香坂 壱霧さま
こんにちは。
いつもかなり身構えて、調子のよいときにだけ読んでいるのに、どうしようもなく衝撃が大きいです。読み始めると、とたんに引きずり倒されてしまいます。
「育成歴やそれによる人格の歪みは理由にならない。しちゃいけないんです」
アキさんのこの言葉、彼はこれはどういう気持ちで吐き出したのでしょう。
結果だけを見れば、どんな理由があろうと、人殺しは人殺しです。無差別殺人であろうと、復讐殺人であろうと、結果は等しく人殺しです。事実はまず事実としてしっかり受け止めねばならないと思います。でもその次のステップとして、やはりそこに至る事情は無視できないのではないかと思ってしまいます。
「育成歴やそれによる人格の歪みは理由にならない。しちゃいけないんです」
人間の精神はそこまで強固なものでもなく、弾性があるとも思えません。押し付けられ歪められれば、たとえ圧力をかける手を放しても、その形で固まってしまうものだと思っています。子供のころ虐待を受けながら、いわゆる「ふつう」の人と同じような「歪みのない」人間でいることなんて、できるのでしょうか? たまたま顕在化していないだけではないでしょうか? もし、慎二くんのような人間がいるなら、その人は虐待をうけつつも、救いとなるような存在を得ていたのではないでしょうか。
社会がアキさんの言葉を持ってその事件を糾弾してはいけないのではないか、そう感じてしまいます。
作者からの返信
アキさんの言葉。
執筆当時の私が思っていたものでした。
育成歴で人格の歪みは生じると思います。程度の差は、それぞれ。
人生に影響を及ぼすほどの、こころの傷。
歪みがあるがゆえに、罪を犯す人がいる。
育成歴に問題なくとも、罪を犯す人がいる。
同じような罪を犯した場合、前者はどうなるか。
執筆した当時、香奈やかつてのアキのように育成歴を免罪符にした犯罪者がいたら?と考えていました。
同じ罪を犯したとき、罪の重さ(求刑)に差が出るのはどうなんだ?と、疑問を感じたんですね。
罪は罪。
今は、なにが正しいとかいろいろ考えてもわからなくなってます。
「育成歴やそれによる人格の歪みは理由にならない。しちゃいけないんです」
これは、免罪符にしちゃいけないという意味でした。
虐待されたから歪んでるからこうなったんだ仕方ないだろう?
ということでした。
アキは、罪は罪として、償いたいのだ、と。
うまくまとまりません^^;
執筆当時から時間が経過し、アキの言葉をうまく伝えきれなくなりました……
重たくてしんどい話、読了していただき、うれしいです。
★、応援コメントなど、励みになりました。
ほんとうに、ありがとうございます。
なんとも重く、いちばんやりきれない結末になってしまったなあと、読み終えて放心です。
環境が人を作る。それは確かだろうけれど、全てがそうだと一概には言えない……。
一人一人の人格が立体的に、光も影も満遍なく書かれていて、表から見えない部分にこそその人の本質があるのだと思わされました。
最後まで救いのない結末でしたが、人間が全て悪い選択をしていったらどうなるのか……という、ある種の警鐘を感じさせる物語でもあったと思います。
読後感が良いばかりが小説ではないですよね。箱庭療法の場面など、心理的な描写も興味ぶかいものばかりでした。
面白かったです!
作者からの返信
救いのない結末で、全体的に重たい話を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
最初のプロットでは、香奈を生かしていました。アキさんは香奈を見放し、自分の罪を認めて自首するだけのラスト。
香奈を野放しにする。それでは誰も救われないなと思い、このラストに変えたのです。
悪人はいつから悪人になるのか。
育成歴がどれだけ影響するのか。
虐待されても負の連鎖を断ち切れる人もいるし、そうではない人もいる。その人たちの違いは?
独学でしたが心理学を学び、得たもの、箱庭療法などを盛り込み、良太に気づきを与えることで変化をつけていく。
五年かけて仕上げた作品でした。
面白いと言っていただけたので嬉しいです。
かなり精神的に疲れた執筆作業だったのでホッとしました。
応援コメントや★、
本当にありがとうございました!