閑話 ぽかぽかの練習

第226話 ぽかぽかの練習

バンとマリーが「ごあいさつ」に行っちゃった。

寂しいけど、仕方ないの。

だって、とっても大切なことなんだって。

これから、バンとマリーがもっと幸せになるために必要だって教えてもらったよ。

よくわからないけど、今よりももっと幸せになれるなら応援しなくっちゃね。


でもやっぱり寂しいな。

早く帰ってこないかな。

私たちはついていけないの。

だって、あんまり森から離れられないし…。

自分でもよくわからないけど、森からあんまり離れちゃいけない気がするのはなんでだろう?


気が付いたら森にいたし、バンと出会ったのも森。

ルビーと出会ったのも森だったよね。

森はとっても大事な場所で、悪い子に汚くされたらダメな場所。

だからあんまり離れちゃダメ。

よくわからないけど、そんな感じかな?


…森のこと考えてたら、またバンと一緒に森でご飯食べたくなってきちゃった。

バン、早く帰ってこないかな。


「んにぃ?」(お姉ちゃん、どうしたの?)

「きゃん」(ううん。なんでもないよ)

「にぃ?」(ほんと?ごはん少なかった?)

「…くぅーん。きゃふ」(…ははは。ちょっとバンのこと考えてちゃってただけだよ?心配かけちゃってごめんね)

「にぃ!」(ううん。早くバンとマリー帰ってきてほしいね!)

「きゃん!」(そうだね!)


お昼ご飯のあと、ボーっとしてたら、ルビーに心配されちゃった。

お姉ちゃんなんだからしっかりしないとね。

よし、気分を変えて、今日も遊びに行こう!


(ルビー、今日は何して遊ぼっか?)

(うーん…。あれ!)

(あれ?)

(うん、あのお腹がぽかぽかするのの練習)

(ああ、あれね。いいよ。コハクちゃんたちの所に行こうか。きっとユカリちゃんもそこにいるよ)

(うん!あ、リーファに教えてもらお?)

(うん!いいね。じゃぁリーファも誘って一緒にみんなのところに行こっか!)

(はーい)


((リーファ、あーそーぼっ))

「ん?いいけど、今日は何をして遊ぶんだい?」

(あれ!)

「ん?」

(あのぽかぽかするのの練習)

「…ぽかぽか…。ああ。魔力操作のことか」

((まりょくそーさ?))

「ああ、あれは魔力操作っていってな…。あー、難しいことをいっても仕方ないな。まぁ、仕組みなんてどうでもいいか。よし、じゃぁやってみよう」

(あのね、みんないっしょがいい!)

「お。そうか。ユカリはさっきフィリエと遊んでくるって言ってたから厩に行けばみんなそろうな。よし、さっそく行こう」

((はーい!))


さっそく「うまや」に行くと、みんなでのんびりしてたから、

((あーそーぼっ!))

てご挨拶。

((((はーい!))))

みんなも元気にご挨拶してくれて、なんだかうれしくなっちゃう。

「やぁ、みんな。今日も元気だね」

(うん!お昼の果物がとっても美味しかったよ)

(…もう、コハクったら)

(…ふふっ。コハクちゃん面白い)

「はっはっは。そうか。…で、ユカリは?」

(…ここに…)

(あっ!ユカリちゃんフィリエちゃんの髪の毛の中!)

(あ。ほんとだ!)

(あはは。かくれんぼならユカリちゃんにかなう子なんていないよね)

(…まぁね)


「ん?ああ、そんなところにもぐりこんでたのか。ほら、ユカリ出ておいで」

(なぁに?もうご飯の時間?)

「おいおい。昼はさっき食べたろ?今日はみんなで魔力操作…あー、あのぽかぽかするやつの練習をして遊ぼうと思ってるんだが、どうだい?」

(やる!あれ、好き!)

「はっはっは。よしよし。じゃぁ、今日はエリスとフィリエもやってみるかい?」

(え?いいの!)

(…うれしい)

「まぁ、エリスとフィリエの場合気持ちいいっていうよりも、ちょっと疲れる感じになると思うけど大丈夫かな?」

(うん!やってみたい)

(…みんなといっしょ。うれしいな…)

「はははっ。そうか、そうか。よし、じゃあまずはフィリエにコツを教えてみようかな。エリスは見ていてくれ。他の子は自分でできるところまでやってごらん」

(はーい!)

みんなで元気よくお返事して、私たちは自分で練習を始めたの。


私はまだちょっとぽかぽかするかなぁ?でも、気持ちいいなぁってくらい。

でも、ルビーは、お風呂に入っているくらいぽかぽかって言ってたから、きっと私より上手にできるんだね。

ルビーはすごいな。

私も、お風呂好きだから、早くそのくらいぽかぽかできるように練習頑張ろっと。


(えっと、たしか…)

バンにやってもらった時のことを思い出しながらお腹の中に力を入れる感じで、

(うむむむむー)

って集中してたら、ちょっとだけお腹の辺りがぽかぽかしてくる。

(うーん、ルビーは体中がぽかぽかって言ってたけど、どうやるのかなぁ?)

そんなことを考えていたら、なんか、「ふわっ」って感じでお腹の中のぽかぽかが胸のあたりまで広がっていく感じがしてきた。

(ふわぁぁ…)

なんかこれ気持ちいい。

バンにやってもらった時はもっと気持ちよかったけど、それに近づいた感じかな?

(ほんとだ、お風呂に入ってるみたい…)

気持ちいいなぁって思ってたら、知らない間に寝ちゃってたみたい。

気が付いたら、リーファのお膝の上で、ルビーとユカリちゃんが私にくっついてた。


「やぁ、起きたかい?」

(…うん。気持ちよかった…)

「ははは。そうかい。それはよかった。で、今回はどんな感じだったのかな?」

(んーとねー。なんかぽかぽかが胸の所までじわーってなる感じがしたの)

「ほう。それはすごいね。うん。確実に上達してるね」

(ほんと!?やったー!)

私とリーファがそんなお話をしてたら、ルビーとユカリちゃんを起こしちゃったみたい。


(…ごはん?)

(もう、ルビーったら。ユカリちゃん、大丈夫だった?)

(うん!気持ちよかったよ!なんかね、前にやった時より、ぽやぁ~んってしちゃった)

(そっか。じゃぁ、ユカリちゃんも上手にできるようになったんだね)

(そうなの?だったらうれしいなっ)

「はっはっは。コハクはどうだい?」

(うん。私も。この間マリーにやってもらった時よりはまだまだって感じだけど気持ちよかったよ)

「そうか、そうか。そいつは良かった。うん。みんな順調みたいだね」

((((うん!))))


あれ?

いつもちゃんと起きてくるエリスちゃんとフィリエちゃんがぐっすり寝ちゃってる。

(ねぇ、リーファ。エリスちゃんとフィリエちゃんは大丈夫??)

「ん?ああ。最初はこうなってしまうんだ。でも、心配ないよ。何回か練習すれば、ちゃんとできるようになるさ」

(ほんと?やったね。みんなおそろい!)

「はっはっは。まぁ、エリスとフィリエはちょっと勘が良くなったり、足が速くなったりはするだろうね」

(ん?私は違うの?)

「ん?あー…。なんていえばいいのかな?4人の場合は、もうちょっといろんなことができるようになるよ。例えば、魔法が使えるようになったりとかかな」

(まほう?)

「うん。あー、みんなは見たことが無かったかな?コハクはあるだろ?」

(うん。あの風がばっ!ってなるやつだよね?)

「そう。それだね。ああいう感じで、…まぁおそらくだけど、サファイアは水の魔法が得意になるんじゃないかな?」

(お水?)

「ああ、水魔法って言って、水を操ったり出したりできるやつだね」

(お水が出せるの!?すごい。いつでも水遊びができちゃうね)

「はっはっは。そうだね。水遊びし放題さ!」

(わーい。それ早くできるようになりたいな!)

「ははは。さすがにすぐにはできないよ。でも、毎日この練習を続けていたら、いつかきっとできるようになるから、これからも頑張るんだよ」

(うん。わかった!)

「はっはっは。いい子だ。他の子もわかったかな?」

(((はーい。リーファ先生!)))

「うん。みんないい子だな。よし、エリスとフィリエが寝てるから、今日はここまでにしよう。コハク、2人を頼んだよ」

(うん。まかせて!)


楽しいと時間はあっと言う間。

気が付いたらお日様がバンポみたいな色になってる。

エリスちゃんとフィリエちゃんが起きないように、小さな声で、

(コハクちゃん、また明日)

って帰りのご挨拶。

(うん。サファイアちゃん、ルビーちゃん、ユカリちゃん、また明日)

(うん。あしたは乗せてね)

(またあしたー!)

みんな、いつもより小さな声だけど、いつもみたいに元気にご挨拶して今日はここまで。


(今日のごはんはなんだろうね?)

(鳥さん!)

(ケチャップ!)

(ははは。私はなんだかお野菜が食べたい気分かな?全部出てくるといいね!)

((うん!))

晩ご飯の話をしてるのってなんだかバンみたいって思ったらまた早くバンに会いたくなっちゃった。

なんだかおかしいね。


おうちに帰ってお食事の時間に出てきたのは、「すどり」っていうお料理。

鳥さんもお野菜も入っててケチャップの味がしたよ。

みんなでいっしょに「美味しいね」って言って食べたから今日もいっぱい美味しかった。

きっとバンとマリーも一緒に「美味しいね」って言いながらご飯食べてるよね。

うふふ。

想像したら、笑えてきちゃう。

早く幸せになって帰ってきてね。

美味しいご飯が待ってるよ!

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