第5話 君はアイ?

 数日後、僕の家に修理された幼馴染み型AIが届いた。 お母さんはルンルンで保険に入っていて良かったと喜んでいる。


「久しぶり。君の幼馴染みのアイだよ!」


 アイの姿をした誰かが、元気よく僕に挨拶する。


 違う。君はアイじゃない。姿は同じでも、名前だって同じでも、違うんだ。君はアイじゃない。


 みんなに好かれる、明るくて元気で可愛らしい幼馴染み型ロボットは、何をするにも僕に付いてきた。


 正直付きまとわないでほしいと思うけど、顔はアイそっくりだから、強くは言いづらい。気がつくと、一日のほとんどの時間を新しい幼馴染み型AIと過ごしていた。


 でも、アイといる時間は何をしても楽しかったのに、新しいAIと過ごす時間は、苦痛でしかなかった。


 彼女を見る度、アイを思い出してしまう。そして、もうアイは二度と戻って来ないんだと実感してしまう。次第に、僕は自分の部屋に引きこもるようになってしまった。


△△△△△△△△△△△△△

 

「ねえ、今日は河原へ散歩へ行こうか」


「いいね!最近部屋に引きこもって出てこないから、心配してたんだよ!いこいこ!!」


 今日は、久しぶりに彼女を散歩へ誘った。明るくて元気な彼女は、ノリノリで僕を先導してくれる。


「見て見て!川がオレンジ色!!」


 アハハ、とキレイな笑顔で笑う顔が西日に照らされて、完璧さを際立たせている。


「・・・ごめん、アイ」


「ん?なんか言った?」


「いや、なんでも」


 僕は笑って誤魔化す。作り笑いも上手くなったものだ。


「・・・僕、ジュースを買ってくるね。君はここで待ってて」


 僕は、彼女に背を向けて歩き出す。家の方へ。僕は一度も振り返らない。


 彼女は孤独を感じるのだろうか。人間の体に寄せて作られている幼馴染み型AIは、ご飯を食べなかったら生きていけない。正確には、スリープモードに入る。


 彼女は意識が途絶えるその瞬間まで僕のことを探し続けるのだろう。自動販売機を転々としたりするのだろうか。


 きっと律儀に、幼馴染みとして指定された僕のことを思い続ける。


 でもきっと大丈夫。


 君が誰かに拾われたとき、きっと僕のことは忘れてしまっているから。無愛想な幼馴染みも、道をさまよった辛い記憶も忘れて、新しい幼馴染みと幸せになれるだろう。


 だって君は、幼馴染み型AIだから。


 


 

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