第54話 酒場
「皆、無事に脱出できたようだね。 それじゃあ、ご飯を食べに行こう。今日はたっぷり稼げたから豪遊しようね」
「ご主人様、早く行きましょう。お腹が空きすぎて目が回ります…………」
「じゃあ広場にあった。酒場に行ってみようかな」
皆で広場に移動して酒場に入る。まだ早い時間のせいか空いているようだ。
「それじゃあブタちゃん好きなの頼んでいいよ」 メニューを渡そうすると
「いいえご主人様、注文はご主人様がなさってください。奴隷はお店の方に注文などしません」
「別にいいんじゃないの? 誰も気にしないと思うけど?」
「いいえご主人様、周りの方々はあのオーク奴隷はちゃんと管理されているのか? 急に暴れだしたりしないか? と気にしています。そして私のお腹はもう限界です。はやく注文してください。お肉がいいです」
俺は慌てて店員を呼んで注文する。別に今の痩せているブタちゃんはオークに見えないから問題ないと思うが、これ以上言っても機嫌が悪くなるだけのようだ。
とりあえず急ぎで出せると言われた煮込み料理と飲み物を注文した。他はゆっくりメニューをみて注文しよう。腸詰めなんかもあるらしい、ソーセージはこっちに来てから食べてないなあ。
「そういえばケイン、あいつら金貨80枚になったぞ。あとで20枚渡すな」
「80枚かよ! すげーぜ。でもさ、金貨は兄ちゃんが持っててくれよな。そんな大金怖くて持ち歩けないし、そもそもそんなに必要ないぜ」
「ケインは必要なくても孤児院の為に使えばいいんじゃないか?」
「孤児院にそんな大金置いておくと狙われるし、毎日の食費があれば十分なんだぜ」
「それじゃあ俺が預かっておいて、もっと金貨が貯まったら外壁の修繕とかするかな」
「それがいいぜ」
しかし俺が持っているのもちょっと不安なんだが…………。
今回もザイードに狙われたみたいだし、なんで狙ったのか聞いておけば良かったか? 簡単には教えてくれそうにないが、うまくやれば聞き出せたかもしれないな。失敗した…………。
この酒場の料理はトマト煮込みやソーセージにパン、ステーキとサラダと焼いた芋、日本と比べてもちゃんとした料理で美味しかった。また来たいと思う。
「お会計をお願いします」
ブタちゃんがアホにみたいに食べたから一体いくらになるのか解らない。メニューを見た感じだと4人で金貨1枚あれば十分足りる感じであったが――――。
会計は 金貨6枚!
さっきの懸賞金があるから全然払えるけど高いな。払えないと思われたら嫌だから取り敢えず払うけど、なんとかならないだろうか?
「これでお願いします。ちなみに素材の買取とかやってないですか? レッサーバイソンの肉ならあるのですが」 支払いを済ませてから、一応聞いてみる。
「レッサーバイソンの肉ですか? 少々お待ちください」 店員は奥に引っ込み。少々待っていると――。
「レッサーバイソンの肉があるなら見せてみろ」
奥から立派なヒゲを蓄えた巨漢のシェフが現れた。何故か出刃包丁を片手に持っている。
「これです」 俺はマジックバッグからレッサーバイソンの肉を取り出してテーブルに置く。
「正しく処理してあるな。鮮度もいい。それはマジックバッグか? なるほどな。これなら買い取ってもいいぞ。今、団体客がきたらしく店の在庫の肉が無くなってしまったからな――。」
「おい、団体客はどこだ? もう帰ったのか?」 シェフが店員に尋ねている。
「シェフ、先程の大量の注文はこちらのお客様だけの注文です」
「なに? 4人であれだけ食ったのか? やるじゃねえか。大量に注文して食って、在庫まで補充してくれるなんて良い客だな。気に入ったぜ。この肉は金貨3枚で買い取ってやる。他の奴らには言うなよ? 本当はちゃんと肉屋から買わないと卸して貰えなくなるからな。今日は緊急処置って奴だ。はやく仕込みをしておかないと夜の分がなくなっちまう」
「もっとレッサーバイソンの肉ならありますけど?」
「いや、これ以上は必要ない。余らせて肉をダメにするわけにもいかないし、肉屋からも通常通り仕入れないと疑われるからな」
「ありがとうございます。料理美味しかったので、また来たいと思います」
「おお、また是非来てくれよな。大歓迎だぜ」 金貨を受け取り店からでた。
結局金貨3枚は戻ってきたが、一回の食事で金貨3枚は厳しいな。ここで気軽に飲み食い出来るようになるにはもっと稼げるようにならなくてはいけない。
「ご飯美味しかったですねー。また来たいです」 すっかり元通りに膨らんでいるブタちゃんが何か言っている。
飢餓状態のブタちゃんをお店に連れて行ったのが、そもそも間違いだった。急に大金が手に入ったから調子に乗ってしまったようだ。今回はブタちゃんに食事を取らせるタイミングが途中でなかったからしょうがない。
ブタちゃんの空腹管理もこのパーティーの運営には大きな要素なようだ――。
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