第103話 ダンジョン41階 準備 1
次の日――。
41階以降の情報がないので、今日はダンジョンには行かずにギルドの図書室で情報収集と、メイドを探しに奴隷商に行って見ようと思う。
ギルドにはマップ担当のカレンと図書室に行ってみたいと言うモグラ族の親子ガレフとリーナを連れて行く事にした。
モモちゃんもご主人様と一緒がいいと言うが、図書室に連れて行っても寝てるだけなので、お留守番していて欲しい気がするが――。
でも、結局付いて来てしまった。まあギルドに行くのに護衛がいた方が安心できるからいいかな。
最近は慣れてきてしまったけど、ギルドには顔が怖いオジサンたちがたむろしている事が多いので、彼らに絡まれないようにモモちゃんを連れて行くのは有効だ。
本当は彼らに酒でも奢って情報収集できれば、図書室で得られる情報とはまた違った生の情報が手に入ると思うのだが、俺には無理だ。
元々コミュ障な俺は店員などの働いている人とは話せるが、知らない人とは話せない。
何かそこに話すべき必然たる理由がないと話しかけられないのだ。このギルドで言うと職員である受付のローズさんには話しかけられるが、職員でない他の探索者には話しかけられない。
店員や受付さんは仕事だからこちらの話を聞く義務があると、俺が思っているから話しかけられる。その他は義務がないので無視されたりする可能性があって、それが嫌だから話しかけられないという所だろうか。
実際にはそこまで考えていないが、心のどこかでそういう考えがあるから、なんの関係性もない知らない人と話すのは苦手なのだと思う。
と言う事でギルドに着いた俺は、薄汚い探索者は無視して俺を丁寧に扱ってくれる受付のローズさんに話しかける。
「おはようございます。ローズさん。今日は図書室で調べものをしに来ました」
「おはようございます。マコトさん。今日はいい天気ですね。ところで調べ物もいいですが、その前にギルド長にあって貰いますよ。まだ報告してない事がありますよね? ちょうど今部屋にいますのでご案内します」
そうだった。なにやら報告しないといけないと言われていた気がする。なんだっけ? あまり気にしていなかったので覚えてないぞ…………。
いつもの様にローズさんの後ろに付いて行きながら階段を上る。しかしギルド長には慣れてきたと思うのだが、この報告というのには慣れない。何も悪いことしていないのに怒られそうな気がするのは何故だろうか?
「ギルド長。マコトさんをお連れしました」
「おう、開いてるから入ってくれ」
「失礼します」
俺はローズさんに促されて、ギルド長の部屋の扉を開いて中に入る――。
「良く来たな。色々ローズから聞いているぞ」
その色々がいまいち思い出せない。ローズさんは何を報告したのだろうか…………。
「31階をポーションなしで突破したそうじゃないか、どうやったんだ?」
「あー、それは私のミスです。覚醒ポーションの存在をしらなかったので、ポーションなしで31階に行ってしまいましたが、陛下がスケルトンのせいか状態異常を受けつけなかったので、何とか進むことができただけです」
「そうなのか? お前が何かしたんじゃないか? どうもお前は実力を隠すような所があるから信用できん」
「そんな訳ないじゃないですか。今はちゃんとポーションも用意してますよ」
「まあそれならいいが、それよりもブラックローズだ。あいつは火魔法の継続ダメージで時間をかけて焼きつくす意外の倒し方は聞いた事がないぞ。これは図書室の魔物図鑑にも書いてないが、ブラックローズは火に弱いんだ」
ギルド長は俺に内緒だぞって顔で教えてくれたが、植物の魔物が火に弱いなんて誰でも思いつくのではないだろうか? 俺だって魔法が使えたら最初に試してみる。
「ブラックローズはうちのユウが剣で倒しました。中心の花の部分にたどり着ければ余裕でしたよ」
「いやいや、その中心までいけないから遠距離から使える火魔法で倒すんだろ。どうやって中心までいくんだ?」
「ユウは素早く茨(いばら)の間を抜けて中心まで行ったようでしたね」
「あの動く茨を躱して中に入っていったのか、正気の沙汰じゃないな…………」
実際には疾風剣というスキルで移動していったようだったけど、まだそれも検証したわけでないから正確には解らない。でも、ユウが倒したのには間違いないからこれでいいだろう。
「あとは、お前の孤児院に悪い噂が立ってるぞ」
「え? そんな馬鹿な。私がどれだけの労力と資金を使って孤児院の運営を立て直してると思ってるのですか?」
「そうだぜ、院長は孤児院の為に良くやってくれてるんだぜ」
ありがとうカレン。お前がそう言ってくれると報われる。
「それなんだがなぁ。急に外壁が奇麗になったというのも怪しまれているのだが、他にも夜中に骸骨が庭を徘徊しているのを見たと言う人が多くてな。孤児院の中で何か怪しい事をしているのではないかと噂になっている」
俺はショックのあまり思わず、天を仰いでしまった。
骸骨が徘徊しているという事は陛下が庭をウロウロしていると言う事だ。そういえば夜眠れないと言っていたから、暇を持て余して散歩でもしていたのだろうか?
いや、きっと陛下の事だから怪しい奴が入ってこないように、孤児院を警備してくれていたのだと思う。問題はなぜ鎧を着ていないのかと言う事だ。これは帰ったら問いたださなくてはならない。
「まあ、我々ギルド関係の者はお前のパーティーメンバーにスケルトンが居る事は知っているが、そう説明するのも問題ありそうだからな。せっかくお前があの黒い鎧で隠しているのに我々がばらしてしまうのも悪いだろう? だからギルドの方からは何も言ってない状態だぞ」
「それは気を使って頂いて、ありがとうございます」
とりあえず鎧を脱いで庭をうろつくのを辞めさせれば、自然と噂は消えていくかもしれない。今はそんな消極的な対処法しか思いつかないが、どうしたものか…………。
「そういえば、主人よ。陛下は月光浴をしていると言っていたぞ。なんだか月の光を浴びると満たされると言っておったな」
それだ!
ガレフからなんとも奇妙なスケルトンの生態を新たに教えて貰ったが、そういう事なら鎧の上から月の光を浴びてもダメなんだろうな。
せめて外からは見えない位置で月光浴とやらはやって貰うことにするか――――。
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