第102話 キノコ農場
リーナの話では、この世界には危険なキノコがあるようだ。まあ走り回るマタンゴなどを見た後ではたいして驚きもない。そんなキノコもあるのだろうと思える。
リーナを皆に紹介したかったが、キノコ農場が忙しそうなので後にする事にしよう。
今日は早く帰ってきたので、俺はロレッタの夕飯作りを手伝おうと思う。
いつも忙しそうにしているロレッタ母さんを少しでも助けなければならない。ロレッタに過労で倒れられては、この孤児院はとても困るのだ。
しかし、今後はリーナにも家事を手伝ってもらうので、ロレッタも少しは楽になるはずである。
俺はロレッタの隣で夕飯の支度を手伝いながら、話しかけた。
「ガレフの娘が来たから、これから色々と孤児院の仕事を手伝ってもらおうと思うんだ」
「それは助かります。私だけではちゃんとできているか心配で」
ロレッタは完璧に孤児院を運営できていると思うが、本人としては不安なのだろう。
リーナは料理と算術スキルを持っているので、そのまま料理と家計簿などの帳簿を付けて貰えると孤児院の運営にとても役に立つのではないだろうか。
そんな事を考えているとリーナとガレフが何か話しながら、俺とロレッタの前にあらわれた。
「主人よ、リーナのここでの仕事の事なのだが…………」
「ああ、それなら…………」
俺はさきほど考えていた家事や帳簿の仕事をリーナに伝える。
「嫌ですけど?」
凄く不服そうだ。ガレフ、話が違うじゃないか…………。
「そうなのか? 料理くらいはできるんじゃないか? ガレフは、娘は家事が出来るって言ってたぞ」
「それは、簡単な料理くらいは作れるよ。でも人族の口に合うかしら? モグラ族の料理って虫とか使うよ?」
虫料理かあ……。できれば違うのがいいな。
「キノコ料理はできるんじゃないか? 美味しいキノコを食べさせてくれるって言ってたろ」
「それはキノコ農場で美味しいキノコを栽培するって話だよ。このキノコは焼くだけで美味しいからね。私はキノコの仕事がしたいよ」
それだとロレッタが楽にならない。せめて帳簿を付けて貰うか。
「それならこの孤児院の帳簿をつけてくれないか? 今はこのロレッタがやってくれているが、大人が管理した方がいいだろ?」
「そうですね。私もちゃんとできているか心配です」
「じゃあ、それは後で見てあげるね。でもこの規模の施設の帳簿なら、そんなに複雑じゃないと思うよ」
「それと家事は掃除、洗濯だな。それはできるだろ?」
「マコチン、世の中には適材適所って言葉があるよ? 私がキノコ農場で稼いであげるから、そのお金で新しいメイドを雇いなよ。私にはメイドは無理だから、他の事で私を有効活用するんだよ」
「それじゃあ、教師はどうだ? ここの子供たちに読み書きや算術を教えてあげてくれ」
「あ、私も色々教わりたいです」
「教師なら私もできるよ。大学で講師もしていたからね。帳簿の付け方も教えてあげるよ。うんうん、それなら私を有効に活用できてるね」
なんて生意気なモグラさんだろうか、ガレフが娘の後ろでオロオロしているのが見える。父親らしくガツンと言って欲しい所だが、あの様子だと無理なのだろう。
しかし、まあ仕事内容に納得はしてくれたようなので良かったか?
ただ、当初の予定とは少しずれてきてしまった。それでも本当に地下のキノコ農場で収益が得られるなら、この孤児院の運営状況がとても改善される。
危険なダンジョンからの不定期な収入よりも、安全なキノコ栽培での定期収入のほうが良いだろう。
それでも当分はまだまだダンジョンで稼がないといけない訳だが、この孤児院の将来に希望が見えてきたように思える。
ただ、問題はロレッタの勤務状況が改善されないということか…………。リーナの提案通りにメイドを買いに行く必要があるのかもしれない。
「主人よ。リーナの意思を尊重してくれて、ありがとう。ここに来る前に我々は奴隷なのだから、主人に失礼がないようにとは伝えたのじゃが…………ムダだったようじゃ。申し訳ない。だが、リーナのキノコは主人の役に立つと思うぞ。主人が後で良い判断をしたと思えるように、ワシもキノコ農場を手伝って良いキノコを育てるから、楽しみにしていてほしい」
「ああ、キノコ楽しみだね。ガレフ頼んだよ」
地下に関してはガレフに任せておけば良いだろう。娘には甘いみたいだが、風呂などの地下室の充実ぶりは全てガレフの仕事だ。頼りになる――。
夕飯時にリーナを子供たちの先生として紹介した。子供達からは好評のようだ。きっとガレフのおかげでモグラ族に慣れているのだろう。授業は問題なくできそうだ。
あ、ノートや鉛筆がないか、黒板は必要だろうか? リーナの服なども必要だがサイズ的に子供服でもいけるのだろうか? まあその辺はリーナとロレッタで話してもらおう。
今後は2人で何でもよく相談して孤児院を運営していってほしい。
院長はただただ温かく見守るのみ…………。
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