第十草

田中「初めまして、田中タナカ雅彦マサヒコと言います。どうぞよろしくお願いします」


寺本さんから、町おこしをしないかと誘われてから、数日後。


僕は、田中さんと会っていた。


若葉「こちらこそ、よろしくお願いします」


田中さんに向けて、頭を下げる僕。


田中さんは、僕よりも年上で、40代ぐらいだそうな。


何でも、実家の肉屋を継ぐために脱サラしたとか。


田中「それにしても..........君のような若い人が、町おこしをしてくれるなんて..........頼もしい限りだよ」

若葉「あ、アハハハ.......」


そう言われると、なんか恥ずかしいな。


田中「それで、これが例のやつかい?」


皿の中に入っている、アールヴ花の根っこのマッシュポテトを見つめながら、そう言う田中さん。


若葉「はい。試しに食べてみますか?」

田中「あぁ、頼む」


田中さんの口に、このマッシュポテトが合えばいいな。


そう思いながら、田中さんの様子を見ていると


田中「う、美味い!!」


案の定、田中さんは美味しそうに食べていた。


田中「普通のジャガイモよりも、クリーミーかつ甘みがあって..........それに、この爽やかなローズマリーが、このマッシュポテトを更に美味しくしている!!」


..........ローズマリーじゃなくて、アールヴ花の葉っぱだけどね。


田中「若葉くん!!これはいける!!確実にいけるぞ!!」

若葉「本当ですか!?」

田中「あぁ!!」


肉屋の田中さんがそう言うってことは、やっぱり、アールヴ花の根っこは美味しいってことなのかな?


ま、何はともあれ、これでコロッケが作れるな。


こうして、僕と田中さんはコロッケを作ったのだが...........結論から言おう、美味しいは美味しかったけど、何というか..............肉の存在感が薄くなっていた。


若葉「..........ここまで肉の存在感がないコロッケは初めてです」

田中「うーむ..........これだと牛だけじゃなくて、鶏と豚も負けてしまうなぁ.................」

若葉「ですね..........」


どうすればいいのか、しばらく考えていると..........


田中「いや待てよ..........アレならいけるかもしれないぞ!!」


田中さんはそう言うと、どこかに行った..........かと思えば、大きな肉を持って来た。


若葉「田中さん、それってもしかして..........」

田中「猪の肉だ。これなら、このマッシュポテトに勝てるような気がしてな」

若葉「なるほど!!」


そもそも、アールヴ花は雑草。


だったら、自然の生き物と合わせるのもありってことか!!


若葉「試してみる価値はあるかもしれませんね」


そんなわけで、今度は猪の肉を使って、コロッケを作ったところ...........さっきよりも、肉の存在感が増した。


要は、成功ってやつである。


若葉「うん!!さっきよりも美味しいですね!!」

田中「思ったとおり、猪の肉とこの芋は合うな〜」


これも、田中さん様々だな。


そう思いながら、コロッケのおかわりをする僕なのだった。






☆☆☆

田中雅彦

木之下町のある肉屋の店主。

いわゆる、気前がいいオッチャン。

実は猟師で、たまに猟に出かけることがある。

彼の肉屋の一番人気は、コロッケである。

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