第16話 村 5
「じゃあブタちゃん買い物に行こうか」
「はい!」
ブタちゃんを外に待たせて雑貨屋で買い物をする。テント、旅用のマント×2、ブタちゃんのブーツを買う。本当は試着させたいけど嫌がられるだろうから外で履かせてみよう。
買い物を済ませて表に出ると、またブタちゃんが子供たちに囲まれている!
「コラー! お前ら何やってるんだー!!」
子供たちを追っ払うとブタちゃんが変な顔をしている。
「どうしたの?」
「子供たちに助けてくれて、ありがとうってお礼を言われました」
「へー」
「嬉しかったです。感謝なんてされたことなかったので……」
「そっか、良かったね。これからは良いことをすれば感謝されるよ」
ブタちゃんは育った環境が酷いのに、なんでこんな真っ直ぐな性格に育ったのかと不思議に思う。
「はい! これもご主人様に拾って頂いたお陰です。ありがとうございます」
「まあ、これ履いてみてよ。ブーツ買ってきたからさ」 本気でお礼を言われると照れくさい……。
「ブーツぴったりです。私なんかにありがとうございます」
「長旅だからね。丈夫な靴がないと困るでしょ。ほら、あとこのマントも着てみて」
一番大きいマントにしたから大丈夫そうだ。
「じゃあ一度家に戻って旅支度をしよう」
「はい!」――――。
石造りの我が家に着いた。
もうこの家に戻ることはないと思うから、毛皮は全部売ってしまおう。持っていくものは鍋やらフライパンやら重たいけどブタちゃんに持ってもらう。
ブタちゃん用の背負えるカゴにテントや非常食や毛皮も全部詰め込んで、俺は弓矢と包丁くらいは持とうかな。
荷造りはブタちゃんに任せて俺は鉄の矢を作る。弓スキルを上げたせいか矢の出来栄えも良くなっている気がする――。
矢ができるとブタちゃんの荷造りも終わったようだ。
片付いてガランとした家の中をみるとちょっと悲しい。中々良い家だったと思うから名残惜しいが、先に進まなければいけない。
村で毛皮を売ったらすぐに出発だ。
そういえばレベルが上がっていた。
LV8 弓4潜伏2
《習得してないスキル》採取、木工、斧術、トレッキング、細工、陶工、料理、
スキルポイント1
魔物倒したのに1しか上がらないのか……。
まああんまり強くなかったからしょうがないか、ブタちゃんなんてレベル上がってないからね――。
道なりに北に歩いていく――
道から外れない限りは魔物なんかは出ないらしいけど、村には出たから気を付けないといけない。まあブタちゃんが鼻を利かせているから大丈夫なのかもしれないけど――。
少し暗くなってきたので、道端で野営する事にする。テントを建てて火打石で火をおこす。村で火打石を買う事ができてから格段に火おこしが楽になった。
今日は初日なので新鮮な肉や野菜を使って肉野菜炒め。調味料が塩コショウしかないから、まだ簡単な料理しか出来ない。それでも明日からは保存食の硬いパンと干し肉になるので今日の肉野菜炒めは御馳走だ。
「いただきまーす! ご主人様の料理は最高です! 肉野菜炒め大好き!」
ブタちゃんは何でも美味しそうに食べてくれるのだけど、大量に作らないといけないのが大変なんだよな……。
さて真っ暗闇で何もする事がないので、さっさとテントに潜り込む。
「今日はたくさん歩いたのでマッサージしますよ」 ブタちゃんが何か言っている。
俺は痛いのは嫌なので逃げようとするが、狭いテントの中なのであっさり足をとられた。
*ゴリゴリゴリ*
痛くて声が出ない! 俺の呼吸が乱れる。俺は暴れようとするが抑え込まれていて動けない。痛すぎてなんか息ができなくなってきた――。
意識を失う寸前にマッサージは終わったようだ。
今日のは強烈だった。終わると足は痛くもなくスッキリしている。相変わらずのオーク式マッサージ効果だ。
「お疲れの様でしたので、念入りにマッサージしておきました。」
ありがとうとは言いたくない。マントにくるまってブタちゃんを枕にさっさと寝よう。朝日がでたら出発だ――。
2日目も3日目も特に何も起こらず、人にも会わずに、とうとう畑や家が見えてきた。実は盗賊とか山賊とかが出るだろうと思っていたので、拍子抜けしてしまう。
まあ盗賊に急に襲われたらブタちゃんは大丈夫かも知れないけど、俺はあっさり殺されちゃうと思う。
まだレベル8だし……。
レベル上げないと不安だけど何すれば上がるのだろうか?
動物の狩りもだんだん上がらなくなってきたし魔物はいないし、町で何か良い情報があれば良いな――――。
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