第52話 バウンティーハンターギルド 1
「ケインに助けられたなあ。賞金首の事なんて知らなかったから助かったよ」
「いいんだぜ、こういうのは俺に任せてくれよな。あいつは絶対強盗だ。ボウガンに毒が塗ってあったとか仲間じゃないと解らないだろ。マジックバッグも知ってたしな。きっとマジックバッグ狙いで襲ってきたんだぜ」
「さすがケインだ。よく気が付いたな。まあ俺もロープを解くつもりは最初からなかったんだぞ」
「本当かあ~」
ケインに怪しまれてしまった。まあ一緒に行こうって誘った所を見られているからしょうがないな。何とも言い訳が難しい。
「ご主人様がこんな悪党に騙されるわけがありません。きっと油断させるためにロープを解くふりをしたのだと思います」
お、ブタちゃんナイスフォロー? 油断させても特にその成果は出てないからフォローにはなっているか微妙だけど、その気持ちだけ受け取っておこう。
「そうそう。ケイン、バウンティーハンターギルドの場所は解るか? さっさとこいつを引き渡してしまおう」
「おう、こっちだぜ」
ケインに案内されるがまま町の中を付いて行くと石造りの立派な建物が見えてきた。
探索者ギルドよりも金がかかっていそうな建物だ。看板をみると鉄格子の模様にみえる。バウンティーハンターギルドは牢屋も兼ねているのかもしれない。
皆で中に入ると、受付に警官の様な制服を着た屈強な男たちが並ぶ。かなりマッチョで威圧感たっぷりだ。
「すいません…………」 恐る恐る声を掛けてみると
「今日はどういった、ご用件で?」
何やら怪しまれているようだ。あまり探索者は来ないのだろうか?
「私は探索者で今日はダンジョンの20階を探索したのですが、20階ボスを倒した後にこの者たちに襲撃されました。撃退はしたのですが相手が賞金首なのではないかと思い、確認の為に訪れました」
ブタちゃんに担いでもらっている男を受付の男に見せる。
「ん、こいつはザイードじゃないですか。あなた方が捕まえてくれたのですか?」
「はい、それとこいつらも襲ってきました。」 マジックバッグから2人の死体を取り出す。
「ああ、ザイードの一味ですね。この2人にも賞金掛かってますよ。」
「やっぱり3人とも賞金首なんですね」
「そうです。ザイードは元バウンティーハンターだったのですが、強盗の方が儲かるとダンジョンに籠ってしまいました。こちらの内情に詳しく我々も捕まえるのに苦労していたので助かります。よく捕まえられましたね」
「捕まえる気はなかったのですが、襲われてしまったので…………」
「解っているだけでもダンジョン内で何人も犠牲になっていたのですよ。たった3人の強盗ですが自分たちより強いものは襲わずに確実に獲物を罠にはめる様に殺害していたようです」
きっと俺たちは弱そうに見えたのだろうな。最初にブタちゃんを毒矢で弱らせておけば余裕だと思ったのだろう――。
「あら、どうしたの? 揉め事かしら?」
「署長!」
署長? ここはギルドじゃないのか? 女性の声が聞こえた方に振り向くと――。
ミニスカポリスだ! なんでこの世界にセクシーポリスの恰好をした奴がいるのだろうか? 署長って呼ばれていたが、ここのギルド長とは違うのか?
「あら、これザイードじゃないの。あなた達は初めて見る顔だけど、あなたが捕まえたの?」
署長がグイっと近寄ってきた。この人、美人だけど距離感がぶっ壊れているな。初対面なのに近いよ…………。
「は、はい。一応そうみたいです…………」
「見かけによらず。やるじゃない! 今日からあなたもバウンティーハンターよ!」
急に肩を組まれた。パーソナルスペース所の話じゃない。距離0に密着されている!
「署長! その方たちは探索者だそうですよ。カシフさんにまた怒られちゃいますよ!」
「うるさいわね。カシフなんて放っておいていいのよ。そうだ! これから皆で飲みに行きましょう。私があなた達にバウンティーハントの成功をお祝いしてあげるわ!」
肩を組まれたまま外へと引っ張られる。凄い力だ。抵抗できない!
ブタちゃん助けてくれ! ブタちゃんに目で訴える――――。
「ご主人様を放しなさい!」
ブタちゃんに俺のお願いが届いたのか、署長の行く手にブタちゃんが立ちふさがる。
「あら、あなたも可愛いわね。一緒に飲みに行きましょう?」
ブタちゃんも一緒に連れて行かれそうになるが、ブタちゃんは動かない。
「あなた凄い力ね。でも私も力比べには自信があるわ」
署長の腕に力が入るがブタちゃんは動かない。
「やるじゃない」
署長は俺を放り出して、ブタちゃんと手を4つに組んで本格的に力比べを始める。署長はあんなに細いのによくブタちゃんと力で張り合えるな。ブタちゃんが今は痩せている状態だからいい勝負なのかもしれない。
ブタちゃんが苦しそうな顔をしている。『お腹が空いて力が出ないよー』と言う声が聞こえてきそうだ――――。
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