専門学校【ショートショート】

せりら

専門学校【ショートショート】

「お前は詐欺の疑いがかかっている。自分が何をしたか、わかってるな」

「何を言う、ポリ公」

「証拠は掴んでるんだ。お前がたまたま電話をした先は、警察署。……相手は話を聞くふりをして逆探知、そしてお前をとっ捕まえたわけだ」

「通話は録音してるのか。今のままだと証拠不十分だぞ」

「ここに録音がある。聞いてもらおう」


《おばあちゃん。おれだよ、おれ。おれだ》

《うん、マコトかい?》

《そう、マコト。ちょっとバイクで事故っちゃって。それでバイクの修理費用と、治療費が払えなくてさ。お金を貸してくれない?》

《うん、いいよ。かわいい孫のためだもの……》


「たしかにお前の声だな」

「……そうだな」

「罪を認めたな。こんなベタな詐欺、久しぶりだぞ。とりあえず、どうして詐欺なんかに手を染めたか、洗いざらい、話してもらおう」

「わかった。……おれは大学受験に失敗して、やけになってたんだ。なんにもやる気になれなくて、適当に過ごす毎日。最初の頃は楽しかった。ただ、ね……刺激がなかった」

「そうか。で、どうして詐欺をやろうと思ったんだ」

「そんなある日だ。おれはインターネットでこんなものを知った。〝入学金無料、卒業後実績多数の専門学校〟ってのを。やることもなかったし、とりあえず願書を送った」

「結果は」

「書類審査、面接を経て、合格だった。入学までは、おれはビジネスか何かの専門学校だ、て思ってた。でも、いざ入学してみると……そこは詐欺の専門学校だった」

「ほう」

「で……そこでみっちり1年間、詐欺のハウツーについて叩き込まれた。おれは最初はどうしようと思ったが、結局最期まで卒業した。卒業時に電話番号のリストをもらったのだが……そのうちの一つに電話をかけると、警察だった」

「なるほど」

「しかし、なんだか話していて違和感を覚えたな。お前さん、やけにニンマリしてるじゃないか。〝詐欺の専門学校〟なんて、興味持って食いつくかと思ってたのに」

「いや、事情があるんだ」

「どんな?」

「じつはだが、その専門学校、公営なんだ」

「……え?」

「卒業のときに渡された名簿。あれに書いてある番号は全部、ここにつながるようになっている。で、志願して詐欺に手を染めたやつは、もれなく捕まる」

「ふうん。でも、納得できないな。なんでわざわざ詐欺なんて教えるんだ。これじゃ、まるでマッチポンプじゃないか」

「たくさん捕まえれば、その分、ガッポリと……あとはいわなくてもわかるな」

「なるほど。やっぱりポリは汚いな」

「汚くなくちゃ、商売あがったりだから、しょうがない」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

専門学校【ショートショート】 せりら @seriracchi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る