淳に手渡す雅彦。
そして、そのエルフの好物を手渡された淳はというと
淳「美味そう.......」
心の底から溢れ出た言葉を、そのまま呟いた後、一口食べるのだった。
その瞬間...........淳の目は見開き、驚いた表情になった。
淳「な、何だこのコロッケは!?う、美味すぎる!?」
それは、三つ星を獲得したレストランの主人である、淳でさえ、食べたことのないコロッケであった。
淳「こんなにもクリーミーな芋があるとは.......」
田中「だろ?この料理.....エルフの好物はな、アールヴ花?っていう野菜を使ってるんだよ」
淳「アールヴ.....花?」
アールヴ花という、聞き慣れない野菜に対し、思わずそう呟く淳。
田中「あぁ。見た目はローズマリーそっくりでな、葉っぱはハーブに、根はオカズに使える、万能野菜なんだよ」
淳「何.....だと」
万能野菜。
その言葉を聞いた淳は、料理人としての欲が溢れたのか、田中に対し、こう尋ねた。
淳「このアールヴ花という野菜は、木之下町の名物なのか!?」
田中「みたいな感じだな」
ハハハと笑いながら、そう言う田中。
淳「その.....この野菜の生産者のこととかは」
田中「生産者も何も............今のところ、アールヴ花を育てているのは、若葉くんだけなんだよな」
淳「若葉?」
田中「何ヶ月か前に、ウチの町に引っ越してきた移住者でな、アールヴ花の他にも、色んな野菜を育てているんだよ」
田中の言葉を聞き、ピクリと反応する淳。
淳「..........では、彼に頼めば、アールヴ花を分けてもらえることが出来るのか?」
田中「まぁ、そんなとこかな?」
その言葉を聞いた淳はニヤリと笑うと
淳「色々と教えてくれて、ありがとう」
そう言った後、何かしらのことを思いついたのか、ニヤリと笑いながら、その場を去るのだった。
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