第53話 バウンティーハンターギルド 2
俺たちが2人の力比べを見守っていると――――。
「災難でしたね」 先ほどの受付警官が声を掛けてきた。
「さあ、今のうちに精算しておきましょう。死んでいるザイードの手下がそれぞれ金貨15枚、ザイードは生きているので賞金にプラスして奴隷落ちで発生する料金も付けられます。ザイードは合わせて金貨30枚ですね。3人で合わせて金貨60枚になります。その他の彼らの装備品もこちらで引き取れますが、どうなさいますか?」
2人の熱い戦いも気になるが金貨60枚も気になる。それに装備品もお金に換えて貰えそうだ。正直死体からはぎ取った装備を自分たちで使いたいとは思わない。
「装備品も全てお願いしたい」 マジックバッグから今回手に入れた彼らの装備品を全て出す。ボウガンに剣に革鎧、ナイフなどと結構な量だ。
「それでは査定して来ますので一度お預かりします。少々お待ちください」
受付警官は装備品を持って奥へと行ってしまったので、ブタちゃん達を見てみるとまだ力比べをしている。2人ともタフだな…………。
「おい、探索者の兄ちゃんよ。俺を使う気はないか?」
顔の確認の為に猿ぐつわを外されたザイードが声を掛けてきた。
「使うってどういう事だ?」
「俺はもう奴隷落ち決定の様だから兄ちゃんに俺を買い取ってほしいんだ。俺はダンジョンに詳しいし結構強いからな、探索者の兄ちゃんの奴隷として役に立つと思うぜ」
確かにこいつはスキルを見た感じ役に立ちそうではあったし、ダンジョンだけでは無く色々な裏の知識とかがありそうだ。しかしその知識でこちらが騙されるという事が十分考えられる。むしろ他の奴の奴隷になるより、俺の奴隷になった方が騙しやすいくらいに考えていそうだ。
「いや、一度命を狙ってきた奴なんて怖くて近くにおけないよ」
「そこを頼むよ。兄ちゃんに忠誠を誓うぜ。このままじゃ俺がダンジョンで獲物にした奴の関係者や家族に買われてしまう。何されるか解ったもんじゃないぜ…………」
ザイードは情けない声を出しているが、これこそ自業自得だろう。自分の行いが自分に返ってくるだけ、同情の余地はない。
「まあ、それはしょうがないだろ。諦めなよ」
「実は今までの稼ぎをダンジョン内に隠してあるんだ。それを渡すから俺を解放してくれ。今まで上手くやっていたんだから、こんな終わり方じゃつまんねーよ」
「何を話してるんだ?」 受付警官の人が戻ってきた。
お金は欲しいがこんな奴を解放したら怖すぎる。絶対逆恨みしてまた襲ってくるだろう。
「どうやらザイードはダンジョンに今までの稼ぎを隠してるそうですよ。没収して被害者遺族に渡して上げて下さい」
「やっぱりか、まあこれから取り調べだ。全部話してもらうからな。隠し事が出来るとは思わない方がいいぞ。 あ、装備品の査定はもう少しで終わりますのでお待ちください」
ザイードは受付警官の人に奥に連れて行かれた。ザイードがこちらを睨んでいるが、気にしてもしょうがない。もう2度と会うこともないだろう。そう願いたい…………。
『ワッ!』
何やら歓声が上がったので振り向くと署長とブタちゃんの決着が着いたようだ。ブタちゃんが大の字に倒れてグッタリしている。署長はガッツポーズを取ってご満悦だ。いつの間にかギャラリーが増えてだいぶ盛り上がっていたらしい。
「大丈夫か?」 倒れたブタちゃんに近寄って声を掛ける。だいぶやつれていて森の中で最初にあった時のブタちゃんと同じ顔をしている。久しぶりに見たのでなんだか懐かしい。
「すいません。ご主人様、負けてしまいました…………」
「いや、いいんだよ。負けて。勝った方が面倒だ」 小声でブタちゃんに教えてあげる。
「それより、お腹が空いただろう。ここが終わったら何か食べに行こう」
「うぅ…………。嬉しいですけど、お腹がすきすぎて動けないです」
「じゃあこれ食べて、動けるようになったら先に外に出ててよ」
ブタちゃんに干し肉を渡す。ブタちゃん用にもっとハイカロリーな非常食を用意しないといけないようだ。
「ケイン、ブタちゃんとユウ連れて先に外に出ててくれ、面倒に巻き込まれないうちに移動するぞ」
「解ったぜ」
署長をみると観衆に囲まれたテーブルの上に立ってポーズを取っている。
今のうちだ――。
受付に戻ると装備品の精算が終わったようで受付警官の人が金貨の入った袋を持ってまっていてくれた。
「精算が終わりました。装備品は全部で金貨20枚になりました。よろしければサインをお願いします」 金貨を数えてサインをする。
「ザイードを捕まえて頂き、ありがとうございました。それと署長に見つかる前に早めに建物から出る事をおすすめします」
「そうですね、ありがとうございます。ところで署長というのはギルド長とは違うのですか?」
「ギルド長というとみんな探索者ギルド長を思い浮かべるみたいなので、バウンティーハンターギルド長は昔から署長と呼ばれています。バウンティーハンターギルド長だと長くて呼びにくいからですかね?」
「そうなんですね」 なんで署長なのか解らないが翻訳的な問題なのかな。
そんな事よりも今はその署長に見つからない様に逃げ出す事が先決だ。見つかったら拉致されて厄介な事が起きるに違いない。受付の人もそう思っているようだった。
署長の様子を伺うと、まだ観衆をみずから煽って盛り上がっている。ここはスキル潜伏を信じて出口に向かう――。
――――――。
――。
成功だ! 署長に見つからずに脱出できた。皆も外で待っていてくれている。
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