幼馴染side
「健児のバ~カ!」
僕は今荒れていた。理由は当然さっきの姫神とかいう女のことだ。
「落ちつきなさいって・・・」
涼が僕のことを諫めようとしてくる。が、
「お前もな」
普段通りにしているように見えるが、空気が凍り、雪が降り始めた時点で察しだ。
僕たちは今、健児の部屋に集まっていた。議題はもちろん
「ま、まさかとは思うけど、健児はその女と結婚するとかじゃないわよね!?」
「番になるのですか!?それならその女を殺せば解決なのです!」
「そんなことしたら捕まっちゃうでしょうが!」
「あう!」
紅音と蒼が涼と僕に負けず劣らず慌てていた。
「大丈夫よ紅音。死体が見つからなければ誰も捕まらないもの。海底に引きずり込んで、窒息させてやれば、全く問題ないわ」
「あっ、そうだったわね!それならあたしが燃やした方が早そうじゃない?跡形もなくなるわよ?」
「いい考えなのです!さっそく捕まえてくるのです!」
「バカやめろ!」
訂正。僕よりも酷すぎる。倫理がどうとか以前に存在を抹消しようとしている時点で色々アウトだ。だが、蒼の次の言葉で僕の怒りゲージがたまった。
「どうして止めるです!?綾は健児のことがどうでも良いのですか!?」
「そうねぇ~私たちはいてもたってもいられないのに」
「ふん!所詮その程度ってことだってことでしょ!」
「は?」
僕の沸点は完全に超えた。僕が健児のことをどうでも良いと思っているだと?ふざけるな。誰よりも健児のことを考えているのは僕だ。
「・・・一回叩き潰してやらないといけないみたいだな」
「上等なのです!」
「それはこっちのセリフよ」
「ああ!もう!頭にきた!」
健児の部屋では最強の四人が戦争を始めた。
●
ひとしきり暴れて僕たちは冷静さを取り戻した。部屋の中は僕たちが本気で暴れまわったせいでぐちゃぐちゃになったが、あいつのせいだから仕方がない。僕たちは何も悪くない。こんな気持ちにさせたあいつが悪い。
帰ってきた健児が見たら泣きそうな光景なのだが、健児に責任転嫁して、四人は健児のベッドで横になっていた。すると、紅音が口を開いた。
「はぁ、姫神だっけ?健児に近付いてくる女って」
「ああ、そうだよ」
その名前を聞くだけでイライラが止まらない。声に棘が出るがそこを気にしている余裕は今の僕にはない。
「
「「「・・・」」」
涼の意味深な言葉に【女王四重奏】のメンバーは黙り込む。僕たちは健児にあることをしている。それも中学の頃からだ。だから、女が近づくことができるはずがないのだが・・・
「誰かがサボったりしたですか?」
「いや、それはない。さっき確認してきたけど、残ってたよ」
「じゃあどうしてなのよ・・・?」
僕にはなんとなくだが答えが出ていた。涼の顔を見る限りあいつもわかっているようだ。
「多分だけど」
ガチャ
「「「「!」」」」
健児の部屋の扉が開かれた。
「ただいま~、おっ、お前ら来てたのか」
「健児・・・」
部屋の主が帰ってきた。
「よく来た・・・じゃなくてお前ら何やってんだ!?」
健児は部屋の惨状を嘆いていた。本は燃えカスになり、壁はところどころに穴が空き、床には氷が張り、電球はちかちかと点滅を繰り返していた。
「ああ・・・また部屋の修繕で金が消える・・・」
自業自得だ。僕たちを裏切って他の女のところにいったんだ。謝られることはあっても謝ることはない。僕はベッドから降りて項垂れている健児の頭を踏んだ。
「少しは反省しろ!」
「え?キャッ!」
健児は僕の足をどかして僕を床に押し倒した。そして、そのまま僕を仰向けに倒した。
「短期間で俺の部屋を何度も半壊させやがって!」
「あっ、健児そこは!」
健児は僕のお腹に顔をうずめてきた。そしてそのまま僕の身体をまさぐってきた。
「そこはぁ、あん」
「おら、どうだ!」
お腹に顔をうずめるだけじゃなく、顔、頭、首、背中、そして、胸やアソコの周りも舐めるように触られた。しかも絶妙な力加減で揉んだり、撫でてくる。僕の身体はその快楽に耐え切れず快楽堕ちさせられた。
ただ僕としても健児にやられっぱなしというのは悔しい。顔じゅうにキスをしたり、手で顔をポカポカと叩いた。結果は、
「はぁはぁ・・・ばかぁ、責任取れ」
「お前が悪いんだからな?たまには反省しろ」
「うるしゃぁい・・・」
僕の負けだった。僕はベッドの上で全裸で肩で息をしていた。身体のあらゆるところを触られたのだ。もう健児に責任をとってもらうしかない。
「つ、次はあたしよ?」
「い、いえ、私の番よ」
「俺様なのです!」
すると、ベッドで横になっている僕を置いて涼たちが健児に全裸で抱き着いた。三人とも健児に僕と同じような目に合わせてもらいたいらしい。
「こら!アオ!ペロペロ舐めるな!」
「そんなこと言っても無駄なのです!健児は俺様のモノなのです!」
「お前も反省しろ!」
「あう」
健児は蒼を押し倒した。そして、蒼の首の下を撫でたり、脇の下をくすぐったり、僕と同じように胸や秘所の周りを遠慮なくいじられまくる。蒼も負けじと健児にキスをするが、健児のテクの前には無駄だったようだ。
「えへへぇなのですぅ・・・健児と遊べたのですぅ・・・」
蒼は僕と同じようにベッドに寝かせられていた。
今度は紅音が健児のほっぺにキスをした。
「健児、健児、健児・・・ハアハア」
完全にメスの顔になっていた。何度も何度も頬にキスをしている紅音に健児は困った顔をした。
「お前も暴れやがって・・・」
「だってぇ、健児が他の女に盗られるんじゃないかって怖かったんだもん・・・」
「ったく、いつになく甘えん坊だなぁ」
紅音は健児の首に甘えまくる。健児もそんな紅音に好きなようにさせていた。紅音の背中を撫で、首元をさわさわと触る。紅音の表情はとろけきっていた。健児の身体に体重をすべて預けていた。僕と蒼の時とは反応が違いすぎて訴えたい。
「あん、あん、そこぉ」
紅音は健児に自分が一番触ってほしいところを触ってもらって感じていた。普段はツンケンしているくせにこういう時だけは甘えん坊なんだよな。
すると、
「ふん」
「冷たっ!」
涼が健児に氷で攻撃した。
「浮気者」
「冷てぇわ!」
何度も何度も氷の礫を健児にぶつける。
「ちょっ!」
「お前も反省しろ!毎回毎回悪戯ばっかりしやがって!」
「きゃっ!」
健児に身体を預けていた紅音は健児が動いた瞬間にバランスを崩して地面に落ちかける。健児はそんな紅音のことなどお構いなしに攻撃し続ける涼を捕まえた。
「は、離しなさい!」
「お前は全く反省してないな!」
「するわけがないでしょ!今回は百で健児が悪いんだから!」
「暴れるなっての!冷たい!」
「今も別の女の匂いが付いているわ!こんな匂いを私に嗅がせて嫉妬を買おうなんて考えている健児に謝る理由なんて全くないわよ!」
「それならこっちもこうだ!」
「え?そ、そこは」
健児は涼の身体を抑える。僕と全く同じようだが、アレは健児の本気の愛撫だ。
「ああん、ちょ、やめ、いやあん、そこ・・・は、だめ・・・よ」
涼から色っぽい声が漏れる。その白い肌には似合わず、頬が赤くなっていた。
「こ、この程度じゃ、わたし、はぁ」
「おっ、意外と頑張るな。それならこっちも」
「なっ」
健児の指の動きがさらに早くなる。それで涼の声はさらに漏れ出てきた。もう少しで陥落してしまうだろう。
「ご、ごめんなしゃい・・・あ、私がぁ、悪かった!悪かったでしゅぅ!」
「おっ、やっと自分が悪いって自覚してきたのか」
「はぃぃ、もう、無礼なことはぁ、いいましぇん・・・」
涼は健児のテクの前に完全に堕ちた。ただ、
「あたし、まだ全然足りないわ・・・健児、もっと甘えさせてぇ」
「俺様もです。まだまだ抱き着きたいのです・・・!」
紅音と蒼は甘えん坊モードになり健児に抱き着いた。そして、健児のあらゆるところにキスしたり甘えたり、触れたりしていた。僕は、
「もっと構ってよぉ!馬鹿健児!」
恥も外聞も捨てて、健児の前側から首元に抱き着いた。
「反省してる様子が全くみうけられねぇ・・・もういいわ」
健児は諦めて四人の相手をすることにした。
「大好きなのですぅ」
「あたしもぉ」
「もう離さないだからぁ」
「僕が一番大好きに決まってるだろぉ」
【
●
三十分くらい経つと、健児は黒海さんに呼ばれて夕飯を食べに部屋を出た。僕たちも一緒にどうかと誘われたが、それよりも会議があるから部屋に残った。
ただ僕も含めて【女王四重奏】は再起不能なくらいに幸せな顔をしていた。これじゃぁ明日の話ができない。僕は≪黒円≫を発生させ、自分も含めて軽く棘を刺した。
「痛!」
「痛いのです!」
「っ」
三人が僕のことを睨んでくるが知ったこっちゃない。
「明日のことを決めないといけないだろうが。幸せな気持ちになるのはわかるけど今はそれどころじゃないだろ?」
僕の言葉にうっと唸る。
「健児を誘惑したクソ女は明日健児とダンジョンに潜るらしい。僕たちはそれを妨害する。そこまではOKか?」
「なんで知ってるの?」
「健児のスマホを見た」
明日学校のダンジョンに潜ることと、【女王四重奏】のグループDINEにダン配に遅れるという旨が送られてきた。許さない。すると、紅音が
「姫神って女を殺、じゃなくて、脅すのはダメなの?」
「確かに、それが一番平和ね」
「俺様もそう思うのです!」
「それはダメ」
「どうしてよ?」
僕だってできることなら殺してやりたい。だけど、僕がそれを避けているのは、
「もしもバレたら健児に嫌われる。それだけは嫌だ・・・」
口止めをしたとしても万が一漏れて健児に聞かれでもしたら自殺してしまうかもしれない。ようやく話せるようになったのに、それをぶち壊したくなんてない。
「あう・・・」
「それは・・・」
「辛すぎるわね・・・」
ようやく頭に血が上っていた三人は僕の真意を理解してくれたらしい。僕たちはみんな健児のことが大好きだ。そんな健児の好きな女なんて嫉妬の対象でもあるが、その女をなんとかしたら、嫌われてしまう。
嫌われることは僕たちにとって何よりも辛いことなのだ。
「だから明日の探索をさりげなく邪魔しよう。それであの女に健児がいかにダメな人間かを知ってもらおう」
「「「了解」」」
「お~いお前ら?」
健児が部屋に戻ってきた。僕たちは健児の声がした方を見た。
「母さんがお前ら用に飯を作っちまったらしいんだよ。食っていってくれるか?」
健児が顔の前で僕たちの方を拝むボーズで頼んできた。まぁ断る理由もないし、なんならお腹が減ってきたまである。だから、
「にゃー」
「キュウ」
「ピャー」
「ワン!」
僕たちはいつも通り返事をした。
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