5

「ふぅ」


間一髪、元の部屋に戻れた。もし【神斬り】でも壊せなかったら終わりだった。今回だけは綾に賛辞を送ってやる。


姫神は元の部屋に戻ると同時に意識を落とした。むしろあれだけの傷を負いながらずっと意識を持っていたことの方がおかしい。Sランクとしての面目躍如なのかもしれないけど、その見栄えの良さは流石だと思った。


とりあえず、このままだと姫神が死ぬ。だから、俺は姫神の額に手を置く。


「≪輪炎転生≫」


紅音の技を借りて姫神を癒やす。死んだとしても生き返らせる技だから仮に死んでても姫神を生き返らせられる・・・よな?


他人の場合など試したことがない。とりあえず生きていてくれ。


『≪輪炎転生≫って【蒼炎妃】の技だよな・・・?』

『マジで【漆黒の堕天騎士】って何者なの?』

『Sランクダンジョンに入れるくらいだからSランク冒険者だと思うんだけど、Danpediaにも載ってない』

『野良の冒険者とか?』

『野良でも、【女王四重奏】の力を使える冒険者が今まで名前も知られてなかったとか色々おかしいやろ』

『下手したら現代最強の冒険者だろ』


ネット内では【漆黒の堕天騎士】の正体を探すことで騒然となった。



「うっ」

「おら!死ねよクソ女!」

「人の彼氏を奪いやがって!」

「お前のせいであー子が悲しんでんだよ!どうしてくれんだ!ああん?」

「し、知りません・・・」


私はいつも通り公園で複数の同級生や上級生の女にボコられています。学校で私の荷物がすべて盗られ、机の上には『いつもの場所』とだけ書かれていました。行ってみれば案の定痛い目に遭いました。


私にはP神R検査で魔力があると言われていました。それが発現したのが、中学生が始まったころでした。私には美の神のヴィーナスの力が宿っていたそうです。もちろん騒がれました。だってSランクの力ですからね。


凡人で根暗の私が光輝いた瞬間でした。けれど、この力はすぐに私の日常を浸食してきました。私はとにかくモテました。サッカー部のイケメン、野球部のピッチャー、成績優秀者、金持ちの御曹司・・・ありとあらゆる男から告られました。


当然断ります。私は根が陰キャで、そんな陽キャの塊のような人たちと一緒にいたくなんかなかったからです。けれど、私の意思に反してモテてしまいました。それが良くなかったのです。私の態度をお高く止まっているとか色々な理由で同性からは疎まれていきました。


最初は靴を隠されるとかそれぐらいだったんです。だけど、徐々に徐々に告られる回数が増えていき、ゴールデンウイークを過ぎる頃には同級生の男子生徒のほとんどが私の信者になっていました。怖くて怖くて仕方がなかったので、小学生の頃から仲が良かった友人に相談すると、


「ウザい」

「え?」

「モテてる自慢とかウザくてたまんないよ。やめてくれない?後、あんたと仲が良いと思われると私までイジメられるんだよねぇ」


信じられないことを言われて突き放されました。そこから先は地獄のような日々です。同級生の女から靴の中に画びょうを入れられたり、虫を給食にいれられたりします。私の自称信者たちはそんな女たちの視線に気付かずいつでもどこでも私に愛を囁いてきます。


でも、私の魅了は収まることを知りませんでした。同級生をコンプし終えた後、今度は上級生に浸食していきました。部活のエースは総なめしましたし、イケメンと言われる部類の人間からは全員告白されました。


上級生の女の嫉妬は恐ろしいです。トイレに連れてかれては腹を殴られ、別れろと言われ、意味の分からない泣き言を聞かせられる。地獄です。私にこの事態を解決する方法はありませんでした。


回想終了。


「はぁはぁ。ったく!マジでいい加減にしろよな」

「もう学校来るな!」


大の字で倒れている私を置いて、女共は消えていきました。全員いなくなったのを確認して、私は起き上がって制服をパンパンと叩きます。埃を払って、最低限の砂は払っておきます。


「眼鏡は無事ですねぇ」


こればっかりは壊されると困ります。私は便所に突っ込まれた鞄を持って家に戻ります。年上に相談しろと思った人もいるでしょう。もちろん私だって馬鹿じゃありません。そんなことはとうにやっています。


私は先生に相談しました。だけど、さらなる地獄が始まりました。大人の先生ですら私は魅了してしまいました。助けるよと言った優しい先生は私のストーカーに成り下がり、事態を重く受け取った禿げ頭の教頭はカウンセリングと称して私の身体をまさぐるように見てきました。


女の先生たちは私の悩みなどどうでもいいのです。所詮はモテる女の贅沢な悩み。独身貴族を猪突猛進に突き進むアラサー女など、そこらの中学生と全く変わりません。


まぁ結局、誰も私を助けることができませんでした。両親は私のことを大事にしてくれました。それでもつらかったと思います。見ず知らずの男を魅了してストーカーされ、うちの郵便ポストには『愛』の手紙で溢れたのですから。


両親には学校を休んでもいいとまで言われました。だけど、両親を心配させたくなかった私は愚直に学校に行き、泥を啜り、毎日ボロボロで帰ってきました。結果的には一番心配させてしまっているかもしれません。


「はぁ、なんでこんな酷い力に選ばれたんでしょう・・・」


帰り道。妻と子供が迎えに来ているサラリーマン、彼女と歩く大学生、部活帰りのマネージャーと選手。青春と幸せを奪わないようになるべく顔を隠して歩きます。けれど、そんな眩しく幸せな光景を見て、嫉妬よりも悲しさが溢れてきました。


「ヴィーナス様ぁ。いるんだったら教えてくださいよぉ。こんな呪いをかけた理由を。私、貴方に何かしましたかぁ?何かしたなら謝ります。だから、この、力を、消して・・・ください」


下を向いていたら雨が降ってきました。もちろん空は快晴です。洪水警報が出ているのは私の涙腺だけです。無為で切な願いを何度もしましたが、幾度経っても叶わない。



それからも毎日毎日地獄を見ました。頭を殴られたり、便器に顔を突っ込まされたり、椅子に剣山を置かれたり、靴は当たり前のように隠されます。歩いていると待ち構えていた柔道部の女に背負い投げをされたり、バレー部のサーブを顔面にブチ当てられたりします。


ご飯には埃のフルコース、ゴキブリものっけてわざわざ探してきたのかと逆に感心してしまいました。


今日も今日とて公園でリンチにされています。だんだん慣れてきてしまいましたね。いつもの寝取られの文句とそれと同時の腹パン。それをリンチにしている女全員から受けます。だんだん痛みを吸収する術が身に付いてきてしまいました。


今だったらイノシシの一撃も吸収できそうです。


強がってみましたが、限界です。顔面を蹴られたときに当たり所が悪かったのか意識が落ちそうになりました。まぁ気絶した方が楽なんですけどね。時間旅行した気になるので、あれって楽しいですよ?


「くたばれ!売女!」

「女の敵!」

「何人彼氏を奪えば気が済むんだよ!」


あれ?今日は意外と落ちない。これだと痛くてたまらないんですけどねぇ。


「おいなんとか言ったら「ふっ」」


暴力が止まります。明らかに場違いな男の声が聞こえてきました。


「・・・ちょっと何を見てんの?」


その男の方を見ているようです。同い年くらいでしょうか。この公園の近所の人間たちはみんなこの女共の知り合いです。だから私を助ける人間なんていません。でも、おかしなことが起こりました。


「ふっ」

「ああ?なに?・・・・あ、あ、あ」


何か尋常じゃない気配を感じました。すると、どざっと言う音がしました。


「え?みき?どうしたん!?」

「顔が真っ青だよ!?」


いつもと毛色が違います。


「多勢に無勢か・・・」

「あんた何・・・を?・・・ん」

「なに・・・よ」


ドサドサと音がします。だるかったですが、何が起こっているのか気になる私は顔を上げて確認します。すると、その男の子の前に私をリンチにしてきた女が倒れていたのです。


「て、てめぇ何してんだおい!」

「我は在るだけだ」

「何言ってんのよ!くら・・・え?」


男の子に近付くと女がまた一人倒れていきます。明らかに異質すぎる光景に私をリンチにしていた女たちは青くなりました。


「に、逃げよう!」

「う、うん!」

「ば、化け物ぉ!」


私を囲っていた女は全員逃げ去ってしまいました。残ったのは男の子と私だけでした。すると、


「ふっ、我の覇気に怯えて逃げたか・・・」


何か言っています。さっきから気になっていたのですが、癖のある言い方はアニメの影響を受けてしまったのでしょうか。だけど、徐々にその子はプルプルと震えていました。


「なんでだ・・・一年経っても女から怖がられ続ける・・・俺、何かしちゃったのかなぁ。もう嫌だよぉ。人気者になりたいよぉ」


何を言っているのかは聞こえませんでした。私はあまりにその背中が哀愁を帯びていたので声をかけました。


「あ、あの・・・」

「ん?」


そこで私はやらかしたと思いました。この人は男だった。動けない今の状態で何をされるのかとビクビクとしていると、お面がこっちを向いてきました。なんか全体的に黒いお面です。そして、謎の黒いマントをしています。


「大丈夫、じゃなくて、大事はないか?」

「あっ、はい」

「うむ。酷い怪我だ。少々待っておれ。氷嚢を持ってこよう」

「あ、りがとうございます」


そういってその子はどこかに行ってしまいます。魅了が効いている様子がありませんでした。普通・・・とは言えませんが、異性と会話らしい会話をしたのは久しぶりかもしれません。私はせっかくなので、厚意に甘えることにしました。


「とりあえず、ベンチに座りましょう」


ボロボロになった身体を引きずってベンチに向かいますが、足が鉛のように動きません。私はうつ伏せで倒れてしまいました。身体が本当に動かないのです。打ち所が悪かったのでしょう。


「戻ったぞ・・・っておい!」


男の子が戻ってきたようです。慌てて駆け寄ってくるのが地面の振動を通して伝わってきます。


「大丈夫か!?」


私はもう反応もできませんでした。口調が戻ってますよって指摘したかったんですがね。


「失礼するぞ!」


私を無理やり起こして背中におぶり、そして、ベンチに寝かせてくれました。


「あ、ありがとうございます・・・」

「ふっ、気にするな。闇の気まぐれだ」


気まぐれとかいうわりには私の顔についた泥を取り、そして、私の頭に氷嚢を乗っけてくれました。眼も潰されかけていたので、ひんやりして気持ちいいです。それにしてもここまで親切にしてくれた人は本当に久しぶりです。下心を持った男以外で。


何度もお礼を言おうとしますが、身体が起き上がることを許してくれません。


「ふっ、今は安寧の刻。見張りは我が受け継ごう」


見張りなんて一度もやっていないんですが・・・けれど、私の頭に手が置かれると、すっと意識が消えてしまいました。



「ん・・・?」


夕陽はすっかり傾き、空は紅に染まっていました。カーカーとカラスが鳴いているので二時間以上は寝ていたはずです。


「だから、ごめんって!また別日に!」


隣にずっと男の子はいてくれたようです。屈んで何かに対してずっと謝罪しているようです。男の子が謝罪していた影はどこかに消え去ってしまいました。


「はぁ・・・約束を破ったのは俺だから仕方がないか・・・」


私は寝ぼけているのでしょう。まだ身体が完全に起きません。


「ん・・・」

「ん?そろそろ起きるか。腫れも引いてきたし、大丈夫そうだな」


微妙に声が聞こえません。


「ここはスタイリッシュに去ろう。一度やってみたかったしな」


何かぶつぶつ言っていましたが、よく聞こえませんでした。スタイリッシュという言葉が聞こえましたが、なんでしょう。


「ふふ、こうして、アレ?漢字が書けねぇ・・・昨日、覚えたはずなのに何やってんだ・・・また母上に馬鹿にされてしまう・・・」


何か悩んでいるようです。ってか母上って(笑)


「ヤバいなぁ。これじゃあスタイリッシュに去れねぇ・・・だけど、平仮名はなぁ。ええい!もう仕方がねぇ!」


がりがりと何かがこすれる音が隣でします。ここで起きるのはマナー違反だと思って、最後まで寝たふりをします。


「よし!とりあえずこれで形になっただろう。このオシャレな封筒に便箋をいれてっと」


気になります。彼は一体何をしているのでしょうか。すると、仰向けになっている私の胸の上に何かが触れました。気になりますが、我慢です。そして、すべてを終えるとその男の子が去っていきました。


「ふっ、悠久の彼方までさらばだ!」


私は香ばしい声と足音が聞こえなくなると、上体を起こします。そこには真っ黒でドクロが入った便箋がありました。どこがオシャレなんですかね・・・丁寧に中を開けると、


『眠り姫へ しょう中のたまは取り返しておいた。もう盗られるなよ? 黒の天士』


ベンチの下を見ると、私の所持品がすべて置いてありました。ボロボロで汚れた荷物は綺麗になっていました。おそらく、【黒の天士】さんがやってくれたのでしょう。


「アレ?なんですかね?目が濡れています・・・」


拭えど拭えど私の涙は留まることを知りません。袖が水を吸って気持ち悪いことになってしまいました。ただいままでの涙と違って温かいです。私はセンスの悪い手紙をくしゃっとしながら、胸に大事に抱きました。


私はこの力を持ってから初めて救われた気がしました。



ひとしきり泣くと、私はボーっとしてしまいました。


「なんでしょう、この気持ちは・・・」


胸が苦しいのです。でも決して悪くはありません。ただ、生まれて初めての感覚です。それと同時にまた会いたいという気持ちが強くなりました。また会ってお礼がしたいし、素顔が見たいとも思いました。


「とりあえず帰りましょう。また明日会ってお礼をして、それから・・・」


って私は何を考えているのでしょう。頭がピンク一色です。我がごとながら気色が悪いです。頭をぶんぶん振ります。いつもは鉛のように思い身体が今は羽が生えたようでした。


「また明日・・・」


私は誰もいない公園に告げ、小走りで家路に付きました。



「いませんねぇ」


その日は久しぶりにリンチがありませんでした。もちろん精神的な嫌がらせは継続中です。しかし、肉体的ないじめはなくなりました。私をリンチにしていた女は私を見ると、少し怯えた表情をしていました。


まぁそんな奴らはどうでもいいです。次の日にまた同じところにきましたが、誰もいませんでした。次も、次も、その次の日もです。彼と再会は結局一度も果たせませんでした。私としてはイジメよりも再会できないことの方が辛かったです。


そうこうしているうちに私の学校にある変革が起こりました。


酷すぎる学校の状態に流石に教育委員会が入り、私は転校することになりました。気持ちが悪い信者たちが気色悪い声を上げていましたが、どうでも良かったです。転校先でも結局私の扱いが変わることがありません。だけど、私の意識は変わりました。


あの人に並びたい。


また再会した時に、ダメな女じゃあの人の隣に立てない。そう思った私は眼鏡をやめ、コンタクトにし、身体を鍛え、勉強し、一念発起しました。引っ込み思案だった性格を治すために、配信まで始めました。


結果は今の通りです。Sランク冒険者としての地位を掴み、誰もが憧れるアイドルになりました。弱みなんて見せません。もう私はあの頃と違うんです。中学の残り期間は学校の女王として君臨し、イジメられていたことが嘘かのようにふるまいました。


「まだまだですね・・・」


ダン配でも女王と言われるくらいには有名になった私ですが、未だに【黒の天士】さんらしき人は現れません。私は高校入学と同時に地元に帰ることにしました。理由はもちろん【黒の天士】を探すためです。


来ないなら私から迎えに行くのが良いでしょう。すぐに見つけてやりますよ。



「んぅ~」


私は目が覚めます。古く懐かしい夢を見ていたようです。あの日のことを夢に見るなんてほとんどなかったはずなのにどういう風の吹き回しなんですかね。すると、頭に違和感を覚えます。その感触も懐かしいような嬉しいようなそんな感触です。触ってみると、大きな手でした。


「【黒の天士】・・・さん?」


思わずつぶやいてしまいましたが、その手の主は残念ながら健児センパイのものでした。一瞬払いのけそうになりましたが、身体の傷が消えています。おそらく私を助けるために魔力を使ってくれたのでしょう。


私は健児センパイの胡坐に頭を乗っけて寝ていたようです。全く、私を膝枕とかお金が取れますよぉ?今回は特別です。起き上がって健児センパイの耳に口を寄せます。そして、


「ふふ、ありがとうございます」


胡坐を搔きながら寝ている健児センパイに対してお礼をいいます。起きていたら恥ずかしいのでいいません。おそらく【黒の天士】さんも同じ気持ちだったんでしょうね。しかし、


「俺は【黒の天士】じゃない!【漆黒の堕天騎士】だ!」

「きゃっ!」


座ったまま鼻提灯をつくっていた健児センパイはカッと起きて、鼻提灯を破裂させます。


「おっ、起きたか姫神。大丈夫か?」

「あっ、はい。ありがとうございました。おかげで元気です!」

「気にすんな」


からからと笑っている様子を見て、私も笑ってしまいます。


『声が聞こえた!?』

『【漆黒の堕天騎士】と【神妃】が起きたぞ!』

『無事でよかったぁ!』

『おじさん、気が気でなかったよぉ!』

『【漆黒の堕天騎士】がいなかったらどうなってたか・・・』

『それな。今回はマジナイス』

『俺もお姫様抱っこされたい・・・』

『まさか【神妃】の配信でホモが現れるとは・・・』


配信で待機していた一万人ほどが沸き上がる。気づけ。


「どんな夢を見てたんですかぁ?私驚いちゃいましたよぉ」


冗談交じりで夢の内容を聞いてみます。すると、健児センパイは過去の苦い顔をしました。


「いや・・・なんでもない・・・」

「そういわれると、聞き出したくなりますねぇ。どんな夢を見たんですかぁ?アーリーアーリー」

「うっ、だ、誰にも言うなよ?」

「大丈夫です!いう友達がいませんから」

「あっ、そうか」


私の自虐ネタに普通にうなずくんじゃねぇよって言いたいです。


『姫・・・』

『おいたわしや』

『【漆黒の堕天騎士】が友達になってやれよ』

『それいいな。ボッチ同志なら』

『俺の麗美ちゃんが男と仲よくしているのは耐えられないので同性でお願い』

『それな』


すると、健児センパイはいいにくそうに、かつ、覚悟を決めたような顔をしました。


「今の、その名前を中二の時に考えたんだけどさ」

「その名前を今も使ってる時点で痛々しいですよねぇ」

「うるせぇ。で、【漆黒の堕天騎士】って漢字が難しいじゃん?」

「ん~確かに。中学二年生じゃ書くのが難しいかもしれませんねぇ」

「だろ。で、平仮名にして【しっ黒のだ天き士】って書いてたんよ」


『だせぇ・・・』

『【漆黒の堕天騎士】の誕生秘話キタ!』

『気持ちはわかるが現在まで引きずるなよ・・・』

『漆とか堕とかいいよな(血反吐』

『無理すんな!』

『可愛いなぁ』


私はそれを想像して笑い転げるのを耐えます。漢字が書けない厨二ってダサすぎぃ(笑)まぁ書けたとしても・・・ですがね。


「そしたら母さんに死ぬほど笑われてな。これなら【黒の天士・・・・】でよくないってさ」

「へぇ・・・は?」


え?今なんていいました?


「あの日の夜は死ぬほど漢字練習したなぁ。ただ、次の日に漢字の書き順を忘れて【黒の天士】って書いたんだよなぁ・・・ってどうしたん?」

「いえ、ちょっとこっちを見ないでください・・・」

「?おう」


『微笑ましいなぁ(血反吐』

『姫、どうした?」

『凄いカメラマンだったけど、エピソードが可愛い』

『姫神さんの霊圧が消えた!?』

『どうしたんだ・・・?』


健児センパイはあっち側を見ます。私はその間に地面に【漆黒の堕天騎士】と書きます。そして、言われた箇所を消すと【黒の天士】。


「OH MY GOD・・・」


拝啓お母さま


王子様、見つけちゃったかもしれません・・・

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