第9話 出会い 5

 外が明るくなっている。夜中何度か目が覚めたが、良く眠れたようだ。


 焚き火の火は消え、向かい側に口を開けてブタちゃんが寝ている。少し痩せたのか可愛くなっているように見える。


 まさか、痩せたという事は食事の量が足りていないのか?

 結構食べたと思うのだけど……。


 体を起こすと相変わらず体が痛い。ほぼ床に寝ているのでしょうがないのだが、何とかしたいものだ。


 喉が渇いたので水を飲みに川に行く。


 今日やることは干し肉を干す事と、塩をもっと作る事。カゴと靴と水筒を作り、鹿とイノシシの皮をなめすこと。


 なめし方はブタちゃんに聞かないと解らない。水を飲んで顔を洗うとブタちゃんが起きていた。


「おはよう」


「おはようございます。どこに行っていたのですか?」


「水を飲みに川に行ってたんだよ」


「明日からは私が水を汲んできますので、なるべく一人で出歩かないで欲しいです。私が早起きしますのでお願いします」


「そう?」 まあ水汲んできてくれるなら、それでも良いか。


 焚き火をおこして朝食にする。昨日の肉の残りと木の実しか無いけど、朝はパンとか食べたいな。


「毛皮をなめすのってブタちゃんできる?」


「はい、内側の脂を削いでキレイにして腐らないように木の皮の煮汁に漬けて干すだけですよ。縮まないように枠を作って引っ張りながら干します。」


「じゃあ今日はそれをお願いするよ。シカとイノシシの2枚ね」


「はい、解りました。ついでに水筒も作っておきます。あ、サンダル出来てますよ。」


 そう言ってブタちゃんはワラジみたいなのを出してきた。


「私がやりますね。」跪いて履かせてくれる。


 履かせてくれる所を見ていたが、サンダルよりも紐が複雑に絡んでいて自分では履き方が良くわからない。


 これは今後もブタちゃんにお願いしよう。


「ありがとう。だいぶ歩きやすそうだよ。」


 ブタちゃんはえへへと笑っている。


 この世界のオークは皆が素朴で善良なのだろうか? まあ人間もオークも良いやつも居れば、悪いやつも居るのかも知れないけど。


 今日は二人共別々の仕事を日が暮れるまでおこなった。俺は塩とカゴ作り。それと干し肉も海水から出して日陰に干しておいた。


 毛皮と干し肉が乾くまであと2、3日はここに居ないといけないなと家の中で肉を焼きながら考える。


 夕食のあと横になって寛いでいるが、地面が固くて落ち着かない。


 ゴロゴロしているとブタちゃんが声を掛けてきた。


「ご主人様、毛皮が出来るまでは私に寄りかかって寝て下さい。私はたくさん食事を頂いているので、肉付きも良くなって絶好調です。私は自分の肉のおかげで硬い土の上で寝ても大丈夫ですが、ご主人様はガリガリなので硬い地面で寝るのが辛そうですよ。地べたに寝ると冷えますし風邪を引かれたら困ります」


「寄りかかるって?」


 ガリガリって言う程ではないと思うのだけど。確かに朝起きると体が痛い。


「さあ、ここに来て下さい。」ブタちゃんが男らしく腹をたたく。


「こう?」 ブタちゃんの腹に背中を預けると『おお!』何と極上のソファの様だ。背中が沈み込むが適度な弾力が体全体を支えてくれる。そして暖かい。


「村の子供達もよくこうして私を枕に寝ていたのですよ」


 安心感に包まれて、あっという間に眠くなる――――。

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