竹下育美の口から語られる衝撃の真実

 林田勲とともに地下室へとやって来た。

「林田さん、ここで見張っててください」

「えぇ、了解しました」

 鍵を開け、中に入る。奥の椅子に両手を縛られた竹下育美が睨んでいる。

「竹下さん、話を聞かせてもらえるかしら?」

「どうせ、刑事さんも私が狂ってるって、そういうんでしょ」

 どうやら今の竹下育美は優等生のような雰囲気だ。それにしてもこうも使い分けられるなんて、皆が騙されていても仕方ないことかしらね。

「私もあの場にいたのよ。入り口にいたビスクドールが斧を防いでいたのを見たわ」

「!?私がおかしかったわけじゃない。私は正常。やっぱりあの女将が」

「いえ、私と貴方にしか見えていなかったのは事実よ」

「どういうことよ?」

「私はね。生まれが特殊で、有名な蛇神を祀る神社の巫女として産まれたの。それゆえ、その霊力がとても高くてね。その昔からその見えるのよ。霊とか妖怪の類がね」

「アンタ、自分が何言ってんのかわかってる?それってつまり、あのビスクドールが霊の類だって言ってんの?刑事が?」

「えぇ、だからこそ。貴方から真実を聞きたいの?あのビスクドールの言葉は真実?」

「私が散梨花と愛子を操ってたことね?」

「えぇ」

「真実よ。でも操ってたは語弊があるわね。私が2人を利用したのと同時に2人も私を利用していた。あの2人はどちらかというと体育会系の脳筋だから。知能で私が支えていたって言えば良いかしら」

「成程ね」

「女将の桜舞にはムカついていた。子供を授かって、幸せオーラ全開でね。人の幸せを見てると不幸にしてやりたくなるのよ。それで、散梨花と愛子になんとかさせようとしたんだけどね。あの脳筋共、土壇場で怖気ついてさ。結局私が女将を階段から突き落としたのよ。それで女将は流産。ザマァって感じよね。2人にもこう言ってやったの。同罪だからって」

「その言葉で2人を縛ったのね」

「えぇ、チクられてもうざいじゃない。でも2人にとっても利なわけだからそんな心配はしてなかったけどね」

「貴方、優等生の皮を被った相当なワルね」

「あら、褒め言葉と受け取っておくわ。それにしても散梨花に続いて愛子まで殺すなんて、刑事さんの言った通り、警戒してたのにこのザマよ。まぁ私は振り向くことはないわ」

 山里愛子はメリーを警戒していた?それなのに振り向いた?ひょっとして前提条件が違う?だったら何が前提条件なの?考えてもクエスチョンマークが頭の上にたくさん浮かぶだけだ。

「おーい、聞いてんのか刑事さん」

「すみません、貴方のやったことは桜舞さんに対しての傷害罪と桜舞さんの子供に対しての殺人罪、そして桜舞さんへの殺人未遂罪。トリプルアウトね」

「まぁ、この際ここから出られるならそれぐらい甘んじて受け入れるわよ。死ぬよりマシでしょ」

 反省の気持ちは一切ないってわけね。メリーさんが怒る気持ちもわからなくないわね。同情はしても、殺人を容認することはできないけど。でも相手は本物の怪異なのよね。逮捕なんて当然できないし。困った困った。

「おーい、ひょっとして、あのクソ人形から逃れる術がわかったのか。教えてください」

「いえ、何もわからないわ。斧も効かない、触ることもできない怪異相手に刑事なんて無力よ」

「クソクソクソ。絶対に生き残ってやる」

「私も生き残れることを願っています。できれば貴方には司法で裁きを受けてもらいたいですから。それでは」

 私は地下室を後にする。時間は早く夜を迎えていた。久々に大浴場でゆっくりしたい。大浴場に向かうと大女将の桜華・女将の桜舞・南野天使・鈴宮楓、今生きている女性陣が集まっていた。

「これはこれは刑事さん、竹下のこと申し訳ありません。女将と共にサービスさせてもらいますので是非サウナも堪能してくだされ」

「ありがとうございます華さん」

「美和〜大変だったみたいね。私は今日は宇宙と一緒に畑の収穫手伝ってたのよ」

「通りで、フリーライターの楓が悲鳴を聞いて飛んでこないなんておかしいと思ったわ」

「畑で御手手が荒れちゃったのです〜。でもやっちゃんが楽しそうだったので、よかったのです〜」

 南野天使も普段通りのマイペースに戻っていた。畑作業が精神状態を整えてくれるなんて思わなかった。私も今度行こうかしら。

「皆様、準備ができましたので、こちらへ」

 皆でサウナへと入る。

「今度は負けないわよ美和」

「また返り討ちにしてあげるわ楓」

「また勝負ですか?お付き合いしますわ」

「ワシは歳なので、遠慮させてもらいます」

「サウナ気持ち良いのです〜」

 何この化け物。この暑さでまだ出ないどころか平然としているなんて、もうダメ。私は飛び出し先に出て水風呂に入っていた楓のところに掛水をしてからドボンする。

「はぁーキモチイイ」

 そして次に出て来たのは女将の桜舞だった。

「私が負けるなんて」

「はぁーとっても気持ち良いのですねサウナって」

 えっサウナデビューの子に負けたってこと?ちょっとショック大きいんですけど。楽しいサウナの時間は終わり、部屋に戻り、眠りにつく私は、またしても不思議な夢を見るのだった。

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