〈閑話〉一方、その頃

木之下町は、H県に存在する小さな田舎町である。


しかしながら、どこの田舎町でもあるように、この木之下町でも、人口減少や高齢化が大きな問題となっていた。


なので、木之下町の人々は、あの手この手で町おこしをしようとしたものの


松五郎「結局、中々上手くいかないんだよな」


全て空振りに終わってしまうという、残念な結果で終わってしまった。


松五郎「はぁ.......やっぱり、この町の寿命も近いのかねぇ」


町唯一のカフェである、カフェ・ふくろうにて、そう呟くのは.................木之下町生まれ、木之下町育ちの農家の、寺本テラモト松五郎マツゴロウ


彼は、この町の町おこし委員会のメンバーであった。


松五郎「マスター、お前もそう思うだろう?」


松五郎はカフェ・ふくろうのマスター.......もとい、森高モリタカワタルにそう尋ねると


マスター「さぁ?それは私も分かりません」


マスターは、ニコリと笑った後、そう言った。


松五郎「ところで.............この浅漬けとコーヒー、美味すぎないか?」

マスター「あぁ、これのことですか?これは若葉くんから貰ったんですよ」

松五郎「若葉.................あぁ、最近、村上さんの家の近くに住んでるっていう、あの?」


松五郎自身も、この街に引っ越してきた若葉のことは知っていた。


だが、浅漬けとコーヒーのことは知らなかったのか、驚いたような顔になっていた。


マスター「えぇ、そうですよ。ちなみに.......このコーヒーは、彼が育てたハーブから作ったらしいです」

松五郎「何ぃ!?」


マスターから明かされた、衝撃的な事実に対し、思わずコーヒーを吹き出す松五郎。


マスター「いわゆる、タンポポコーヒーというやつらしいですよ」

松五郎「タンポポコーヒー.......」


それを聞いた松五郎は、しばらく考えた後、あることを閃いた。


松五郎「そうだ!!町おこし委員会に、このコーヒーを使った彼を入れよう!!」


実のところ、町おこし委員会のメンバーの大半は老人で、若い人はほとんどいなかった。


なので、若者である若葉ならば、町おこしのヒントを考えつくはずだと、松五郎は考えたのだった。


マスター「確かに、それはいいアイデアだと思います」

松五郎「だろう?」


ガハハハと笑いながら、そう言う松五郎。


松五郎「よし!!まずは勧誘だ!!」


こうして、木之下町の町おこし計画の歯車が、少しだけ動いたのだが.................当の若葉本人は、そのことを全く知らないのだった。






☆☆☆

寺本松五郎

生まれも育ちも木之下町のおじいちゃん。

普段は、トマト農家をしている。

町おこし委員会に入っているものの、これといったアイデアが浮かばず、歯痒い思いをしている。

カフェ・ふくろうの常連客で、マスターのとある言葉がキッカケで、若葉を委員会メンバーにすることを思いつく。


カフェ・ふくろうのマスター

カフェ・ふくろうのマスターで、本名は森高渡。

カフェのメニューはドリンクだけなのだが、コーヒーを淹れる腕はピカイチで、コーヒーを飲みたいがために、来る人が多い。

なお、当の本人もコーヒーに関しては厳しい。

時々、お客さんから人生相談を受けることがあるのだとか。

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