第70話 スケルトン 3
「マコト様、首輪では奴隷化できていないようです。この奴隷は奴隷の首輪よりも強い力で、すでに奴隷化されているからのように思います。マコト様に何か心当たりはございますか?」
「実は自分で奴隷化ができるようになったので、やってみたのだがそれが上手くいっているという事だろうか?」
「マコト様は奴隷化できるようになったのですね。私もそうですが多くの奴隷を使っているとそのように奴隷化を行う事ができるようになる事もあります。そういった者たちが奴隷商人になるのです。マコト様は奴隷商人になる気はございませんか? マコト様なら素晴らしい奴隷商人になるでしょう」
「いや、今は考えてないな。ダンジョンで自分を鍛えたいと思っている」
「そうですか。残念ですがそれも良いでしょう。もし心変わりされる様な事があれば私に声をかけてください。奴隷商人への道をご案内致します」
「それはありがたい。奴隷商人になりたくなったらお願いする。人生どうなるか解らないからね。もしかしたら奴隷商人になる事もあるかもしれない」
「どういうことだ? ここに来る前からこのスケルトンは奴隷になっていたという事か?」 ギルド長には伝えていなかったので混乱しているようだ。
「私も確信がもてなかったのでお話していませんでしたが、どうやら私は首輪がなくても相手の同意があれば奴隷化できるようになったようです」
「ディーンさん、ちなみに奴隷商人として力を付けていくと、どういった成長をするのですか?」
「奴隷を強化する事ができます。それは私にも出来ているようなのですが、さらに極めると逆に主人側も奴隷から力を貰えるようになると言われております。そのような奴隷マスターには私はまだお会いした事はありませんが、マコト様であればいつかはその高みに到達されるのではないでしょうか?」
「奴隷マスターと言うのは奴隷商人とは違うのか? それを極めると言うのは?」
「手段が違うだけで基本的には同じだと思います。商人は奴隷を売買してお金を稼ぐのが目的です。マスターは奴隷を使役してダンジョンなどでお金を稼ぐのが目的です。極めていくと言うのは商人であれば多くの奴隷を持つことが成長の道だと言われています。私も100人以上の奴隷を持つことで奴隷化の能力を手にすることができました。ただマコト様はそんなに大勢の奴隷をお持ちではないでしょうから、なにか他の方法で能力を手に入れたのだと思います」
「それにしても最近奴隷を手にしたばかりなのに、もう奴隷化の能力を手に入れるなど信じられません。普通はただ奴隷を使役していても能力を得る事は出来ません。奴隷を使役している探索者など大勢いますが、その中で奴隷化の能力を得たなど聞いた事がありません。きっとマコト様には天性の才能があるのだと思います」
ダンジョンで迷子になったので、ヤケクソでスキルレベルを上げたら手に入ったとは言えないな。言っても理解できないと思うけど……。
「俺は奴隷マスターとして、これからもダンジョンで戦っていけば成長していくのか? ぜひとも奴隷から力を得る能力というのは欲しいのだが」
実際にはスキルレベルを上げていくだけだけど、その先で得るスキルの情報が欲しい。
「私が知っているのは昔、大陸に奴隷王という国民すべてを奴隷にして強大な力を手に入れた王がいたという話だけです。そこから奴隷の数こそ奴隷商人の力であると言われているのですが、どうやらマコト様をみるとそれだけではない様ですね」
「奴隷王の事なら余も良く知っておるぞ。他国の何人もの王が奴隷王をマネして国民を奴隷にしようとしたが、それらの王は全て反逆、謀反、暗殺などで命を落とし上手くいった事がない。民衆たちは奴隷になどなりたくなかったのだろう。それから王は奴隷を持つべきではないという風潮になったのだ。そもそも王に奴隷など必要ない。優れた王には忠誠心にあふれた配下が自然と集まって来るものだ」
たしか、この王様は息子に殺されたと言っていたような気がするが…………。話が脱線してしまっているので、そこに突っ込むのは辞めて黙っておこう。
「奴隷王の強大な力とはなんだったのだろうか?」
「奴隷の数だけ力を得るとか、奴隷の能力を得るとか言われていますが、真実は解りません。何万人もの奴隷がいるだけで強大な力とも言えますが、奴隷王は引退するまで戦争などは負けなしの強さだったそうです」
「詳しいことは解らないのか……」
俺が何万人もの奴隷を手に入れるというのは現実的ではないから、数よりも能力を得ると言うのが気になるのだが、解らない事はしょうがない。
「それではこの首輪は意味がなかったけど購入させて貰おう」
ディーンさんに金貨を1枚渡して挨拶を済ませて店を出る。
「おい、とりあえずこのスケルトンが奴隷化されているのは確認できたから俺はもう行くぞ。頼むからこれ以上、問題を起こすなよ」
ギルド長から念を押されてしまったが、こちらも好きで問題を起こしているわけではない。どちらかと言えばなるべく穏便にすむように生活しているはずなのだが――――。
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