第109話 ロレッタの復讐 2

 名前:バーニィ

 種族:人間 性別:女

 職業:拷問官 レベル:82

 スキル:鞭術マスター3、精神攻撃8、魅了9、解剖6、拷問マスター6、ソニックウイップ8

 スキルポイント:6


 陛下をパーティーメンバーから外すと署長をパーティーに加入させる事ができた。

 しかし名前は可愛らしいが、他が…………。


 職業は当然のごとく警察署長だと思っていたのだが、バーニィさんのギルドでの主な仕事は拷問だったらしい。


 そしてレベル高すぎ! あのモモちゃんにも負けないパワーは高レベルなステータスからきているようだ。これでは他のマッチョなギルド職員も逆らえないだろう。

 ギルド長の座は力づくで勝ち取ったに違いない。


 しかし、拷問官って怖すぎるよ…………。

 スキルも強そうだし、絶対に敵に回したくない。それに解剖スキルって何に使うんだろうか…………?


「ちょっと、マコトくん? ボーっとしてないで、さっさとジレットを捕まえに行くわよ」


「は、はい! すいません。すぐ行きましょう。お供させて頂きます」


「どうしたの? 急にかしこまって? 私たちは今パーティーメンバーなんだから、そういうのいいからね。それより生死を問わずってなってるけど、殺しちゃダメよ。色々聞きたいことがあるんだから」


「で、ですよねえー」

 殺しちゃったら拷問できないもんね。


 あ、ロレッタがホッペを膨らませて不満そうだ。ロレッタは殺して欲しいって言ってたからな。


 でもジレットが死ぬより酷い目にあうと解れば、ロレッタもいつもの笑顔を取り戻すのではないだろうか。これは後でロレッタに教えてあげた方が良さそうだ。


 俺も最初はロレッタを囮にしてジレットをおびき出すという作戦には抵抗があったが、署長のステータスを見た後なら問題ないと考え直した。


 ジレットがノコノコ出てくれば確実に署長が捕まえるだろう。文字通りレベルが違う。俺たちは今レベル30くらいで、探索者ギルド内では上位に位置しているらしいが、ジレットが俺たちより上という事はないと思う。


 俺たちより強いならダンジョンに潜って荒稼ぎできるだろう。女子供を狙った強盗しかしてないなら、ジレットはなにか変わったスキルを持っているだけで強くはないのだろうと思う。足が速いらしいから、素早さ特化なレアスキルでも持っているのだろうか。


 署長を先頭に町の外に向かう、ダンジョンへと続く北門に着くと署長はこちらに向かって振り返った。


「さあ、マコトくん。あなたがこのパーティーのリーダーの様だから指示をお願いするわ。あなたの作戦でジレットを捕まえるのよ」


 あれ? そうなのか。署長のステータスを見てからは任せておけば良さそうだと、すっかり安心してしまったが、俺が指示しないといけないのか…………。


 何も考えていなかったぞ。決まっていることは、ロレッタを囮にしてジレットをおびき出す→出てきたら捕まえる。これだけだ。


 重要なのはジレットを逃がさないようにする事だろう。我々はロレッタを中心に四方に散らばって、どちらにジレットが行っても捕まえられる様に人員を配置しなくてはならない。


 問題はモモちゃんの方にジレットが行ったときに、どうなるか想像してみると――。


「あ……待てー!」 ドスドスドス 「ご主人様、逃げられてしまいました…」


 こうなるだろう事は容易に想像がつく。これはダメだ。モモちゃんは一番可能性の低いロレッタの背後を担当して貰おう。ジレットは町側から現れる事はないだろうし、町側に逃げる事もないだろう。


      署長


 ユウ  ロレッタ  俺


     モモちゃん

 ーーーーー北門ーーーーー


 我々はこの配置を保ちながら移動して、ロレッタにはダンジョン前の出店で串肉を買って、また町に戻るという行動を取って貰おう。


 俺は今回のパーティーメンバーに作戦を伝える。凄く良い作戦と言う訳ではないが、これが無難だろう。


「ふーん、まあ最初はそんな所かもね。ただ、バウンティーハンターギルドでも似たような事をして、ジレットを捕まえようとした事はあるのよ。だけど、あいつは現れなかったのよね。でも、その時はロレッタちゃんほど可愛い囮を用意できなかったから、今回はあの変態ならすぐ出てくるかも?」


 ジレットが出てこないという事もあるのか。しかしロレッタには必ず喰いつくというのは実証済みである。間違いなく出てくるはずだ。


「俺は間違いなくジレットは現れると思う。それぞれ油断しないで、いつジレットが出て来てもいい様に準備していて欲しい」


「そうね。大事なのは集中力を維持する事よ。一瞬でも集中が切れた時にロレッタちゃんは攫われる。これくらいの意識でやって丁度いいわ。でもね、実際はあいつが出て来さえすれば私がこのムチで確実に捕らえるから、ロレッタちゃんを見守っている事がバレないようにする事も重要よ」


 確かにこれは罠だとジレットに気づかれたら出てこないだろう。それでも俺は露骨にロレッタを護衛しなければ現れると思っている。


 何回ループしても町の外にロレッタが出れば必ず攫われるのだから、このループでも外に出れば攫われるのは間違いないはず。それでもジレットに余計な警戒をされるのも確かに面倒だ。


「それではあまりロレッタの事は見ない様に周囲を警戒してほしい。ただ一番大事な事はロレッタの身の安全だから、ジレットは必ず現れると思って行動するように。よし行くぞ!」


 最初に署長が門から出て行き、俺とユウがしばらくしてから出ていく。俺とユウは二手に分かれて左右に散らばる。門の正面に署長、左右に俺とユウと配置は完了。


 良いタイミングでロレッタが門から現れた。ロレッタの歩行に合わせて最初に配置された3人も移動する。俺はロレッタを見ない様に辺りを見回す――。


 署長もユウもロレッタを見ない様にまっすぐ前をむいて歩いている。これはロレッタを護衛しているようには見えないだろう。後から出てきたモモちゃんはロレッタを視野に入れて歩いているが不自然な感じはない。まあただ前を向いて歩くだけなので、さすがに問題ないだろう。


 串肉を5本買って、ロレッタが町へと戻りだした。まだジレットは現れない。我々は配置を崩さずに移動方向を変えて動き出す。


 町を出た時から薄々気づいていたが、これではジレットは現れないかもしれない――。


 そして俺の予想通りジレットが現われる事はなく、無事にロレッタは町の中へと入っていった。


 みんな俺の指示通り的確に動いてくれた。これが罠である。という事も気づかれていないと思う。それでもジレットは現れなかった。


 これは作戦の大幅な修正が必要だ――――。


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