第116話 パワーレベリング
署長に返してもらったマントをロレッタに着せて、さっそくダンジョンへと向かう――。
ガレフは居ないが、5人パーティーでも問題ないだろう。
さて何階に行くべきか?
なるべく下層の魔物を倒した方がレベルは上がりやすいと思うが、まだ未経験の41階をカレン抜きで行く気にはならない。一応カレンから地図は借りてきたので、俺が今日はマップ係をおこなおうと思う。
前衛の3人だけでも対応できて、経験値も美味しそうなウッドゴーレムが狙い目だろうか? 38階からはデビルヘッジホッグが出てきてしまうので、今日の狩場は37階に決定とする。
物珍しそうに辺りを見渡すロレッタを連れて、ダンジョンゲートをくぐる――。
37階に到着。魔物はどちらにいるだろうか? モモちゃんの鼻が効けば良いのだが、ウッドゴーレムの匂いは解らないらしい。
俺は地図を見ながら先頭に立つ。とにかく罠を避けながら37階をウロウロすることにしたのだが、今までナビゲーションはカレンに頼りきりだったので、自分でやってみると意外と難しい。
ダンジョン内は目印となる物が少ない。今、自分がどちらを向いているか解らなくなると途端に迷う。俺だってスマホさえあれば道に迷う事なんてなかったのだが、地図だけだとこんなに難しいとは…………。
せめて方位磁石があれば、何回ダンジョンの角を曲がろうと方角を見失う事はないのだが、これではとても戦闘に参加する余裕はない。
すでに何回かウッドゴーレムに遭遇したが、戦闘は前衛の3人にお任せして俺は地図から目を離すことができない。
落ち着け、大丈夫だ。まだ迷ってないはず。戦闘は彼らに任せておけばいい。
次のT字路は左に行くと罠があるから右にしかいけない。しかし右に行くとダンジョンゲートからはだいぶ離れてしまう。
正直あまり奥に進みたくない……。
今ならまだダンジョンゲートにすぐ戻れる位置に居ると思うが、これ以上進んでも大丈夫だろうか? しかし行くしかないだろう。下への階段を目指して、38階のゲートで帰ればいいのだ。
進む覚悟を決めた俺はより地図へと集中する。さいわいウッドゴーレムは動きが鈍いので不意に遭遇しても慌てる必要はない。前衛の3人と代わり、後ろへと下がればいいのだ。
さらにウッドゴーレムを倒しながら37階を進む――。
地図を読むのにも少し慣れてきたが、俺が思っていた今日の予定とは少し違ったな。もっとハイキング気分でロレッタにダンジョンの事を教えてあげたりしながら、余裕を持って進むつもりだったのに、それどころではない。
「やっぱり、ダンジョンは緊張感がありますね」
すぐ後ろに付いてきていたロレッタが声を掛けてきた。どうやら俺の緊張が伝わってしまったようだ。
「いつもはカレンが道案内してくれてるから、もう少し余裕があるのだけどね。俺は地図に慣れてないから大変だよ」
「なるほど、そうだったんですね。マコトさんの弓を撃つところを見たかったのに、なかなか弓を使わないから不思議に思ってました」
「今は戦う余裕がないなあ。まあ俺が戦わなくても、魔物はモモちゃん達が倒してくれるよ」
そうか、ロレッタに俺のかっこいい所を見せるチャンスだったのか…………。
いや、別にそんな必要はないとは思うが、少しくらいは俺にも見せ場があっても良いのではないだろうか?
誰かに地図を読むのを代わって貰うか? 誰に?
誰に任せても不安でしかない…………。やっぱり俺がやるしかないだろう。
もう落とし穴に落ちるのは勘弁だ――。
極力、遠回りしたのに結局俺の見せ場はないまま38階に着いてしまった。
無事にパーティーを次の階までナビできたし、ウッドゴーレムもたくさん倒せたので今日の狩りは大成功なのだが、俺は少々不満だ。
しかし、今日はもう疲れた。なれない頭脳労働で疲労感が半端ない。俺のカッコイイ所をロレッタに見せるのはまた今度にしよう。
皆に撤収することを伝え、孤児院へと帰る。
さてロレッタのレベルはいくつになったであろうか?
名前:ロレッタ
種族:人間 性別:女
職業:タイムリーパー レベル:18
スキル:時間遡行1、料理3、算術2、掃除1、洗濯1
スキルポイント9
今日だけでレベルが8も上がったようだ。スキルポイントも9余っている。これをどのように振るかが最大の悩み所だ。
本当は時間遡行を10まで上げたい!
スキルが進化して例えば時間停止なんてのになれば最強じゃないかと思うのだが…………。
さすがにその可能性は低いだろう。これがゲームであればワンチャン試してみたいが、今後のロレッタの人生がかかっている事を考えれば、そんな冒険はしない方がいい。
そもそもだが、ロレッタにとってこの時間遡行というレアスキルはすでに役目を終了していると思う。幼少期を何周もすることで、ついに当たりの人生を引き当てたロレッタにこのスキルはもう必要ない。
ただ、もし次に時間遡行が必要になるような事が起きたなら、それは相当なピンチだと思う。そんな事にはならない事を祈る。
今日は残念だが、無難に料理スキルあたりをあげるとしよう。料理スキルであれば孤児院での食事がさらに美味しくなり俺にとってのメリットも大きい。
料理3→料理上級3
せっかくだから何か新レシピをロレッタに伝えて、美味しい料理を作って貰おうか――――。
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