第8話 先輩はあくまで認めない
僕は最後まで聞いていたが、今日先輩に言われた内容とほぼ一緒だった。やっぱり、この人明らかに先輩だよな。
「こういうアニメ的な趣味があるっていうのが恥ずかしいのか、顔見知りに知られたのが恥ずかしいのか……」
僕はますます謎が深まっていくのを感じながら、アーカイブを見ていった。
週末には、うちの会社の創立記念日があるとかで、飲み会がセッティングされていた。正直こういう場は苦手なのだが、断りきれずに僕も席につく。
飲める者はビール、そうでない者はウーロン茶で乾杯。オードブルとサラダが運ばれてきて、いつもの流れで話が盛り上がり始めた。
楽しくはないが、上司の言うことをはいはいと聞いていればいつかは無難に終わる。そう思っていたのだが、その予測は見事に外れた。
「あ、そうそう。天ヶ瀬先輩、動画投稿やってるんすね。教えてくれればみんなチャンネル登録するのに」
堂々と他の後輩が言い出した一言に、お酌をしていた先輩が完全に固まった。
「……あ、
部長の悲鳴を聞いて、ようやく先輩は我に返った。
「す、すみません。ちょっと……急に声がかかって、びっくりして」
「えー、先輩のチャンネルってどんなのですか? ヨガ? ジョギング? それとも意外なところで食べ歩きとか?」
「見たい見たい。どれどれ?」
「……ち、違うからっ!!! やってないから!!!」
先輩はやおら立ち上がって吠えた。その迫力に、スマホを手にしていた面々も固まる。
「で、でもすごくそっくりな人が……」
「私じゃないの!! はい、この話はおしまい!! みんな飲んで飲んで」
いつもの穏やかな先輩とは思えないほどの強引な流れ。皆も驚いてそれ以上踏み込めず、なんだか妙な空気が漂った。
先輩はそれをなんとかしようとビールを飲みまくる。上司ですらそれを止められず、宴会が終わる頃には先輩はべろんべろんに酔いつぶれていた。
「……困ったな。天ヶ瀬先輩と同じ方向に帰るやつ、いる?」
最寄り駅を聞いてみると、僕ともう一人の女子社員だけが該当していた。
「タクシー呼んでやるから、二人でなんとか家まで送ってやってくれないか」
「わかりました」
「……私一人でいいですよ。
女の子の僕に対する評価は実にそっけなかった。まあ、ガリで体力なくて仕事もできない男の扱いなんて普通はこうだ。
「まあまあ。女の子二人だけじゃ心配だし。神宮寺、頼むぞ」
※今回のお話は楽しんでいただけましたでしょうか?
「やっぱり他の人にもバレてた」
「なんで先輩はここまで隠すの?」
「会社の女の子はツンデレなんですか?」
など、思うところが少しでもあれば★やフォローで応援いただけると幸いです。
作者はとてもそれを楽しみにしています!
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