第7話 なぜか先輩は動揺する
……こんな立派な人が作ってるんだから、あの変な動画にもきっとすごい意味があるんだろうな。
「ありがとうございます。先輩が異世界風の動画アップしてるのも、何かの縁がきっかけなんですか?」
「ブフォッ」
先輩は盛大にコーヒーを噴き出した。
「だ、大丈夫ですか!? おしぼりを──」
「大丈夫。大丈夫よ。だからよく聞いて、
「はいっ!?」
「私は動画なんて作ったこともなければ、そういうサイトを見たこともないの。一度たりともよ」
「ええ? だってあんなにそっくりで……」
「そっくりな人がいたとしても私じゃないわ。他人のそら似よ。ほら、世の中には三
人同じ顔の人がいるっていうし。そういうドッペルゲンガー的なアレ」
先輩は明らかに焦っていた。
「そう、ですか……」
「そうよっ」
あまりにも力強く言い切られて、僕は引き下がるしかなかった。
見るなと言われれば、それが強く気になってしまうのは人のサガである。僕もそのサガには逆らえず、結局昨晩と同じチャンネルに目をやった。
さすがに昨日の今日なので生配信はしていないが、過去のアーカイブは結構残っている。それに目を通し、僕は首をかしげた。
「見れば見るほど先輩なんだけどな……」
数万、数十万という閲覧数がある動画の中で、先輩は実に生き生きと動き回っていた。始めの頃は勝手が分からなくて戸惑っているようだったが、それも二、三回のこと。すぐに自分の倍はあるモンスターを殴り倒すようになっていく。
『人間風情が生意気な! この八つ手のオーク様の餌食になれ!!』
たまに人語を解する高等っぽいモンスターもいるのだが、すぐにバキッという小気味良い音と共に先輩の拳の犠牲になってしまう。典型的なマンガの噛ませキャラみたいだな。
『俺はしがない豚です……』
オークの心が折れたところで、先輩は構えを解いた。
『さて。一旦落ち着いたのでここで質問タイムです。全部に解答するのは無理だけ
ど、どしどし送ってね!』
僕がコメント欄を繰っていくと、撮影方法や状況による質問より、小さな人生相談の方が多い。みんな、この状況を「そういうもの」として楽しんでいる様子だった。
〝姉さん聞いて! 職場の上司が最悪なんです。殴ってやる……と言いたいところですが、営業成績を上げて見返してやりたいんですが、何かアドバイス下さい〟
これに対しての解答はこうだった。
『営業で行き詰まっているなら、大事なことは二つ。まずは相手との間に信頼関係を……』
「日中と同じこと言ってる──!!」
※今回のお話は楽しんでいただけましたでしょうか?
「たまに配信で全然関係ない質問、あるよね」
「オークも人間らしいところがあるんだな」
「先輩隠す気なくね?」
など、思うところが少しでもあれば★やフォローで応援いただけると幸いです。
作者はとてもそれを楽しみにしています!
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