第71話 スケルトン 4
さて孤児院に帰ろうかなと思うのだが…………。
このまま陛下をお連れして良いものだろうか? まず子供達が泣き叫ぶであろうし、ユウに見つかるのもマズイ。
あの魔物絶対殺すマンに見つかれば、レベル9の陛下は瞬殺であろう。ユウに仲間だと言い聞かせる間くらい陛下がユウの攻撃に耐えてくれれば良いのだが、今見つかったら無理な気がする……。
もっと陛下のレベルを上げるためにダンジョンに戻るか?
せっかく地上に戻れたのに、また2人で行く気にはなれない――。
防具を買って陛下の耐久力を上げるというのはどうだろうか?
それなら瞬殺とはならないかもしれない。いっそのことフルプレート陛下にしてしまえば、そう簡単には倒されないだろう。
いや、そうか。全身を鎧で覆ってしまえば、スケルトンに見えないのではないか? 俺はダンジョンの中で偶然出会った騎士に助けられたという事にすれば良い。ケイン辺りにはすぐにバレそうだがユウに気づかれなければ良いだろう。
「陛下、まずはお召し物から整えましょう。転生したてのスケルトンとは言え裸マントで街をうろつくのは良くないです」
「うむ、よくぞ気が付いた。余もいささか心許ないと思っていたところである」
「それでは孤児院に行く前にまずは買い物に行った方が良いですね。ところで陛下は今後どうされますか? 国には帰れないようなので、私の仲間たちと一緒にダンジョンで魔物退治をして生計を立てますか?」
「うむ、王国に帰る方法が見つかるまでマコトの世話になろうと思う。よろしく頼むぞ」
「解りました。陛下にも魔物と戦って貰いますので、防具屋に行って鎧を買いましょう」
「さようか。まあ魔物退治は任せておけ」
急いで防具屋へと向かう。ここでバッタリと皆に会っては台なしだ――。
さいわい人目につくこともなく防具屋に無事にたどり着けた。
「こんにちはー。鎧を見せてほしいのですが」
「はい、いらっしゃいま……」 女性店員さんが固まっている。俺の後ろにいるスケルトンに気がついたようだ。
「このスケルトンは私の奴隷なのですが、見た人がビックリしてしまうので全身を隠せる防具がほしいと思います。何が良いですかね?」
「はぁ、そうなんですね。確かにビックリと言うか心臓が止まるかと思いました。スケルトンを奴隷にするなんて実際に見てなければ信じられないですが…………。でもまあいつもオークを連れているあなたなら不思議じゃないですね」
防具屋さんにも俺の顔は覚えられていたのか、やはりブタちゃんは目立つな。
「そのスケルトンの姿を隠すなら鎖かたびらの上からフルプレートメイルを装備して関節部分を鎖かたびらで隠さないとダメね。革鎧も丈夫な服の上から革鎧を装備しないと隙間から骨が見えちゃうわ。あ、でも革鎧の頭装備じゃこの頭は隠せないかな…………」
店員さんが一生懸命考えてくれているが、これは結構高くついてしまうのではないだろうか? 正直、あまりお金を掛けたくないのだが……。
「あの、できれば低予算でお願いしたいのですが…………」
「低予算と言っても結構かかるわよ。やっぱり頭装備の事を考えると金属製のフルプレートメイルでしか顔が隠れないし、迷宮産の装備じゃないとサイズが合わないわ」
やっぱりそうなるか。安い革鎧でとはいかないよなあ。
「迷宮産のフルプレートメイルってマジックアイテムが多いし、それもだいたいセット装備だからどれも高級品なの」
「セット装備って?」
「全身を同じ素材で作られた物などで集めて、装備すると特殊な効果が得られるマジックアイテムよ」
それは高そうだな。陛下にはもったいない気がするし、手持ちのお金では買えないかもしれない。
「あ、そうだ。ちょうど処分に困ってた鎧があるわ。このスケルトンに着せてみましょう」
そう店員は言うと奥から不気味な物体を両手で抱えて持ってきた。それは赤黒い不吉な色。言うなれば血が乾いて固まった様な色だ。
「それ鎧なのですか?」
店員は奥から次々と黒い物体を持ってくる――。
一式そろうと確かに全身鎧のようだが、嫌なオーラが漂っている。俺はこれを着たくない。
「この鎧は着用者に出血のデバフを与えるらしくて、普通の人には長い時間装備していられないのよね。スケルトンなら大丈夫かもしれないから試してみなさいよ。別に呪われてはいないから、脱ぎ着は自由よ」
装備すると出血し続ける鎧なんて俺は絶対に嫌だが、陛下なら店員さんの言う通り大丈夫なのか? 血は出ないだろうけど他のデメリットがあったりするのかもしれない。
それでも試してみないと解らないだろう。
「陛下、これを装備してみますか?」
「うむ、なかなか良さそうな鎧だな。余が装備するのは光り輝くミスリル製の鎧などばかりだったから、こういう侘びた鎧も渋くて良いと思うぞ」
「そうですね。変に飾りなどありませんから、実用的で良いかもしれません。王と言うよりは歴戦の勇士といった感じですね」
「ワッハッハッハッ、マコトも言うではないか!」
何やら陛下のツボに入ったらしいが、何が面白かったのだろうか? きっと似たような宮廷ジョークがあるのかもしれない。
「その骨、喋るんだ…………」
店員さんがドン引きしているが、陛下がご機嫌なうちにさっさと着せてしまおう。パーツを一つ手に取り装着させようと思ったが…………
「これはどれから装着していくのですか?」
「え? ああ、私がやりますよ」 手際よく店員さんが陛下に鎧を装着してくれた。
「うむ、これは良いぞ。非常に体に馴染む。普通フルプレートメイルは動きにくくて叶わんが、この鎧なら問題ない」
確かに外から見ても良くなじんでいる様に見える。謎の液体なども垂れていないようだし、問題なさそうだ。
ステータス画面で状態異常が起きていないかチェックしてみよう――――
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