第137話 ダンジョン49階 ボス戦後


「お、弓みたいだぜ。やったな院長!」


 マジか…………。

 さんざん盛り上がっておいて何だが、実はどうせ俺にはツヨツヨ弓なんて出ないだろうと思っていた。カレンには毎回期待してから落とされていたので、今回も当然の様に俺の装備ではない物が出るだろうと思っていたが、遂に出たのか!


「おぉ……。ど、どんな武器かな?」

 落ち着け。まだ弓だと確定したわけではないぞ。

 弓に似てるけど実は剣でしたー。とか全然あり得る


「これだぜ! 白くてかっこいいぜ!」


 カレンの手に握られた湾曲して細長い三日月状の白い物体は確かに弓に見える。

 良く見ると細かい装飾が施されていて、なかなか高級そうだ。

 しかし、弦が張られていないぞ。弦は自分で張るのだろうか?


「ほら、院長。持ってみろよ。きっと似合うぜ」


 カレンに渡されて持ってみると――。


 あ、これは弓だな。ちゃんと持つところがある。弓のグリップらしき部分をしっかりと握って構えてみると――。


 本来、弦が張られているはずの部分が線上に光って、白く細い光がレーザーの様に弓の先端同士を結んだ。


「この光が弦になるのか…………?」


 俺は矢を一本つがえ、光を弦にして静かに弓を引く。軽く引く事ができたが、しっかりと弓を引いている感触がある。


 俺はダンジョンの奥の壁に向かって、矢を放った――。


 俺の狙った場所へ一直線に光の束が走り、壁に当たる。


 だが、ダンジョンの壁は表面が黒く焦げただけで傷一つない様に見える。まあダンジョンの壁は壊せないようだから、この結果は当然だとは思うが、それより矢はどこに行ったのだろうか?


「院長! 凄いじゃないか。魔法みたいだったぜ!」


「ご主人様! 魔法まで使えるようになってしまったのですね! さすがです!」


 音はしなかったが、派手に光ったのでモモちゃんは勘違いしているようだ。これはおそらく魔法ではないと思うのだが――。


 ステータス画面を見てみよう。


 名前:タイラ マコト

 種族:人間 性別:男

 職業:奴隷マスター レベル:41

 スキル:弓術上級8、潜伏2、奴隷強化10、奴隷契約2

《習得していないスキル》採取、木工、斧術、トレッキング、細工、陶工、料理、物理抵抗、毒抵抗、睡眠抵抗、魅了抵抗、麻痺抵抗

 スキルポイント9

 体力強化 中

 命中強化 中

 敏捷強化 中

 腕力強化 中

 クレセントレイガン


 お、レベルが1上がっている。ミノタウロスを倒したからだな。

 しかし、そんな事よりも注目すべきは最後のクレセントレイガンだろう。

 直訳すると三日月光線銃だろうか? 銃ってこの世界にないと思うのだが…………。それとも俺が知らないだけで実はあるのか?


 解らないが、この弓は光線銃の様にレーザービームを発射できると考えていいのだろう。この世界の文明では科学的には不可能だと思うので、やっぱり魔法というかスキルって事になるのかな。


 ちょっと色々試してみよう――。


 試し打ちの結果。

 どうやら矢はいらないようだ。光の弦を構えて、引いて、放てば、レーザービームが発射される。


 しかも、ため撃ちも出来るし、素早く撃てば速射も可能と高性能。

 ためた分だけレーザーが太くなり、最大までためると直径30cmくらいにまでなった。まったくためずに撃つと鉛筆くらいの太さのレーザーだが、連射できるので手数が必要な時と使い分けできそうである。


 肝心の威力の方はまだ未知数だが、ミノタウロスの死体を最大出力のレーザーで吹き飛ばす事ができたので、威力も期待できるのではないだろうか。


「マコトよ。なかなか良い武器を手に入れたではないか、余の城の宝物庫にもその様な弓はなかったぞ」


「光魔法みたいじゃな。あれほどの威力があるとワシのアイアンバレットの魔法がかすんでしまうんじゃが…………」


「ん? 光魔法にこういう魔法があるの?」


「ワシは見た事がないが、かなり高位の光魔法の使い手はそのような魔法を使えると聞いた事があるんじゃ。山をも削るとか聞いたぞ」


 さすがにそこまでの威力はなさそうだが、なかなか使えそうな弓が出て良かった。


 これで俺もこのパーティーの火力要員として参加できるだろう。俺たちは今日の戦いでミノタウロスにも完勝できる実力を持っていることが解ったが、さらに火力もあがったし、俺たちはこの世界で相当強い部類に入るのではないかと思う。


強いと言う話だったので警戒していたミノタウロスもあっさりと倒せてしまった。俺たちはまだまだ進めるのではないか?


 新しい弓も試してみたいので、もっとダンジョンを深く潜って奥まで進んでみたいという気持ちが強い。どうやら力を手にすると試してみたくなるようだ。


「次の50階は署長の話だと何もないらしいから、51階まで進んで少し戦闘してみよう。どんな魔物が出てくるか解らないけど、新しい弓を試してみたい」


「まあ、どんな魔物が出てこようと我らの敵ではないだろうな。余のブラッドソードがまだまだ血が足りぬと言っておるわ」


「そうですよ! 何が出てきても、ガンッとしてゴーンですよ!」


 モモちゃんの言ってる事は意味不明だが、あっさりボス戦が終わったので、まだまだ我がパーティーの士気は高いようだ。


 先へと進もう――――。



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