六月

第十四草

五月が終わり、ジメジメと梅雨の季節で有名な、六月に入った。


木之下町に引っ越してきた、くるみさん一家は、あっという間にこの町に慣れた。


まぁ、松五郎さんのお孫さんだしね。


んで、くるみさんはカフェ・ふくろう、衛さんは在宅で働くようになり、悠一くんは、松五郎さんと遊ぶようになった。


最初は暗かった悠一くんだったけど、徐々に明るくなり、今では元気に遊び回っている。


悠一「若葉お兄ちゃん!!来たよ〜」

若葉「やぁ、こんにちは。今日も松五郎さんと遊んできたのかい?」

悠一「うん!!」


もちろん、僕の家にも悠一くんは遊びに来ることもしばしばある。


若葉「はい、ネコッコロ茶とオヤツだよだよ」

悠一「ありがとうございます!!」


そう言うと、冷えたネコッコロ茶を飲む悠一くん。


ジメジメとした暑さが原因なのか、いつもよりネコッコロ茶が美味しく感じた。


悠一「プハッ!!美味しい〜」

若葉「最近どう?楽しい?」

悠一「うん!!楽しいよ!!」


元気いっぱいに、そう言う悠一くん。


若葉「そっか〜」

悠一「..........でもね、最近変な夢を見るんだ」

若葉「........夢?」


僕がそう尋ねると、若葉くんはこう言った。


悠一「うん、夢」

若葉「それって、どんな夢なの?」

悠一「...........誰かと戦っている夢」

若葉「........そうなんだ」


夢の内容について、語る悠一くんの顔は、少し苦しげだった。


悠一「それでね..........黒い何かが、金色の何かにやられるところで、いつも目が覚めるんだ」

若葉「.................それ夢って、毎日見てるの?」


僕がそう言うと、コクリと頷く悠一くん。


若葉「このことを、お母さんには伝えたの?

悠一「..........どうせ信じないから話してない」


あ〜...........確かに、それもあるかもね。


若葉「でも、何だかアニメみたいな感じだね」

悠一「そうかな?」


現に、こういう展開はアニメで多いしね。


若葉「..........話してくれて、ありがとね」

悠一「.......うん」


悠一くんにも、親には話せない何かがあるのかもしれない。


だけど..........そのことを、僕に対して話してくれたことに、僕は、ほんのちょっぴり嬉しかった。


若葉「あ、どうせだったら..........一緒にクッキーでも焼かない?」

悠一「焼く焼く!!」


この後、クッキー作りを楽しみ、自分で作ったクッキーを土産に帰った、悠一くんなのだった。

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