第8話 出会い 4


 名前:モモカ

 種族:ハーフオーク 性別:女

 職業:追放者

 レベル:20

 スキル:怪力2、再生3、採取2、棍術1、皮細工2、解体3、物理抵抗3

 スキルポイント3


 ブタちゃんっぽいスキルの怪力と再生が光っているのが気になる。


 何か特別なスキルなのかもしれない。


 それと予想通りだけどスキルレベルがあるようだ。スキルを使うと上がるのか?


 それともスキルポイントが余っているから、ポイントでスキルレベルを上げるのか?


 ブタちゃんは今でも十分強いけど、まだまだ伸びしろがあるという事だろう。


 このステータス画面でブタちゃんのスキルポイントを振れそうな気がする。


 試しに怪力のスキルを上げてみる。


 問題なく怪力が3になった。


 これ怪力に全振りしたら凄い事になるのだろうけど、辞めておこう。ブタちゃんのスキルポイントはもう少しこの世界のシステムを理解してから、どうするか考えたほうが良さそうだ。


 俺の方はレベル4で新しいスキルは料理が増えている。


 今は弓1と潜伏1にしか振っていない。

 狩りする分には弓のレベルは十分みたいだから、潜伏をあげておこう。


 ビビっている様だけど今は生存率を上げておくべきという冷静な判断だ。

 さっきのイノシシが怖かったからだけじゃないはず。


 LV4 弓1、潜伏2

《習得してないスキル》採取、木工、斧術、トレッキング、細工、陶工、料理

 スキルポイント0


 海水汲みから戻ってカゴを編んでいると、肉の塊を抱えて嬉しそうにブタちゃんが戻ってきた。


「おかえり、大量だね。そのイノシシの肉は美味しいの?」


「美味しいに決まっているじゃないですか! イノシシは脂が美味いんですよ。焚き火で焼くと脂が滴って……もう、堪りません!」


 興奮させてしまったようだ……。


「海水を汲んできたけど、その肉の量じゃ海水が足りないな。ブタちゃん一番大きいツボ持って海水汲んできて。俺は肉を適当な大きさに切っておくから」


「了解です」


 あのツボに海水満タンにしたら持ち上げるのは大変だけど、ブタちゃんなら大丈夫なんだろうな。怪力のスキルも上げておいたし、ブタちゃん便利だわ。


 俺は肉を切っておく、とんかつ用くらいの厚みでスライス。


 黒曜石ナイフでも切れるけど肉切り包丁ほしいな。


 切り終わる頃にブタちゃんがツボに海水を満たして戻ってきた。絶対重いと思うのだけど、予想通り軽々持ってきた。


 海水を塩用に少し貰って残った海水に肉をドボドボ入れていく、明日までつけてから干せば塩分十分で腐らないと思う。


 日が暮れてきた。夕飯の支度をしないと……


 ブタちゃんが残った肉の塊から目を離さない。


 塩田から塩を少し拾って家に戻って火を起こす。石焼きでも良いけどさっきブタちゃんが言っていた遠火でじっくりと言うのをやりたいな。


 Y字の木の枝2本を焚き火の両端に差し込んで、肉の塊に塩を揉み込み木の枝をさしてYの字に乗せる。


 これなら上手に焼けましたーって言ってくれるに違いない。


 時間かかりそうなのでカゴを編む。ブタちゃんもしばらく肉を見ていたがサンダルを作り出した。


「ちょっと足を見せて下さい」


サイズを測りたいようなのでブタちゃんの方に足を差し出す。ツルで足のサイズを図っているようだが、足を触られるとくすぐったい。


 人との触れ合いなど何年ぶりだろうか……。


 引き込もる前は俺だって、学生時代に隣の席の女子の消しゴムを拾ってあげたりしたのだ!


 それが最後の触れ合い?


 いや、コンビニでお釣り貰う時に手を添えられてビクってなった事あったな……。


 あ、もう測り終わってしまった。ちょっと残念。


 良い匂いがしてきたので、まだ焼けていない側に肉を半回転する。またブタちゃんが肉を見ている。その後もカゴを編みながら肉を少しずつ回してじっくりとローストしていく。


 外は暗闇と静寂に包まれ、たまに落ちる脂が焚き火でジュっと鳴るのが聞こえる。


 とても落ち着いた良い気分でカゴを編んでいると


『ンゴゴゴ!』


 向かいのブタちゃんから騒音が鳴り響く。そろそろブタちゃんが限界かなと感じていたので話を振ってみる。


「もう焼けたかな?」


「はい! もう焼けてると思います。あんまり焼くと固くなってしまいますよ!」


 食い気味に返事来た。


 肉を火からおろして棒をはずす。遠火のつもりだったが表面は少し焦げてしまった。違う肉をまた差し込んで塩を揉み込みまた火にかける。


 焼いた肉はすぐに切ると肉汁が出てきてしまうので少し休ませる。


「お肉食べないんですか?」 ブタちゃんが目で『早くしろ』と言ってくる。


「焼いた肉は少し休ませた方が良いんだ」


「はぁ?」 目が『何言ってんだこいつ殺すぞ。』と言っている。


 しかし俺は負けない。


 美味しいお肉を食べる為ならブタちゃんとも戦ってみせる。冷たい視線に耐えながら、震える指でカゴを編む。


 ブタちゃんの腹の虫が地獄の底から響いているように聞こえる。

 ブタちゃんからのプレッシャーが凄い。俺がそろそろ限界か……。


 ブタちゃんの事は気にしてない振りをしつつ、「そろそろ良いか」ひとりつぶやき、肉を半分に切ってみる。


 おお、中心が薄っすらピンクのちょうどよい焼き加減。


 これは美味そうだ。


 ちらりとブタちゃんを見ると焚き火ごしに身を乗り出してこちらを見ているので、切り分けた半分をそのまま渡す。


 思った通り受け取ると、すぐにかぶりついた。肉を歯で引きちぎり幸せそうな顔で咀嚼している。


 俺は一口サイズにスライスして頂く。


 うん、うまい。イノシシは独特な香りがあるけど豚肉に近い味がする。鹿は赤身のあっさり目の味だったがイノシシはブタちゃんの言う通り脂が美味いね。


 塊の半分でも十分お腹いっぱいになった。今焼いている分はブタちゃんにあげよう。 気になっていた事があったのでステータス画面を開いてみる。


 パーティー編成ってどうやってやるのだろう? 試しにブタちゃんの名前モモカに意識を合わせてみると、


『パーティーを解散しますか?』と言うメッセージが出てきた。


 はい、と意識するとモモカのステータスが消える。次はどうやってパーティーに誘うか? 普通に誘ってみる。


「ブタちゃんさあ、改めて聞くけど本当に俺と一緒に来るの?」


「もちろんです。ご主人様。こんな美味しいお肉を頂いて断れる訳がありません――。 は、もしや私が役立たずだから捨てる気なんですか? 心を入れ替えてもっと一生懸命働きますので、何卒近くに置かせてください。お願いします」 と突然、土下座しだした。


 肉だけは地面に触れて汚れないように両手で掲げているが、顔は地面に押し付けている。


「いやいや、ブタちゃんは良くやってくれてるよ。これからもよろしくね」


 ステータス画面を見てみると『モモカをパーティーに加入しますか?』というメッセージが出ている。


 はい、にするがブタちゃんに変化はない。パーティーに入れようと外そうと本人は気にならないと言うか気付かれないようだ。


「俺はもう十分食べたから、今焼いているのはブタちゃんが全部食べていいからね。でも今日はこれだけにしておいて。残りの肉はまた明日も食べるから」


「ありがとうございます。ご主人様よりたくさん食べて、すいません」


「いや、良いんだよ。いっぱい食べてよ。ちなみにブタちゃんはスキルって解る?」


「スキルですか? そういう技を持っている人が居るとは聞いたことありますけど、人とは限りませんが……」


「ブタちゃんは持ってないの?」


「私は持ってないですね。ご主人様はお持ちなのですか?」


「俺もないと思うよ?」 スキルは一般的ではないみたいだ。


 このステータス画面みたいなのも俺にしか見えないのかな? もしかしたら人間には見えるのかもしれないけど……。


 食後はカゴを編む。しかしカゴを編んでいると眠くなる。

 横になりながらカゴを編んでいるが……。


 眠気に襲われ――――。

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