第16話 これからもともに
翌朝、
住吉警察署の最寄り駅は
電車を乗り継いで行ける場所なのだが、車の方が所要時間が短いのである。
住吉警察署に到着して受け付けを済ませ、通された会議室の様なところで待っていたのは
梨本は始終反抗的で、取り調べは難航したそうだ。それでも梨本が
梨本が3人の女性を連れて「テリア」で食事をしていた時、大声で騒ぐわ暴れるわで、他のお客さまに
だがそれでも治まらず、何度も繰り返され、結局お店からの退去を
どこの飲食店でも、お客さまには楽しく食事をして欲しいと思うものである。だが最低限のマナーやモラルというものはある。飲食店に限らず、それを欠けば弾き出されるのは道理である。
「あの物静かなシェフ、お父さんが言うくらいなんやから、よっぽどやったんやと思います。まぁ慰謝料やら何やらって店の前で大声出すぐらいなんやから、お察しってやつですわ」
榊原さんはすっかりと呆れた口調である。守梨も同意見だし、きっと祐ちゃんもだろう。
「店のドアのガラス、あれ割ったんも梨本でした」
「あ、そうやったんですか?」
実は守梨は、昨日の
「あらかじめ恐怖を与えることで、相手を、この場合はお嬢さんを御しやすくしようとしたと。梨本はチンピラです。あまり言えんのですけど、ルートがありましてね、シェフご夫妻が亡くなったこと、それから家にはお嬢さんおひとりで住んではることを知って、それやったら行けるて思ったんでしょう。仕返しを狙っとったんかも知れません」
「そうなんですか……」
お父さんに
「それにしても
「はい」
「昨日はほんまにはらはらしましたわ。梨本を
そうだ。それは守梨も横で見ていて、本当にどきどきした。警察官である榊原さんご夫妻が後ろにいてくれたとは言え、危なかった。実際守梨たちは襲い掛かられかけたのだから。お父さんが守ってくれなければ、祐ちゃんが怪我をしていた。
「ああ、あれで梨本が殴るでもしてくれたら、話が早いと思いまして。そしたら暴行罪とかで逮捕できるやろかって」
祐ちゃんのしれっとしたせりふに、榊原さんは「はぁー」と大きく息を吐く。呆れている様な、少し非難する様な。だが榊原さんの声は言い含める様に優しかった。
「そんなん、素人さんがやったらあきません。僕ら警察官でもやりませんよ。逆上したら危険ですからね。これからこんなこと無い方がもちろんええんですけど、万が一があったら、もうほんまに止めてくださいね。自分の身を守ることを優先してください」
「分かりました。すいませんでした」
祐ちゃんは
榊原さんでは無いが、守梨も本当にそう思う。祐ちゃんはこれから「テリア」の料理人になるのである。守梨とともに歩んでもらうのだ。自分を大事にしてもらわなければ。
もう大事な何かを失うのは、まっぴらである。
明日から、また守梨と祐ちゃんは「テリア」再開のために励む。懸念ごとは解決したのだから、心置きなく打ち込むことができる。
守梨のセミナーも折り返しである。人脈を広げつつ、学ぶべきこともまだまだある。ビストロでの修行を兼ねたアルバイトだって続けている。祐ちゃんも納得できていない部分を突き詰めるのだろう。
祐ちゃんとともにあれる安心感、そして心強さ。それは守梨の励みになる。負けない様に頑張らなければ。守梨はあらためて強く思った。
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